Shinzo-Returns

安倍総理の志は死なない!!

竹島のアシカ漁 証言の動画をユーチューブで公開

 韓国の不法占拠が続く竹島(島根県隠岐の島町)で明治期に行われていた日本人によるアシカ猟について、先駆者だった男性の孫の証言を収録した動画が26日、動画投稿サイト「ユーチューブ」で公開された。
 外交問題を研究するシンクタンク「日本国際問題研究所」(東京)が企画し、動画による証言の配信は初の試み。ニホンアシカの生息地だった竹島の周辺では、明治30年代には同町の猟師らによるアシカ猟などが盛んに行われ、日本が自国領を主張する根拠の一つとなっている。しかし、当時の様子を知る世代の高齢化が進み、関係者も相次いで亡くなっており、貴重な証言を動画で後世に残そうと令和元年度から撮影をスタートした。
 第1弾の証言者は、アシカ猟の先駆者とされる石橋松太郎さん(故人)の孫、佐々木恂(じゅん)さん(87)=同町=で、祖父から聞いたアシカの皮を敷物にしたり、島内で酒を造ったりした話などを14分間にわたり収録した。
 皮を使った敷物は祖父のお気に入りで常に持ち歩いていたことや、竹島周辺で行ったアワビ漁では韓国人の海女7人を雇う費用を捻出するため苦労した話なども証言。竹島の酒は隠岐でよく売れ、祖父は「竹島は宝の島」と語っていたという。
 証言者へのインタビューは、同研究所から竹島をめぐる聞き取り調査などを依頼されている島根大学の舩杉力修(ふなすぎ・りきのぶ)准教授(歴史地理学)が担当。「関係者が高齢となり、当時の正確な情報を知る人も少なくなっている。今後も同様の動画を公開し、海外や若い世代の竹島への理解を深めていきたい」と話している。

コロナ公表情報が全国最低レベル、東京都の功罪

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐには、感染症の発生状況を広く公表することが必要だ。感染場所に関する情報も、地域住民に注意喚起するうえで欠かせない。しかし、データ分析の専門家、高橋義明氏(中曽根康弘世界平和研究所・主任研究員)は、東京都の感染地域に関する情報発信は“全国最低レベル”だと指摘する。最も感染者が発生している東京都の対応は、コロナ感染拡大にどんな影響を及ぼすのか?(JBpress)
東京都の公表情報は全国で最低レベル
 感染予防法は「厚生労働大臣及び都道府県知事は、・・・収集した感染症に関する情報について分析を行い、感染症の発生の状況、動向及び原因に関する情報・・・を新聞、放送、インターネットその他適切な方法により積極的に公表しなければならない。」と規定している。新型コロナウイルス感染症の感染が拡がり始めた2020年2月27日、厚生労働省は感染予防法に基づき、都道府県、保健所などに対して「一類感染症が国内で発生した場合における情報の公表に係る基本方針」を通知し、新型コロナウイルス感染症についても「基本方針を参考にするように」とした。そこには公表基準として性別、年齢、発症日、居住都道府県名は公表するものとしているが、職業、居住市区町村名を公表しないものとした。
 この方針に最も忠実に倣っているのが東京都である。
 東京都は厚労省の通知に先立つ1月31日に「感染者の行動歴をプライバシーに配慮して公表する考え方について」を決定し、居住地は都道府県名までとした。さらに感染者が急拡大するのを受けて東京都は3月27日以降、個別患者情報として性別、年齢のみを公表するようになり、職業、濃厚接触者などの情報もアップデートされなくなった。4月1日以降、居住市区町村は集計値のみが公表されるようになったが、1日遅れのため、マスメディアでは東京都のどこで感染拡大しているか、ほとんど報じていない。
 それに対して大半の都道府県、政令市が感染予防に必要と判断し、厚生労働省は公表しない事項とした職業、居住市区町村名を発生症例ごとに公表しており、マスメディアも「◯◯市で何人」などと報じている。北九州市は陽性患者毎に居住区名も公表していたが、5月の第2波において病院、高齢者施設、小中学校名を積極的に公表して感染経路を見える化したのは印象的であった。
 東京都の公表基準の差に関する象徴的事例がいくつか見られたので紹介したい。1つは埼玉県川口市の事例である。
 川口市では陽性患者の発生時、個人が特定できないように配慮しつつ、年齢、性別、国籍、職業、居住市区町村名、発症から医療機関受診、検査確定までの症状・経過、渡航歴、接触歴、行動歴、濃厚接触者の有無、その他が公表されている。そうした中、3月下旬に東京都居住者が川口市内の検査で陽性判明した事例では東京都の公表基準に合わせるということで年齢、性別、職業、居住都道府県名、症状のみが公表された。つまり、川口市で通常公表されていた居住市区町村名、発症から医療機関受診、検査確定までの症状・経過、渡航歴、接触歴、行動歴、濃厚接触者の有無などは伏せられた。
 2つ目はさいたま市の事例である。5月末にさいたま市は市内在住の医療職の方が感染された際に症状・経過・行動歴、同居家族の状況などを発表した。しかし、この方は東京都内の医療機関で陽性が判明したことから公表が取り下げられた。その結果、東京都で公表された同じ方の情報は年齢、性別のみであり、居住地が埼玉県であることも医療従事者であることも判明しなかった。つまり、埼玉県から東京都に通勤していた者が感染していた事実が東京都からの情報では伏せられた。
 それ以外にも埼玉県の発表事例では「県外」居住者が41例、神奈川県では相模原市が「東京都」居住者と公表しているものを含めて「県外」居住者が32例ある。千葉県では基本的に他都道府県居住者についても都道府県名を公表し、船橋市では東京都以外の場合、居住市町村名も公表している。しかし、いずれのケースでも東京都の公表基準に沿うように東京都内の市区町村名は伏せられている。
地域空間という概念での把握
 感染予防対策をしていたとしても病院関係者の感染が多いのは、感染者が病院を訪れる確率が一般よりも高く、結果的に病院関係者が感染者と接触する確率が高いためである。感染症の専門家は濃厚接触という狭い概念に留めているが、確率論は地域空間でも当てはまる。つまり、感染者が多く住んでいる、または感染者が仕事などで訪れることが多い地域では、その地域に出入りする者と感染者が出会う確率は高くなり、結果的に予防していても感染確率は高くなる。逆に感染者がほとんどいない地域に住んでいて、また感染者が仕事などで訪れる機会が少ない地域では感染する確率は極めて低い。さらに人口密度の濃淡が感染者との接触確率、感染確率を変える。つまり、感染者と出会う確率が高い地域をあぶり出すことが感染拡大抑制においても重要になる。
 新型コロナウイルス感染症の場合、発熱などの症状が出る前でも他者に感染させる可能性が高いことが明らかになっている(Cheng et al., 2020)。発症前の感染者を検査などで明らかにするのが難しい以上は、他の感染症以上に空間的にエピ・センター(感染の発生地)を見える化することが重要になる。エピ・センターを見える化するには「都内」か否かでは広すぎる。
東京都が市区町村名を公表しないことの影響
 東京都が居住市区町村を公表しないことは2つの意味でエピ・センター(感染の発生地)を特定する上での足かせになっている。
 1つ目は東京都発表において居住地域住民への注意喚起が十分されないことである。
 3月末の感染拡大の際にも厚労省・専門家会議の提言で「夜の街」に焦点が当てられた(「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」2020年4月1日)。しかし、「夜の街」で感染が止まることなく、全国に感染が拡大し、院内感染が多発した。現在、再び「夜の街」に焦点が当てられ、新宿の名前が挙がる。しかし、その結果、もっぱら歌舞伎町の特定の店というイメージで捉えられている。新宿で働く方が全員新宿区に在住しているとは限らない。国勢調査によると新宿区で働く者の66%が新宿区以外の居住者である。東京都以外の自治体の公表基準であれば、誰と誰が濃厚接触者であるかが公表されているため、例えば、新宿区居住者の濃厚接触者として世田谷区居住者が挙がっていれば、いずれがエピ・センターかを把握できる可能性が高くなる。
 2つ目の意味は、ある人が感染した可能性がある場所として通勤地が考えられるものの、居住市区町村名が明らかにされない以上、都内の通勤先の市区町村も明らかにされないことである。
 4月初には東京都への通勤率が高い市町村ほど感染率が高かった(高橋「東京都心通勤と新型コロナウイルス感染拡大:1都7県のデータからの検証」)。つまり、埼玉、千葉、神奈川、茨城などで感染拡大がみられた理由の1つとして県民の都内通勤が影響したと推測された。実際、川口市、越谷市、船橋市などは感染したと疑われる場所として会社の所在地が考えられるため、会社員などが都内通勤か否かを明らかにしている。しかし、都内のどの市区町村かは明らかにしていない。埼玉県も当初は職場の最寄り駅名まで公表していたが、現在は通勤が都内か否かも公表しなくなっている。そこにも東京都の公表基準が影響していると考えられる。
都内が感染場所と推定される事例が最近増加
 5月25日に緊急事態宣言された後に感染が増えているが、その感染地を推定したところ、都内の確率が高くなった。
 下の図は5月26日以降に明らかになった全国の感染例について報道も含めて症例ごとに情報をまとめ、テキストマイニングの分析手法で関連性をイメージ化したものである。
 © JBpress 提供 (注)分析に使用したのは2020年5月26日から6月20日までの公表分。ただし、北海道、福岡県はそれぞれの地域内でクラスターが発生していることから除外
 この結果をみると、埼玉、千葉、船橋、神奈川、横浜、川崎で都内通勤者が感染していること、京都、福島、静岡、茨城で都内との往来が関係したことが分かる。一方、神奈川では病院での院内感染、家族間での集団感染、そして入院前検査での判明がみてとれる。大阪との関係でも大阪府内だけでなく、兵庫、滋賀で大阪との往来または勤務が結びついている。
 少なくとも千葉県では38%(10例)、埼玉県では26%(10例)、茨城県、福島県では100%(それぞれ2例、1例全て)、京都府では50%(6例中3例)が東京都内との関係が明らかになっている(5月26日から6月20日まで)。さらに、岐阜県、愛知県の症例では神奈川県との関係、栃木県の症例では埼玉県がそれぞれ感染した可能性がある地域として挙げられている。
大都市圏で重要な情報は勤務先の市町村情報
 埼玉県、千葉県、神奈川県は現在、ほとんどのケースで勤務先が東京か否かを明らかにしていない。しかし、上記の結果から再び都内通勤などを契機に首都圏などへ感染が広がっている兆しが見てとれる。
 第1波からの教訓としてまず率先して取り組むべきことは、東京都が集計値ではなく、感染者情報で市区町村を明らかにすることである。そのことが東京都以外の自治体が東京都内の市区町村名を明らかにすることにつながる。
 さらに埼玉県、千葉県、神奈川県などは通勤先や立寄り先の都内の市区町村名を明らかにすることである。例えば、これらの県の感染者に新宿区通勤者が多いのであれば、感染は夜の街からビジネス街に広がっていることが推察される。第1波の際には港区在住者の感染率が1000人に1.04人、新宿区が1000人に0.88人と多かった(4月末時点)。多くの方たちは企業などの発表資料まで注意してみていなかったと思われるが、その時期に港区内、新宿区で感染発生を公表した企業などがそれぞれ68箇所87人、39箇所45人あった。その中には区外からの通勤者も多く含まれていたと考えられる。
 現在も新宿区居住者の感染数だけをみていてもエピ・センターを見える化したことにはならない。居住地ベースでの感染者数は緊急事態宣言解除後、新宿区が205人と多いが、世田谷区63人、中野区48人、板橋区29人、杉並区22人、練馬区21人などと住宅地の多い区でも増えている(6月24日現在)。世田谷区民が世田谷区内で感染したのか、通勤地のある区で感染したのかで感染対策や区民の予防策も代わってくる。筆者のレポートでも述べたが、居住者+通勤者の生活圏での感染者数を明らかにすることが必要である(高橋「新型コロナウイルス政策における証拠に基づく政策決定(EBPM)」)。
 厚労省も2月27日の都道府県などへの通知の中で、「感染源を明らかにし(感染推定地域および感染源との接触の有無を発信)、国民にリスクを認知してもらう」ために「感染推定地域:国、都市名」を明らかにすべきとしている。これは海外での感染を想定したものであるが、日本国内で感染が広がる新型コロナウイルス感染症に関しては国内に当てはめて「積極的に公表すべき」であろう。
 埼玉県、千葉県、神奈川県、政令市などは東京都に都内市区町村名の開示を求め、自らも都内通勤先市区町村名を明らかにすることが県民、市民を守ることにもつながる。各知事、市長には住民に自衛を求めたり、都での感染拡大に懸念を表明するだけでなく、情報を武器にしたリーダーシップを期待したい。

ボルトン暴露本が明かす日米韓関係の光と影

米国内よりも世界に強烈なインパクト
 ジョン・ボルトン前大統領補佐官の回顧録『The Room Where It Happened: A White House Memoir』(それが起きた部屋:ホワイトハウス回想録)は、米国内というよりも世界中のトップやメディアに強烈なインパクトを与えている。
 理由は2つある。
 一つは、ボルトンという頭脳明晰な学者兼外交官が身近で目撃したドナルド・トランプという稀有な大統領の実像・虚像が明かされているからだ。
 もう一つは、ボルトンという共和党歴代政権で常に日の当たる場所に身を置き、超タカ派思想を各政権に植えつけてきた外交のエキスパートが、何を見聞きし、どう分析していたかへの関心だ。
 メモ魔と言われるボルトン氏が機密情報漏洩スレスレに公開した中身も興味深い。
 どの国の指導者たちも対外交渉の中身は自国民には明かさないからだ。
 特に目につくのは韓国の文在寅大統領周辺と韓国世論の騒ぎようだ。今にも政権がぶっ倒れそうな感じすらする。
 在韓米軍駐留費交渉や米朝首脳会談の経緯を巡ってボルトン氏が暴露した裏話は、事実なら、文在寅大統領の政治生命は危うい。
 さらに言えば、ここまで書かれてしまった北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長や金与正党第一副部長はどんな顔をしているのだろう。
 この本に書かれていることは真実であり、事実なのだろうか。
 米テレビ局のインタビューで、「ホワイトハウス在任期間のノートはすべて破棄されたのに500ページもの本をどうして書けたのか」と聞かれたボルトン氏は、「私は生まれつき記憶力が良いからだ」と平然と答えている。
 ボルトン氏はイエール大学首席卒業の秀才。在学中には州兵予備役として入隊、陸軍予備役としてベトナム戦争に従軍する寸前までいっていた。
(このへんは仕えた大統領がすべて兵役を忌避していたのは大違いだ)
 その後、エール大学法科大学院で法務博士号を取得している。
 根っからの共和党員*1で、ロナルド・レーガン第40代大統領の下で司法次官、国務次官補などを歴任するなど要職をこなした。
*1=2014年以降、共和党の現職上下両院議員に政治資金を提供、2020年の上下両院選に再出馬している現職議員数人に選挙資金を出している。
(https://www.thedailybeast.com/john-bolton-is-a-pariah-but-will-republicans-still-take-his-cash)
 2003年のイラク侵攻では他のネオコン(新保守主義者)学者・官僚とともに旗振り役を演じた。
 今ではイラク侵攻は「間違った戦争」という概念が米国では定着している。
 ボルトン氏をよく知る主要シンクタンクの上級研究員K氏はこう指摘している。
「当時ブッシュ政権(子)で国務、国防両省の要職についていたネオコンはイラク戦争の『戦犯』として一掃されてしまった」
「そうした中でもボルトン氏はどっこい生き残った。トランプ大統領に拾われて最終的には国家安全保障担当補佐官にまで上り詰めた。それだけにリベラル派や主要メディアからは目の敵にされてきた」
「今回なぜ本を書いたのか。真意は分からない。トランプ大統領が違憲すれすれのことを外交でやっていたと批判しているが、それならなぜ2019年12月の下院司法委員会で証言しなかったのか」
 米国内でトランプ大統領の「犯罪」を追及するリベラル派の面々もその点が引っかかっている。
 軽いタッチで米政治社会を鋭くえぐるワシントン・ポストの女性コラムニスト、アレクサンドリア・ペトリ氏はこう辛辣にコメントしている。
「ボルトン氏の投げた手投げ弾は、言ってみれば飼っている子犬が大事にしているクッションに粗相をしたようなもの」
「もはや驚きもしない。しかしがっかりしている」
「見聞きしたすべての情報を下院で証言する代わりに本を書くためにとっておいたのだから」
(https://www.washingtonpost.com/opinions/2020/06/18/heres-what-truly-shocking-revelation-would-sound-like-john-bolton/)
 ボルトン手投げ弾で一番ショックを受け、慌てふためいているのは韓国の文在寅大統領だろう。
 文在寅大統領がこれまでやってきた対北朝鮮交渉が独りよがりで思い込みが激しく、文在寅大統領自身、お粗末な仲介者だったことを露呈しまったからだ。
 韓国の有力紙、東亜日報は「北朝鮮の非核化詐欺、韓国のお粗末な朝鮮半島運転者論や仲介論が虚像であることが暴露された」と大上段から構えた社説を載せている。
(https://www.donga.com/jp/List/article/all/20200623/2099449/1/%E5%8C%97%E6%9C%9D%E9%AE%AE%E3%81%AE%E9%9D%9E%E6%A0%B8%E5%8C%96%E8%A9%90%E6%AC%BA%E3%80%81%E9%9F%93%E5%9B%BD%E3%81%AE%E3%81%8A%E7%B2%97%E6%9C%AB%E3%81%AA%E4%BB%B2%E8%A3%81%E8%80%85%E3%81%AE%E8%99%9A%E5%83%8F%E3%82%92%E6%9A%B4%E9%9C%B2%E3%81%97%E3%81%9F%E3%83%9C%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%B3%E5%9B%9E%E9%A1%A7%E9%8C%B2)
日本について最も書かれた暴露本
 日本や安倍晋三首相に関する記述もふんだんに出てくる。
 米歴代大統領や閣僚経験者たちの回想録で、これほど日本の首相や日本関連の下りが出てくる本は稀有だ。
 すでに既報済みだが、日米関連政策に関するものとしては、2021年以降の在日米軍駐留費の日本側負担「思いやり予算」を巡る情報がある。
 これはボルトン氏の独断と偏見で書かれた「事実」だ。
 ボルトン氏が昨年7月に訪日した際、日本側にトランプ大統領が年80億ドル(約8500億ドル)を望んでいることを伝えた。
 2020年度予算に計上された「思いやり予算」は約1993億円だ。トランプ大統領の意向として日本にその4倍以上を望んでいるというわけだ。
 この80億ドル要求説はこれまでにも米メディアでは報じられているが、実名で当時の政府高官が明かしているのは初めてだ。
 ボルトン氏の日本政府への伝達が公式なのか、どうかは分からない。
 菅義偉官房長官は「増額を要求された事実はない」と否定している。少なくとも日米外務・防衛事務レベルでこうした提案が米側から出されたものではないということだろう。
「思いやり予算」を定める日米特別協定更新に向けた交渉は年内にも本格化する。その場で米側は80億ドルを要求するということなのかもしれない。
 ボルトン氏はさらにこう続けている。
「(私は80億ドルという数字を挙げたが)トランプ氏だけが彼の満足する数字を知っている。だから本当の数字を推測することは無意味だ」
「ただ(日本や韓国に対して)前もって数字を示し、警告することがトランプ氏の要求に対応する機会を(日本や韓国に)与えた」
「トランプ氏は(私に)駐留米軍を撤収するぞと脅すことで(日本や韓国との駐留経費の)交渉でこちらの立場を有利にできると語っていた」
トランプ大統領が頻繁に電話する外国首脳
 トランプ大統領は安倍晋三首相に頻繁に電話をしてきた。なぜか。
 米主要メディアのホワイトハウス詰め記者の一人、W氏はその理由についてこう指摘する。
「トランプ大統領は側近でも自分の言うことを黙って聞いてくれる人が好きだ。外国首脳でも同じ」
「安倍首相は聞き上手で、トランプ氏の話をよく聞いてくれるからだろう。トランプ氏は反論されるのが大嫌いだった。安倍氏は反論しないからだろう」
 しかし、どうもそれだけではなさそうだ。
 ボルトン氏は著書の中で安倍氏についてこう書いている。
「トランプ氏が世界中のリーダーで最も個人的に仲が良かったのはゴルフ仲間でもある安倍晋三首相だ」
「英国のボリス・ジョンソン氏が首相になり、(最も仲の良いリーダーは)安倍氏と肩を並べることになった」
「トランプ氏は、安倍氏の父親(安倍晋太郎氏)が旧日本軍のカミカゼ・パイロットだったことについて話をするのが好きだった」
「トランプ氏は日本人がいかにタフであるか、特に安倍氏はタフだと言っていた」
「安倍氏の父(安倍晋太郎氏)は特攻隊志願兵として天皇陛下のために命を捧げるつもりだったが、それを果たすことはできなかった*2。もし戦場に赴いていれば、今の晋三(1954年生まれ)はこの世には生まれていなかった」
*2=安倍晋太郎氏は1944年、東京大学入学後、学徒出陣として徴兵され、特攻隊に志願。45年、少尉任官直前に父親の安倍寛氏に「この戦争は負けるだろう。敗戦後の日本が心配だ。若い力が必要になる。無駄な死に方はするな」と止められて諦めた。
 なおトランプ氏は安倍首相の父親が特攻隊志願だった話を2019年8月、ニューヨークで開かれた政治資金集めの会合の席上、明かしている。
(https://nypost.com/2019/08/09/trump-cracks-jokes-about-rent-control-kamikaze-pilots-at-hamptons-fundraiser/)
 トランプ氏がこの話をどこから「仕入れた」のかは定かでない。安倍氏との初対面の時に国務省あたりが情報を入手し提供したのか。
 いずれにせよ、沈思黙考するのは苦手。思いついたことは何でも口にするトランプ氏が安倍氏についての情報をこうした形で入手していたとは驚きだ。
 と同時に、日本といえば、すぐ思い浮かべる「真珠湾奇襲」のトランプ氏がカミカゼ・パイロットに日本人の勇猛果敢さを見出し、それを安倍氏に投影させているというのも興味深い。
 日米を往復しながら日米関係を時系列的に分析している日本人研究者のY氏はこう言う。
「平均的な日本人の『トランプ観』は、ハチャメチャな男で世界中が迷惑をしているが憎めない男。日本人はトランプ氏が好きなのか嫌いなのか分からない」
安倍氏は対北朝鮮非核化、拉致では不変
 こうした安倍氏の父親譲りのタフネスぶりをボルトン氏は何度か、目撃している。
「安倍氏は金正恩氏を全く信用していなかった。日本は非核化と拉致問題について(金正恩氏から)具体的で明確なコミットメントを望んでいた」
「安倍氏はトランプ氏に『あなたはバラク・オバマ前大統領よりもタフだ』と強調した。今こそ、その点をトランプ氏に想起させる必要があると考えていたし、そのことを示した」
「シンガポールで行われた米朝首脳会談に先立ってワシントンでトランプ大統領と会談した安倍首相は北朝鮮について、『非常にタフでずる賢い』と言い切った」
 安倍氏は、『北朝鮮にはまず具体的な措置をとるべきだ。(我々は)安易に北朝鮮に対する制裁を解除すべきではない。今解除すべき必要などない』と忠告した」
 だが良いことばかりではない。
 ボルトン氏は2019年6月、安倍首相がイランを訪問した際の裏話を明かしている。
「後になって知ったのだが、トランプ氏は安倍氏に米国と(日本とは友好関係にある)イランとを取り持つように依頼した」
「2019年5月、私が東京で安倍首相に会った際、同氏は『トランプ大統領からの要請なので、イランを訪問する』と明かした」
「その直後の5月27日、東京で行われた日米首脳会談で安倍首相はトランプ氏にイランを6月に訪問すると伝えた」
「トランプ氏は、それを聞いて椅子から滑り落ちはしなかったし、大事な点を聞き逃してはいなようだったが、深い眠りに落ち込んでいた(つまり安倍氏が話している最中に居眠りをしていた)」
「安倍氏がイランの最高指導者、アリー・ハメネイ師と会談している最中、イラン沖で日本などの海運会社が運航するタンカーが攻撃された」
「イランは安倍氏に平手打ちする形で、日イラン首脳会談は完全な失敗に終わった」
「安倍氏は帰国後、トランプ氏と電話会談した。トランプ氏は『協力には感謝する。だが個人的には日本に米国の農産物をもっと買ってもらう方が重要だ』と、(自らが安倍氏に依頼した米国とイランとの関係を取り持つことなどよりも)すでに自分の関心事は(再選に向けた)農産物の輸出の話題に移っていた」
 朝令暮改、今朝言っていたことは夕方にはころりと忘れしまう。しかも最大関心事は常に2020年の大統領選でいかにしたら再選するか、そのために支持層に益となることを外交の主軸に据える。
 トランプ氏の外交について、ボルトン氏がこう言い切っているゆえんだ。
「トランプ氏には個人的な利益と国家の利益、つまり国益との違いを分別することができないのだ」
文在寅大統領:
「自衛隊には絶対に韓国の土を踏ませない」
 日韓関係のくだりでは、文在寅大統領の生の声が出てくる。
 ハノイでの米朝首脳会談後の2019年4月11日、ワシントンで米韓首脳会談が行われた。
「トランプ大統領は、ワーキングランチで文在寅大統領にこう尋ねた。『韓国は同盟国として日本と共に戦うことができるか』」
 これに対して文在寅氏はこう答えた。
「日韓で合同軍事演習はできる。しかし日本の兵力(自衛隊)が韓国の土を踏むことには韓国国民に(日韓併合時の)歴史を思い出されることになる」
 トランプ氏はさらに質問した。
「万一我々が北朝鮮と戦わなければならない状況に立ち入ったら、どんなことが起きるか。韓国は日本の参加を受け入れることができるか」
 文在寅氏は答えた。
「日本の兵力が韓国の地に足を踏み入れない限り、韓国は日本と一つになって戦う」
 韓国の鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長はボルトン暴露本に書かれた韓国関連部分についてこう指摘している。
「この本に書かれている相当部分は事実を大きく歪曲している」
「米韓両国政府間の相互信頼に基づいて(首脳会談をはじめとする政府間で行った)協議した内容に一方的に公開することは外交の基本原則に反する。今後の交渉に向けた国家間の信義を著しく殷損しかねない」
(https://time.com/5856977/south-korea-john-bolton-book-kim-jong-un/)
 トランプ大統領の超側近、マイク・ポンペオ国務長官はボルトン氏の暴露本について刑事上の責任を負うべきだと、6月23日のフォックス・ニュースとのインタビューで主張している。
「(現在情報漏洩罪など数十件の容疑で米連邦捜査局=FBIが捜査している)エドワート・スノーデン元米国家安全保障局(NSA)元分析官のように国家機密情報を暴露すればどうなるか。ボルトン氏も同じ目に遭うだろう」
(https://www.foxnews.com/media/pompeo-john-bolton-not-dissimilar-edward-snowden)
日米同盟関係を壊されることだけは避けよ
 話をトランプ大統領と安倍首相との関係に戻す。
 おそらく歴代首相で米大統領とこれだけ親しくなった(つまり米大統領がこれほど日本の首相に親近感を感じて付き合ったという意味では)ドナルド・シンゾー関係は、レーガン大統領と中曽根康弘首相とが築き上げた「ロン・ヤス」関係の上をいっているかもしれない。
 その親密な関係は日本にとって役立ってきたのか。
 長年日米関係をジャーナリストしてフォローしてきたY氏はこう指摘している。
「安倍氏は一見、トランプ氏におもねっているようで環太平洋パートナーシップ協定(TPP)締結にしろ、地球温暖化防止のパリ協定残留にしろ、米国とは一線を画す形で日本としての主張は貫いてきた」
「貿易面でもトランプ氏は当初、対日貿易赤字700億ドルを何とかせよと言っていたが、今は引っ込めている」
「安倍氏はトランプ流外交、つまり言っていることとやっていることの間にある乖離をうまく見抜いている」
「日本にとっての対米政策の根幹とは、日米同盟を崩さぬこと。長い日米関係の中ではトランプ政権は、まさに片時で瞬間的なもの」
「中長期的はおろか短期的にも戦術も戦略もないトランプ大統領にその根幹をいじくってほしくない。そのためにトランプ氏がカミカゼ・パイロットの安倍氏の父が好きだ、ということで安倍首相が好きだと言うなら、それを利用すればいいことだ」
 超タカ派で権力主義者を嫌い、人権尊重主義者、つまり中国の習近平国家主席や金正恩朝鮮労働党委員長が大嫌いなボルトン氏が渾身の力を絞って書き上げた暴露本。
 百人百様の読み方がありそうだ。