Shinzo-Returns

安倍総理の志は死なない!!

海上自衛隊を圧倒し始めた中国海軍が開戦へようそろ

 米国大統領選挙は歴史的な大接戦となり、ドナルド・トランプ大統領は選挙の不正を訴え法廷で最後まで戦う姿勢であり、勝者を確定できない状況がしばらく続きそうだ。
 しかし、選挙人獲得数ではジョー・バイデン氏が必要な270人以上を確保する勢いであり、バイデン大統領誕生の可能性が高くなってきた。
 そこで、バイデン氏が新大統領になったならば、日本の安全保障上、いかなることに注意を払うべきかを考えてみた。
「中国海軍は海自を追い抜いた」
 筆者は最近、『自衛隊は中国人民解放軍に敗北する!?』(扶桑社新書)を上梓した。
 その中でトシ・ヨシハラ*1の著作「龍と太陽」*2(注:龍は中国で太陽は日本のこと)とヨシハラの同僚である米海軍大学教授ジェームズ・ホームズの論考を紹介している。
 ヨシハラは「龍と太陽」の中で海上自衛隊と中国海軍を比較して以下のような結論を提示している。
・アジアの海軍力のバランスは大きく変化している。過去10年間、中国海軍は艦隊の規模、総トン数、火力などで海自を追い抜いた。
・中国政府の海軍に対する信頼も、以前には見られなかったほど高まっている。中国は日本の国家意思を自由にできる手段と能力を自国の海軍力が有していると確信していて、北京が暴力を使って脅威(例えば日米同盟)に対抗する可能性を高めている。
・この地域の海軍の不均衡が放置された場合、日米同盟を緊張させ、アジアを不安定にさせる。中国の挑戦を認識し、海軍力のバランスを回復するために迅速に行動することを求める。
 ヨシハラと長年の友人で多くの本や論文の共著者であるジェームズ・ホームズは、ヨシハラ論文を分析した論考*3を外交ウエブサイト「ナショナル・インタレスト」に発表し、以下のように記述しているが、一読に値する。
*1=ワシントンDCに所在する戦略予算評価センター(CSBA)の上席研究員
*2=Toshi Yoshihara, “The Dragon against the Sun”, CSBA
*3=James Holmes,“Yes, China's Navy Now Outclasses Japan's Navy”,National Interest
●中国の専門家は人民解放軍が楽勝で海上自衛隊を打ち負かすと思っている
・中国海軍は過去10年間、多くの分野で海上自衛隊を追い抜いてきた。いまや日本は中国を追い上げなければならない。そして米国は日本を助けなければいけない。
・西側の専門家は20年前、中国海軍をあざけり、海上に進出する艦隊を建設するには何十年もかかると予測していた。そのような偉業が可能であることを疑う者もいた。
 しかし、中国の水上艦艇部隊建設を否定できなくなった。中国海軍はそれをやり遂げたのだ。
・また、懐疑論者たちは、人民解放軍が兵器(対艦弾道ミサイル、最先端のミサイル駆逐艦、空母など)を開発・生産することに疑問を呈し、それを否定しようとした。
 しかし、中国のエンジニアは西側の専門家の主張を実績で否定していった。
・過去の例では、本格的な地域海軍を建設するのに約15年かかり、さらに海洋に進出する海軍を建設するのにさらに15年かかる。つまり合計で30年が必要だった。
 中国共産党指導部は25年前に、中国海軍を世界的な海軍にすることを決議したが、歴史的な基準に沿ったペースで中国海軍を増強してきた。
・日本の帝国海軍が真珠湾を攻撃する際、悪天候を克服しながら長距離機動をしなければいけなかった。しかし、現在の中国海軍にとって「真珠湾」に相当するのは、横須賀や佐世保などの艦隊基地であり、距離が近く簡単に到達できる。
 陸上配備の弾道ミサイルなどは、中国本土の要塞から数百マイル以上先の海上目標を攻撃できる。人民解放軍のロケット部隊は、陸上発射の弾道ミサイルのボタンを押して、一斉射撃を海上自衛隊に浴びせるだけで、日本の基地や艦隊を打撃することができる。
 日本と中国の海上戦力の意味のある比較計算は、海軍力とともに、陸上発射ミサイルや航空機を計算に組み込む必要がある。それらの条件を加味すると結果はさらに落胆するものになる。
・ヨシハラは、日中の海洋紛争の可能性について、「中国の視点で見ると、日中の海洋競争と海軍の衝突は事実上運命づけられている」「中国の専門家は、人民解放軍が楽勝で海自を打ち負かすだろうと考えている」と記述している。
・人民解放軍の見通しが彼らにとって有望であるほど、チャンスが訪れたときに習近平国家主席が攻撃命令を出す可能性が高い。
●日米が一体化し中国に対抗すべきだ
・中国の戦略家は、米国が紛争時に日本との条約を守らないと仮定する奇妙な傾向を示している。
 中国の作戦成功は、米国の介入がないことを前提として達成されると思っている。つまり、中国の戦略家たちは、将来の海戦において、中国は孤立した日本と対戦するだろうと予測している。
 米海軍・海兵隊・空軍が参加しない、日中の1対1の対決は、人民解放軍司令官の運用上および戦術上の多くの問題を単純化することができる。
・ヨシハラはすべてが失われたわけではないと主張する。
 まず、地理は依然として日本の忠実な友人だ。日本はアジアで第1列島線の北弧を占め、中国の西太平洋へのアクセスをコントロールしている。
 日本が海・空・地上戦力を適切に組み合わせて配置すると、第1列島線内に人民解放軍の艦艇と航空機を閉じ込めることができる。
 日本は海では数で圧倒されるが、中国に痛みをもたらすことができる。軍事的および経済的苦痛を与える自衛隊の能力は抑止力につながる。
・習近平国家主席は中国の国家的名声を海軍に賭けることにより、誤りを犯す可能性がある。彼は海軍を「中華民族の偉大なる復興」という「中国の夢」のチャンピオンとして売り込んでいる。
 しかし、中国の夢の担い手が激しい打撃を受けたらどうなるのか。敗北、あるいは多大なコストを伴う勝利でさえ、中国国民と近隣諸国に対する習近平氏の威信に打撃を与えるであろう。
・日本は海戦の準備をするときのモットーを「損害を与える」とすべきだ。中国海軍を攻撃し、最高指導者の評判を毀損するように計画すべきだ。
 さらに、日本の指導者は、米政府と協力して、試練を受けるときに同盟が不動であることを示す必要がある。
 同盟の課題の一部は外交だ。同盟国は互いに、そして北京の共産党指導者に、海上防衛において一体性を持っていることを示さなければならない。
 日米は厳しいときに一緒に立つことをすべての人に示すために多くのことをすべきだ。日米政府は、彼らが部隊の国家構成要素を分割不能にして、一体となっていることを示すべきだ。
●日本への提案
・ヨシハラが指摘するように、中国の専門家は海自の艦隊をバランスが悪い(不均衡である)と見なしている。独立して作戦する部隊としての海自の有効性に疑問を投げかけている。
 それはある程度正しい。海自は創設以来、日本を拠点とする米第7艦隊が不足しているニッチ(隙間の)な能力を満たしてきた。対潜水艦戦、機雷戦はその一例だ。
・ヨシハラの海自への助言は、「日本は海上戦力のポートフォリオ(組み合わせ)を再調整する必要がある」というものだ。
 イージス艦や軽空母などの高価で「精巧なシステム」とともに、海自は「小型で安価で数が多く柔軟なシステム(重武装ミサイル艇を含む)」を導入する必要がある。
・人民解放軍が戦闘を挑むならば、彼らは必然的に日米合同軍を敵に回すことになることを中国当局に思い知らさなければいけない。
 日米は、政治的間隙を残してはいけない。鷲(米国)と太陽(日本)を相手にしなければいけないことを龍(中国)に気づかせなければいけない。
 トレンドは中国に有利だ。日米がそのトレンドを望ましい方向に変更するには、決心とリソースが必要だ。急げ、だらだらする時間は終わった。
バイデン氏の同盟重視を日本防衛に連結せよ
 以上で明らかなように、ヨシハラとホームズは、日米同盟の重要性を強調し、日米が分断されることなく、共同して中国の脅威に対処すべきだと主張している。
 バイデン氏は、国際協調路線を重視し、「同盟国とともに、世界の脅威に立ち向かう」と主張している。
 また彼は、中国を「特別な難題」と呼び、「中国に厳しい態度で臨むことが必要で、同盟国と協力しなければならない」「南シナ海における中国の軍事的挑発には屈しない」「人権および民主主義へのコミットメントを再確認する」「中国に国際ルールを守らせる」と主張するなど、中国への厳しい立場を一応表明している。
 中国が急速に軍事力を増強し、戦争準備を加速する状況において、日本一国だけでは中国の脅威に対抗することは難しい。
 しかし、日本の防衛を米国に過度に依存する甘えの時代は過ぎ去ったことも事実である。菅義偉首相が重視する「自助、共助、公助」は日本の防衛にも当てはまる。
 日米同盟は共助であり、その重要性は不変だが、日本は自助努力こそ重視すべきだ。
 自衛隊と人民解放軍の戦力差は、ヨシハラが指摘する以上に深刻な状況だと言わざるを得ない。
 その劣勢の大きな原因は、現実の脅威の深刻な実態を認識せず、先の大戦の敗戦を引きずっている日本の安全保障体制の根本的な欠陥に根ざしている。
 具体的には憲法第九条や極端に軍事を忌避する風潮により身動きのとれない状況になっている。
 新たな米国の政権が誕生するに際して、我が国は政府を中心として国家ぐるみで日本の危機を克服する気概を持ち努力をしないと、日本の未来はない。