Shinzo-Returns

安倍総理の志は死なない!!

筋の通らない宣言解除、国は「データ遊び」をやめよ

 1都3県への緊急事態宣言が3月21日に終了を迎える予定だ。1月に宣言が出てから2度の延長を経たが、3月13日までの状況を見る限り、2度目の延長宣言の時とほとんど変わっていない。果たして、今度は延長されないのだろうか。
 日本には「説明責任」という言葉があるが、この意味が「何かの行動をした際に、その説明をする責任」だとすれば、コロナについては政府も日本医師会も説明責任を完全には果たしているとはいえないだろう。そのことは、様々なメディアを見れば一目瞭然で、むしろ説明責任が曖昧だから国民は怒っているのである。
 国民の命を経済に優先させることが、緊急事態宣言を発動した理由の一つだとすれば、現段階ではそれを終了する理由は見当たらない。このため、経済活動への影響を考えた措置を取りつつ、ここでは再々延長を考えるべきだろう。
 もう一つ、よくわからないのは、「日本人は欧米人とは異なるため、コロナ感染者数がそもそも非常に少ない」という意見の真偽だ。もしそれを証明する事実があるならば、欧米人に効くことを前提として作られたワクチンが日本人にも有効かは疑問である。
新規感染者数は3月7日と変わっていない
 コロナ感染状況を示すデータは、この1年間でいろいろなものが出てきた。新規感染者数、PCR検査陽性率(陽性者数/検査数)、入院患者数、重症患者数、病床使用率など様々なものがある。このうち、緊急事態宣言に最も影響を与えていると思われるのは、新規感染者数と病床使用率である。
 データとは生の数字だけを見せていれば、受け止め方は人それぞれだが、ここに説明書きがつくと、説明の仕方によっては国民の解釈にバイアスがかかるリスクがある。例えば、3月7日までの緊急事態宣言が2週間の再延長がされた背景には、「新規感染者数が下げ止まっている」との説明があった。つまり、減らなくなったことが理由なのだから、今度は目に見えて減っている状況にない限り、緊急事態宣言は続くという理解になる。
 ここで、緊急事態宣言が続いている1都3県のうち、東京都の状況でこの下げ止まりに注目してみると、3月13日現在、日々の新規感染者数の7日平均の推移は、今も横這いを続けている(都内の最新感染動向)。
 それどころが、新規感染者における接触歴等不明者数は増加気味にある。検査者の陽性率も下がっているが、むしろ、それと同時に検査数が減っていることが気になる。しかも、発熱等相談件数は日々のデータも7日平均も横這いである。
 仮に、西村大臣や1都3県の知事が、菅首相が早めの2週間延長という判断を下した際のデータに注目して判断するならば、今回も延長するというのが筋だろう。それが、国民の命を優先するとのこれまでの主張を引き継ぐことになる。
 ところが、逆に別の理由を挙げて、つまり別のデータに国民の目を誘導して、再々延長をやらないとすれば、それは「データ遊び(数字の解釈を常に自分の都合のいいように扱うこと)」をしているだけに過ぎなくなる。数字は両刃の剣なのだ。
世界の新規感染者数は再び増加傾向
 世界全体の感染者数は1億2000万人を上回り、死者数も265万人を超えた。世界と日本の人口の違いなどを加味しても、いかに世界全体の感染者数が多いかがわかる。
 この事実を捉えて、これまで「日本の特殊説」、または「日本人の特殊説」を唱えてきた人も少なくない。例えば、「子供の頃に天然痘予防のためのBCGを打っていたから」「日本人の衛生意識が非常に高いから」というのが典型だ。
 中には、14世紀の欧州で拡がった黒死病がポーランドでは下火だった理由を、「ポーランド人はアルコール(お酒)で机をふく習慣があったから」と解説する向きもある。もちろん、世界中のほとんどの専門家はそれが理由とは考えていないが、同じような発想で今の日本の「衛生的」な環境を理由に挙げる人は少なくない。
 重要なことは、世界全体でも下げ止まりからやや上昇気味に転じており、まさに今が正念場だという点だ(世界の新規感染者数)。つまり、日本の独自性を考えた緊急事態宣言の延長の判断と、世界の動きを考えた判断を融合させることが必要なタイミングだと感じるのは筆者だけではないだろう。
 日本は4月1日から海外からの入国者数を1日当たり2000人までとするが、これは逆をいえば、2000人までならOKという意味である。毎日新聞の記事には3月は1日当たり1700人とあるので、1日当たりの入国者数を実質的に増やすことを意味している。
 もう一つは、オリンピックを考えれば、海外からの選手団の入国はコロナウイルスを日本国内に持ち込む可能性が増大することと同義であり、自覚症状があるかどうか、検査時点で陰性だったかどうかという点はあまり意味をなさない。だとすれば、今回も再々延長をして、4月下旬まで様子を見た方がいいということになる。
アジア人のテスト数が少ない欧米製ワクチンのリスク
 今回のコロナで、日本製のワクチンが話題にも上らないことを眺めて、日本の技術力が落ちたと感じた人は少なくないだろう。事実、半導体、電化製品、スマホ、PC、電気自動車など、あらゆる分野で日本の技術競争力は1980年代のバブル時をピークに落ちている。
 一方、日本人の舶来思考と日本国全体が持ち始めた反中の発想、さらにインドを格下と見る感覚から、日本は米国のファイザーや英国のアストラゼネカのワクチンは輸入しても、中国製を輸入する予定にはなっていない。政府は、中国製ワクチンが厚労省の審査に合格していないという理由を挙げているようだが、であればいつ頃になれば通るのだろうか。現段階でなぜ審査を通過できていないのだろうか。そこの説明を聞きたいところである。
 まして、IOCが中国製のワクチンを購入することを決めた以上、日本も審査を速めるべきだろう。丸川五輪相は、中国が申請しているかどうかも把握していないと述べている。閣僚としては奇妙な回答だ。
 インド製についても、3月13日に開催されたQUAD(日米豪印の外交・安全保障構想の枠組み)のオンライン会議で、10億個の製造を急ぐべく協力することで合意したが、それを日本は使う予定はあるのだろうか。ないとすれば、なぜ自国の審査を通らない(または自国に申請しない)ワクチン製造を支援するのだろうか。
 おかしな話ばかりだ。
 ここで日本人が考えるべきは、欧米製のワクチンはアジア人もテストしているというが、その数は少ないであろうという点だ。そもそも、ワクチン製造には数年の期間を要するのが常識だが、今は超特急での認可となっている。そうしたワクチンは、果たして日本人に効くのだろうか。
 加えて、日本人には、欧米人にはなかった、ワクチンの副作用が出るということを考えなくていいかという疑問も生じる。仮に、BCGの結果がコロナ感染を少なくする理由だとすれば、BCGの結果がワクチンの副作用に影響することはないのだろうか、ということだ。
 ここまで来ると、焦らずに緊急事態宣言を延長した方がいいように感じるのは筆者だけではあるまい。日本の問題は、経済的な手立てが徹底していない点も忘れてはならない。