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[特別寄稿]検査前確率を無視する世田谷モデル

検査前確率を無視する世田谷モデル


 From 三宅隆介
  @川崎市議会議員




私は、PCR検査の偽陰性率の高さ(無症状者の場合、67〜100%)から、闇雲にPCR検査を拡大することの危険性を訴え続けています。


今回は、病期に従った偽陰性率の変化からではなく、検査前確率(抗体保有率)という概念から、改めて闇雲なPCR検査の拡大に異を唱えたいと思います。


まずは、言葉の整理から…


厚生労働省が行った大規模な無作為の抗体検査によって、現在の日本では約1,000人に1人が新型コロナウイルスの感染状態にあると考えられています。


これを「検査前確率(=有病率=感染率)」といいます。即ち、日本における新型コロナの「有病率(感染率)」は0.1%ということです。


そして、病気の人を正しく病気であると診断できる確率のことを「感度」といい、病気でない人を正しく病気でないと診断できる確率のことを「特異度」といいます。


新型コロナのPCR検査の場合、感度は病期を通して平均70%です。ただし、実際には病期により80〜0%の間を変動します。


一方、特異度は99%程度であるとされています。(特異度は病期を通して一定)


さて、以上のことを踏まえ、「誰でも、いつでも、何度でも」PCR検査を受けることができるようにする“世田谷モデル”でお馴染みの世田谷区を例にして考えてみたいと思います。


世田谷区の人口は約94万人ですが、ここでは話しをわかりやすくするために区切りよく100万人とします。なお、PCR検査1回分を3万円とし、それを100万人に行うとすれば300億円のコストがかかりますが(実際にはもっとかかる)、その費用を全て世田谷区が全て用意したと仮定します。


前述のとおり、有病率(検査前確率)は0.1%ですので、100万人のうち1,000人が感染者で、残る99万9,000人は感染していないということになります。


PCR検査の感度は70%ですので、1,000人の感染者のうち700人は陽性に出ますが、残り300人は感染しているにもかかわらず陽性にはなりません。(偽陰性)


繰り返しますが、実際には感染していない99万9,000人も検査を受けています。


PCR検査の特異度は99%ですので、このうち1%(9,990人)は感染していないにもかかわらず陽性(疑陽性)と診断されます。


ゆえに100万人の検査を実施した場合、結果として「陽性」と出るのは、実際に感染している1,000人のうちの700人(検査感度から300人は見落とされる)であり、感染していない9万9,000人のうちの9,990人です。


つまり合計で10,690人です。しかし、この中で実際に感染しているのは700人。


要するに、検査結果が陽性となった人のうち、わずか6.5%しか本当の感染者がいないということです。


以上のとおり、そもそも全人口のうち感染可能性がたった0.1%しかない感染症に対し、闇雲に検査を拡大しても意味がないということです。


とりわけ、検査前確率という概念からみますと疑陽性という大きな問題が出てくることは明らかです。


つまり確率的には、まず偽陰性の300人が世に野放し状態になる一方、感染していない9,990人(疑陽性)が不要な隔離対象となってしまうことから、医療機関はもちろんのこと、保健所や衛生研究所などの関係機関のマンパワーを意味もなく圧迫するという極めて馬鹿げた結果に至ります。


なお、偽陽性とされてしまった人たちの経済活動をも停止することになりますので、社会に及ぼす混乱はさらに大きなものとなります。


このように「検査前確率」という概念や数字を無視した人気取り政策(闇雲なPCR検査の拡大)は、国民と国民経済にとって実に害悪なのです。


因みに、感度は無症状者に対してはもっと下がりますし、特異度は99%ではなく97%とする識者もおられます。だとすれば、現実の偽陰性者・疑陽性者の数はもっと多いことになります。


政策立案にあたっては、絶対に為政者は数字や確率を無視してはならない。