米連邦最高裁は19日、南部テキサス州の治安当局による不法移民逮捕などを可能にする同州法の施行を暫定的に認める判断を示した。この法律の適法性を巡っては現在、下級審が審理している。バイデン政権は「国境管理は連邦政府の専権事項だ」として、施行差し止めを求めていた。

　移民問題は11月の大統領選の主要な争点の一つ。バイデン政権のもと、米国への不法移民の流入が続く状況に共和党は批判を強めている。

　連邦最高裁の判事は現在、保守派が6人、リベラル派が3人の構成だ。米メディアによると、今回の判断ではリベラル派が全員反対した。問題の州法は昨年12月、共和党のアボット州知事が署名して成立。メキシコと接する南部の国境を不法越境した疑いのある移民について、警察に逮捕権限を与え、判事の強制送還命令なども認める内容だ。
　施行日は3月5日だったが、司法省などが1月に差し止めを求めて提訴した。1審判決は訴えを支持したが、テキサス州が連邦高裁に控訴している。

　アボット知事は19日、X（ツイッター）に「明らかな進展」と投稿し、最高裁判断を評価。一方、ホワイトハウスのジャンピエール報道官は声明で「基本的に同意しない」と述べた。

　テキサス州は、不法移民の流入を防ぐため、国境地帯に州兵を派遣したり、カミソリの刃を仕込んだ鉄条網を設けたりするなどの措置を講じている。また、州内に入った移民をバスで東部ニューヨーク州などへ移送する動きも続けている。【ニューヨーク中村聡也】