Shinzo-Returns

安倍総理の志は死なない!!

日本のファイブ・アイズ参加、これだけのメリット

 国際社会は武漢(中国湖北省)で発生したとみられる新型コロナウイルス問題を発端に、中国が影響力を拡大しつつますます権威主義になっていく状況を熟知した。
 そして、価値観の転換を図る中国の覇権志向を挫折させ、影響力の拡大阻止が喫緊の急務であると認識するに至った。
 8月5日の産経新聞は1面トップで「日本もファイブ・アイズに」「機密共有で対中連携」の大見出しを掲げたスクープ報道をした。
 3面には「中国牽制 連携円滑に」「日本、情報保護に不安」と、「日本参加支持 英で拡大」「価値観共有『第6の目に』」の2本の中見出しのついた記事で、目的や意義、日本の不安などを報じた。
 続く8日(3面)も「日米英 対中包囲で接近」の大見出しを掲げた。背景には、香港問題で英国が対中蜜月を転換している現実と日本が海洋安保を強化していることがある。
 太平洋には米国と中国がともに存在しうる余地があると発言し、またアジアの問題はアジアに任せるようにと中国は米国に詰め寄っていた。
 中国の巧みな日米分離策で、成功した暁には日本は全体主義的覇権国家・中国の傘下に入らざるを得ない。
 しかし、自由や民主主義を基調とし、人権や法の支配を尊重する西欧的価値観を満喫してきた日本は、全体主義で監視国家の支配下に入ることを許容することはできない。
 そうであるならば、日本が主張し始めた「自由で開かれたインド太平洋」戦略を積極的に構築しなければならない。
日英同盟に匹敵する重要事
 そうした模索をしていた矢先に、英国から第2次世界大戦直後に結成された伝統を持つ英語圏の機密情報共有組織であるファイブ・アイズ(5つの目)に参加を期待する発言があった。
 この発言は義和団事件後に英国が日本に提案した日英同盟にも匹敵するビッグ・ニュースである。
 当時の英国は7つの海を支配する覇権国家で、日本が同盟締結を呼びかけられることは夢に等しかった。国力差は月とスッポンであったからである。
 西欧諸国はアヘン戦争後、中国に権益を確保することに勤しんでいた。日清戦争で中国に足場を築いた日本の権益を脅かすのはロシアと新興国の米国であった。
 当時の覇権国である英国は南アフリカでのボーア戦争に忙殺され、アジアではロシアの南下に苦慮していたこともあり、義和団事件での日本の活躍と犠牲的精神を英国は高く評価し、同盟の相手国にふさわしいと認めたのだった。
 日本では伊藤博文をはじめとする親露派との間で論争があったが日英同盟に踏み切り、日露戦争や第1次世界大戦の戦勝国となる躍進につながった。
 その後、覇権国を目指す米国の介入で日英同盟が解除され、大陸国ドイツとの三国同盟やロシアとの中立条約で敗戦と北方領土の不法占拠に見舞われた。
 そして平和回復後の日米同盟で今日の繁栄と平和がもたらされた。
 このように、日本の安全は海洋国と連携した時には保証され、大陸国に接近した時に損なわれたというのが歴史の教訓である。
 今は価値観を異にする中国の台頭が著しく、西太平洋以西の覇権を握ろうと画策している。日本は隣国である中国とは共存共栄を期待するが、その傘下に入り全体主義国家の統制に服するわけにはいかない。
 そう考えると、日本の選択肢はおのずと価値観を共有する西欧型諸国との連携となり、その有力国の誘いに乗らない手はないであろう。
運河を制した国の躍進
 ファイブ・アイズは米英加豪・ニュージーランドの英語圏5か国の諜報に関する協定である。
 UKUSA協定(United Kingdom – United States of America Agreement)と呼ばれるように、アメリカ合衆国の国家安全保障局(NSA)と英国の政府通信本部(GCHQ)に加・豪・ニュージーランドの諜報機関が加わり、世界中に張り巡らせたシギントの設備や盗聴情報を、相互にまた共同で利用するもので、コンピューター・ネットワークはエシュロンの名で知られている。
 この協定は「合衆国、英連邦、大英帝国を除くすべての国」の「政府、陸海空軍、派閥、政党、省庁、政府機関、部局、代理・自称代理の1人または複数の人間」が行うすべての通信を対象とし、「軍事、政治、経済的価値を持つ国外の通信」も含まれると規定している。
 また、外国の通信に関する「通信量の測定、通信文書と機器の取得、通信量の分析、暗号解析、暗号解読と翻訳、通信組織・実務・手続き・機器に関する情報の取得」などの業務の成果や「方法と技術」情報の交換を行うとしている。
 その後に幾分かの改正がなされているが、日本は当然監視される側にあったということである。
 歴史を振り返れば、スエズ運河を手に入れたことで英国が覇権国家となり、パナマ運河で米国が英国に代わって覇権国家に躍り出た。
 この顰に倣うかのように、中国はパナマ運河を凌駕するニカラグア運河の開発を進めており、またマラッカ海峡のくびき(マラッカ・ジレンマ)を回避するクラ地峡の掘削を計画している。
 これまでの中国の経済成長からは新運河や地峡開掘は可能とみられてきたが、コロナ蔓延で経済発展が阻害され、計画断念も含めた異変をきたしているともみられる。
 ただ全体主義国家の地力は困難時に発揮されることを考えると、油断は禁物である。
 万一、中国が運河と地峡の一つでも開発に成功した暁には、覇権国家の転移も現実味を帯びてくる。
 しかし、日本にとって異なった価値観は悪夢の到来でしかない。自由民主主義の価値観を全体主義の価値観に譲ってはならない。
 中国の覇権を認めるにしても、価値観の接近を認め、後戻りできない状態を確認した結果でなければならない。
 その時点までは、日本はファイブ・アイズの一員となって中国の価値観転換の一翼を担うべきではないだろうか。
宇宙作戦やサイバー防衛に不可欠な情報
 日本は北朝鮮の核搭載可能な弾道ミサイルの推進と中国の多数の中距離核弾道ミサイルの配備に脅威を感じながらも拱手傍観せざるを得ない状況にあった。
 ざっくり言って核対処ばかりでなく攻撃兵器は米国任せでしかなかったので、有事に機能するのかという懐疑を同盟国に持つこともあった。
 その時点で、すでに同盟の価値は半分消滅したも同然であるが、日本の「国防」意思が統一できない以上は、いかんともしがたかった。
 しかし、予算の著しい制約を受けながらも、遅ればせながら弾道ミサイル対処とそれらの運用にかかわる情報・通信対処が不可欠と認識するに至り、多次元対処防衛に踏み込むことになった。
 すなわち、戦争域が地球表面の陸海空のみでなく宇宙空間まで広がり、同時に戦力保持がサイバー・セキュリティに依存している現実を認識するに至り、宇宙作戦隊やサイバー防衛隊などを創設した。
 しかし、日本に不足するのは情報である。
 ファイブ・アイズの対象と兵器や弾道ミサイルなどの軍事情報といった違いはあるが、世界に情報網を展開するファイブ・アイズを活用できるメリットは大きい。
 第1は自由民主主義を基調とし、人権や法の支配といった価値観を守り抜く諸国との団結という意思決定であり、第2には日本が遅れているスパイ防止法などの整備の促進である。
 国際社会は日常が情報戦であり、情報を取られることは、国益を棄損し、安全の弱体化をもたらす危険性を有する。
 戦後の日本は安全を米国に依存してきたことから、情報の重要性を認識できないままで、スパイを放置してきた。
 日本からの情報漏洩で、日米同盟の信頼性が低下したこともある。
 いまこそ、情報は戦争防止に役立ち、不幸にして戦端が開かれた場合は戦争の勝敗を左右するキーとさえなり得るものであることを認識する必要がある。
スパイ防止法などを整備する好機
 中国の姿勢は真の友好とは疎遠で、TPOで容易に変化する。
 習近平主席が国賓来日を予定していた時は尖閣諸島への侵入を控えていたが、延期が決まった後の4月14日以来連続侵入記録を更新した。
 しかも、海警局の巡視船にはミサイル艇が同行し、フリゲート艦や地対艦ミサイル部隊も連動していることが判明した(「産経新聞」令和2年8月2日報道)。
 日本が真っ当な国であったならば、拉致を阻止できたであろうし、拉致被害が明確になった段階で取り返す意思表示と行動を起こしたに違いない。
 それを妨げてきた多くの要因を列挙できるが、根底には北朝鮮のスパイの暗躍を放置した一語に尽きるであろう。
 世界の覇権国を目指す中国が世界中から情報を窃盗し、経済発展と軍事力増強を行ってきたことが明確になっている。
 その最大の被害国が米国であるが、その米国は中国の意図を見誤ったことを告白して体制の改変に乗り出している。
 自由諸国の中で重きをなした日本は他の欧米諸国とは異なり、憲法の絡みもあって安全保障法制の整備にてこずってきた。
 中国とは政治システムが異なり、スパイ活動を承知しているにもにもかかわらず、法制の不備から寄らず離れずの対応が求められてきた。
 スパイ防止法未制定の背景には護憲派勢力の活躍や日本の文化などが基底にあることは言うまでもないが、法整備などに対する隣国の抗議などへの忖度がなかったとは言えない。
 独立国家として情けない話であるが、国民の意思でもあり民主主義の限界でもあろう。
 日本の安全を担保する米国は中国の台頭に頭を痛め、情報流出の阻止に躍起である。そうした中においても日米同盟の日本からの情報流出は許容できないであろう。
 日本は外圧でしか動かない国とも自任しているし、ファイブ・アイズへの誘致はいい意味での外圧として活用したい。
おわりに:
インドも含めた自由世界の結束を
 自由をベースにした民主政治、人権の尊重、法の支配、そして国家主家(の保証)を基本的価値観とする世界観を共有してきた西欧型政治に対峙し、挑戦しているのが全体主義の中国である。
 14億という膨大な人口を有し、高度経済成長を遂げてきた中国が魅力的な市場であることは言を俟たない。
 西欧諸国を含めた世界の多くの国が、拡大する中国市場に魅かれてきた。他方で毒をもつ中国市場は西側諸国の援助でもたらしたものでもあった。
 価値観と世界観の共有を期待できるという意識からの支援でもあった。
 ところが、肝心の中国は我々が期待した価値観を受け入れず、監視下の全体主義国家を意図していることが明確になってきた。
 そうした中国に先進諸国は団結して対処する意思を明確にするようになってきた。
 14億超の人口を抱える中国市場は魅力的であるが、21世紀中にインドに超されると予測する向きもある。
 しかも、インドは英語を公用語とする民主主義国家である。長期的にはインドの方が問題は少ないであろう。
「自由で開かれたインド太平洋」戦略の強化を目指して、日米は言うまでもなく、(米国も交えた)日豪や日印の共同訓練も盛んになりつつある。
 日英の共同兵器開発も進んでいる。時には日豪や日印の同盟締結の勧めさえ散見されるようになってきた。
 日本と英豪印との協力は各面で進んでいたのであり、いまさらファイブ・アイズへの参加を拒む理由はない。
 日本の安全にとって、タイミングに叶う外圧として積極的に受け入れたい。
 スパイ防止法などがないという危惧は言いがかりでしかない。
 安全保障環境を改善するためには、日本が自らスパイなどを取り締まり、秘蜜が漏れる状況があってはならない。