Shinzo-Returns

安倍総理の志は死なない!!

理想的なV字回復を見せた強靱なフランス! ダラダラと衰退する脆弱ニッポン…。

From 藤井聡
  @京都大学大学院教授


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世間は、次期総理は東北からでてきた苦労人のいい人の菅さんで決まりだとの話題一色です。


どうやら菅政権が誕生すれば、安倍内閣の路線を継承するとのことですから、プライマリーバランス黒字化目標も取り下げず、どうなろうが緊縮財政は継続することになるでしょう。


それが証拠に、菅官房長官肝いりではじめたGOTOトラベルやGOTOイートの何がだめかといえば、その「セコさ」。全ての宿泊費や外食費を半額にして、政府補助しますとかやれば、目に見えた経済効果が見込めるでしょうが、そういうレベルのモノからはほど遠い水準。


GOTOトラベルの予算は約1兆円。国民一人あたり1万円弱。
GOTOイートは総額約2000億円。国民一人あたり約1600円。


やらないよりはやった方がマシとは言え、こんな1万円ちょっとの特定消費の補助金を貰ったからといって焼け石に水程度の効果しかありません。


そもそも国民がこの1.2兆円程度をしっかり余すところなく活用できたとしても、GDPを0.2~0.3%程度上昇させる程度の効果しかありません。


しかも、申請が煩雑で対象も限定的ですから、予算全てを使い切るところまでいかない可能性も考えられますから、そうなれば、GDPへの効果はさらに限定的となるでしょう。


・・・ということで、こんなモノで日本経済が「V字回復」することなど万に一つもありません。


そもそも本気で消費を伸ばしたいんだったら、消費補助金の「予算」は「青天井」(上限無し)を前提とすべきです。その補助金でもって消費が伸びればそれにあわせて補助金総額も増えていくからです。でも、あろうことかこのGOTOナントカは全て、「予算総額」が決められており、そこで「打ち切り」となっているわけです。


そんな風にして「予算総額」が決められてしまっているのは、この期に及んで未だに「プライマリーバランス黒字化目標」に配慮しているからです。


だから、コロナが終われば、コロナ対策で拡大した何十兆円という「財政赤字」を、増税なり何なりを通して取り返してやろうという発想から、抜け切れていないのです。


・・・という財政思想を持つのが安倍内閣なのであって、それを引き継ぐと声高に叫んでいるのが菅内閣(予定)なのです。


したがって、菅氏は今、総理になれば「三次補正だ」とは言っていますが、経済を立て直すのに十分な対策がなされる可能性は極めて低いと考えざるを得ないでしょう。したがってデフレ脱却はおろか、このコロナで冷え込んだ経済損失を取り戻すことすらおぼつかないのが、菅政権(予定)ということになるのです。


つまり、「コロナが怖いだろう、だから自粛しろ、でも補償はしねぇぞ」と丸裸で国民を自粛させ、経済を超絶に冷え込ませ続けながら、申し訳程度に焼け石に水程度の対策をちらりと行うだけで、さらにダラダラと経済が衰弱していくのを放置するのが「安倍・菅政権」なわけです。


こんな「緊縮政治」が続けられる以上、我が国は永遠に「レジリエント」つまり「強靱」からはほど遠い「脆弱」な国であり続けることでしょう・・・。


何ともつらい話ですが、こういう未来が今最も予期され得るものであり、かつ、その未来を、「東北からでてきた苦労人で、いい人」菅氏を総理に選ぶことを通して確定化させようとしているのが、我が国の悲しき現実なわけです。


しかし、本来なら今からでも遅くないのです。GOTOナントカの様な1兆円そこそこのセコい対策はさておき、潰れそうになっているあらゆる企業にしっかりとした損失補償を行うと同時に、全労働者の賃金を補償する大規模な財政出動を行えば、政府が夢見る「V字回復」は確実に可能なのです。


例えば、こちらのグラフをご覧下さい。



https://twitter.com/SF_SatoshiFujii/status/1303320857872277505


これは、フランスの家庭消費の推移。


ご覧のように、コロナ対策でロックダウンを行うことで、家庭消費は三分の一も縮小。


フランス経済はこのままボロボロになるかに見えましたが、その間政府は、上述のような各企業への損失補償と労働者の賃金を補償するための大規模な財政出動を繰り返しました。もちろんロックダウン中はどれだけオカネを貰っても使う機会自体がなかったわけですが、コロナが完全終息する前に(つまり、ダラダラと自粛をさせ続ける日本なら絶対に自粛を解除しないような感染レベルであるにも関わらず早々と)ロックダウンを解除したら、途端に家計消費が元通りに戻ったのです!!!


これぞ、筆者が我が国において夢見続けた光景・・・教科書に載せてもいいくらいの「教科書的なレジリエント=強靱なV字回復」です!


だから今からでも遅くはない、例えばフランスに倣って、これから徹底的な企業・労働者に対する補償をすればいいのですが・・・繰り返しますが、それが実現される可能性は99%ないと言える状況です。


ちなみに・・・という様なことは実は、3月の時点で十分に想像の範囲でした。で、そんなとき、「強靱化=レジリエンス」の理論に従うなら、二つの対策が必要になります。一つが「減災」対策(「谷」の深さを最小化する)、もう一つが「早期回復」対策(「谷」の幅を最小化する)です。


で、減災対策として理論的に考えられるのが、医療崩壊を回避するという前提で、できるだけ自粛のレベルを下げるという方略。そして、早期回復対策として考えられるのが、もちろん、政府補償の断行です。


で、今の政府のPB規律を前提とした緊縮的態度故に、できるだけ「減災対策」を施し、事後の政府補償に求められる金額を最小化しておくことが必要だったのですが・・・残念ながらダラダラと自粛を続けた結果、十分な減災対策もできずに4-6月期の経済の冷え込みは東アジア中最悪レベルとなりました(中国、韓国、台湾のどれよりも激しく冷え込みました)。しかも、財政政策の水準も事前の最悪レベルの想像の範囲を出ない―――という日本国民側にとっては何とも悲しい敗北的状況です。


これからどの様に戦っていけば良いのか―――菅政権が誕生するという事を前提として、一つ一つ考えていくしか無いですね。


野党の皆さんの議論も見据えながら、なんとか最低でも5%の消費減税ができる状況を「総選挙」を通して実現していくことを考えていきたいと思います。


厳しい戦いが続きますが……今後とも、よろしくお願いします。


追申1:
今後求められる最も重要な対策の一つは、次回の感染拡大期の国益毀損を最小化するために、過剰自粛を回避させること―――そのためにも改めて、これまでの感染拡大&収束について、客観的視点から包括的にとりまとめました。是非、ご一読ください。
【再検証】第一波・第二波の双方に「8割自粛」は不要だった。以後、過剰自粛をしない/させないように賢く、注意深く振る舞うべし。
https://foomii.com/00178/2020090515152170523


追申2:
そして、過度な自粛、過度な緊縮、過度な改革を避けるためには、日本人が容易く「空気」に翻弄されないようにしなければなりません――そんな視点から、表現者クライテリオンでは「新・空気の研究 ~TV・知事・専門家たちのコロナ脳」を出版しました。是非、ご一読下さい!
https://www.amazon.co.jp/gp/product/B08D4SJWR3/


追申3:
そんな理不尽な空気に流されないためにも、是非、定期的に当方や柴山さん、浜崎さん、川端さん他、クライテリオン執筆陣のメルマガを配信している「クライテリオン・メールマガジン」にご登録下さい!
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