Shinzo-Returns

安倍総理の志は死なない!!

習近平主席を挑発した美貌の駐米台湾大使

JBpress 提供 蕭美琴氏(2016年10月19日撮影、写真:ロイター/アフロ)
核搭載可能爆撃機「轟6」8機も侵入
 台湾海峡波高し――。
 台湾をめぐる米中の挑発合戦がバイデン米政権発足直後からきな臭さを増している。
 いや、直後ではない。ジョー・バイデン氏の大統領就任式当日からだ。
 米国東部時間1月20日正午すぎ、中国は台湾の防空識別圏に偵察機を飛ばし、台湾の動向を探り、23、24両日には中国軍機28機を同圏に侵入させてきた。
 1日に10機以上、しかも連日、これだけの規模の軍機を侵入させたのは2020年9月、キース・クラック米国務次官(経済成長・エネルギー・環境担当)が訪台した際の16機以来だという。
 台湾国防部(国防省)によれば、1月23日侵入した軍機は、核兵器搭載可能の爆撃機「H6K(轟6)」8機と戦闘機「J-16(殲16)」4機など13機。
(https://www.reuters.com/article/us-taiwan-china-security-idUSKBN29S0BK)
 米国務省のネッド・プライス報道官は23日、直ちに声明を発表。
「中国に対して、台湾への軍事・外交・経済的圧力をやめ、台湾の民主的に選ばれた代表者と有意義な対話をすることを促す。米国は台湾が十分な自衛能力を維持できるよう支援していく」
「米国は1979年の『台湾関係法』(台湾を国交のある国と同等に扱い、台湾への武器売却を定めている)や1982年の『6項目保証』(台湾への武器売却については中国と事前協議はしないことを定めている)など長年にわたる約束を維持する」
「台湾との約束は安定したものであり、台湾海峡や地域の平和と安定の維持に貢献する」
(https://www.state.gov/prc-military-pressure-against-taiwan-threatens-regional-peace-and-stability/)
 これに対し、中国は猛反発。中国外務省の趙立堅報道官は25日、記者会見でこう発言した。
「米国は台湾問題を慎重かつ適切に処理し、『台湾独立』勢力に誤ったシグナルを送らないよう求める」
「中国が国家主権や領土を守り、『台湾独立』勢力と外部勢力の妨害に断固反対する決意に変わりはない」
 さらに同日には、習近平国家主席が「世界経済フォーラム」のオンライン会合「ダボス・アジェンダ」で講演し、その中でこう述べた。
「国際社会は1か国や数か国が第三国にああしろこうしろと命令するものであってはならない」
 まさにバイデン政権が台湾問題で「中国にいちゃもんをつけるのはけしからん」と牽制したわけだ。
 米中の挑発合戦に早くも国家主席がしゃしゃり出てきたのだ。
蕭美琴氏とは何者か
 だが、この中国軍機の台湾侵入をめぐる攻防には前段がある。ワシントンの西側外交官の一人はこう「解説」する。
「バイデン氏やその取り巻きは中国に弱腰と言われてきた。トランプ氏が盛んにそう言いふらしてきたからだ」
「アントニー・ブリンケン国務長官やカート・キャンベル上級調整官らバラク・オバマ政権で対中外交政策を立案してきた連中は対決よりも話し合いを重視してきたことも事実だ」
「ところが、今年の大統領就任式では目を見張るようなことが起きていたんだ」
「ワシントン常駐の大使は約190人ぐらいだが、招待されたのは180人。その中に女性の台湾駐米大使がいたのだ」
 この駐米大使とは、「台北駐米経済文化代表処代表」の蕭美琴氏(49)のことだ。
 米プリンストン神学校で博士号を取得した牧師の台湾人の父と米国人の母の混血で神戸生まれ。
 小中学校は台湾だが、高校から米国で、オーバリン大学を経てコロンビア大学大学院で政治学修士号を取得。米国、台湾二重国籍者だ。
 陳水扁政権の総統府顧問として中央政界入り後、延べ4期にわたって立法委員。蔡英文政権2期目発足に伴い現職に就任している。
 美貌に加えてバイリンガル。米国にも友人、知人が多くいる。女性の権利を訴える人権活動家でもある。
 台湾にとっては理想的な対外スポークスパーソンだ。
 粛氏は、1月20日、就任式の始まる前、米議事堂を背に純白のスーツ姿で動画に登場してメッセージを発信した。
「台湾政府と台湾人民を代表してバイデン大統領、カマラ・ハリス副大統領の就任式に参列することを名誉に思っています」
「民主主義は米国、台湾人民の共通の言語であり、自由はわれわれの共通の目標です」
(https://www.taiwannews.com.tw/en/news/4107807)
(https://www.wsj.com/articles/biden-sends-important-foreign-policy-signal-with-taiwan-inauguration-invite-11611230623)
 これに合わせて台湾外交部(外務省)は次のような声明を発表した。
「台湾政府の代表が大統領就任式に公式に招待されたのは(1979年以来)初めてである。これは共通の価値観を共有する台湾と米国の緊密かつ友好的な関係を示すものである」
「台湾政府は現在存在する良好な基盤に基づき、将来に向け、バイデン政権とのあらゆる分野、あらゆるレベルでの交流と協力とを引き続き促進し、台湾と米国のパートナーシップを深化させていくことを誓う」
 ここまで台湾に言われて、人一倍プライドの高い習近平氏が黙っているわけがない。
 就任式の場で米国は「二つの中国」(一つの中国と一つの台湾)を認めたようなものである。
米上下両院合同運営委員会が仕切る
 前述の西側外交官は言う。
「台湾駐米大使の招待を誰が決めたのか。知人の米国務省高官は『バイデン大統領でもブリンケン長官でもないよ』と言っていた」
「就任式は米上下両院合同大統領就任式運営委員会(Joint Congressional Committee on Inaugural Ceremonies=JCCIC)が取り仕切っている。上下両院議長、院内総務らが運営委員になっている」
「台湾公式招待は議会サイドから出たのだろう」
(https://www.inaugural.senate.gov/)
 米議会には「米台議員連盟」はじめ台湾支持グループがいくつかある。メンバーは何も共和党反中強硬派だけではない。民主党リベラルもいる。
「一つの中国」という米中国交樹立時の合意は「尊重」はするが、中国が武力行使で台湾を合併することには反対し、中国の動きを監視する議員たちだ。
 その数は上院では十数人、下院では約120人いる。
 有力メンバーにはジェームズ・インホフ上院軍事委員長(当時、共和、オクラホマ州選出))やエド・マーキー上院議員(民主、マサチューセッツ州選出)がいる。
 2020年には、「台北法」(Taiwan Allies International Protection and Enhancement Initiative=TAIPEI)*1や「台湾保証法」(Taiwan Assurance Act)*2などを次々と成立させ、ドナルド・トランプ大統領(当時)は署名している。
*1=台湾の外交関係を促進させ、台湾の防衛や繁栄を妨げる第三国には制裁措置をとる法律。
*2=米国の台湾への武器売却を保証し、売却の際には中国との事前協議は必要としないとする法律。2021会計年度予算に盛り込まれた。
 米国と中華民国(台湾)が外交関係を断絶したのは、1979年、ジミー・カーター第39代大統領の時。中華民国の駐米大使は沈剣虹氏だった。
 それ以後共和党4人、民主党3人の歴代大統領は就任式に「駐米台北経済文化代表処代表」を正式招待していない。
 それが、バイデン大統領が慣例を破って正式招待したのだ。誰が言い出したのか。
 外交通の間で噂されているのはナンシー・ペロシ下院議長(民主、カリフォルニア州選出)だ。
 米国務省関係者も「ペロシ説」に頷く。
「ペロシ氏は蔡氏が総統選に勝った時には真っ先に祝意を述べていたし、『台北法』成立の際には『米議会が、米国は台湾とともにあることを世界に知らせるメッセージだ』と言い切っていた」
「天安門事件の時には中国を激しく糾弾、中国国内や香港の民主化運動を熱烈支持してきたのもペロシ氏だ」
 確かに、台湾支持者は何も保守反共議員だけではない。中国の人権弾圧や台湾いじめを厳しく批判する議員はリベラル派の中にも多くいる。「民主党の女帝」ペロシ氏はその典型と言っていいだろう。
 ペロシ氏に言われれば、バイデン大統領もその周辺の中国通も無視はできないはず。
 それに融通無碍な(?)「スリーピー・ジョー」にしても台湾駐米大使を就任式に招くことで米国内にくすぶっている対中弱腰批判を一掃できる。
 まさに渡りに船だったかもしれない。