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安倍総理の志は死なない!!

世界の主導権握ろうとする習政権 中国「TPP参加意欲表明」の狙いはアジア太平洋の分断だ

 大統領選をめぐる米国の混乱が続くなか、中国が外交攻勢を強めている。
 習近平国家主席は11月20日、オンラインで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)で演説し、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への参加について「前向きに検討する」と述べた。直前の15日には、15カ国による地域的な包括的経済連携(RCEP)にも署名した。一方、王毅国務委員兼外相は24日に来日し、茂木敏充外相や菅義偉首相と会談した。
 一連の積極的な外交は、何を意味しているのか。
 米国はドナルド・トランプ大統領の訴訟攻勢で次期大統領が確定せず、国際社会における求心力を低下させている。米国不在の間隙を突いて、中国は外交の発信力を高めて「主導権を握ろう」という思惑があるのは、明白だ。
 だが、いまや中国共産党の「邪悪な本性」は世界に知れ渡っている。国有企業に膨大な補助金を流し込み、世界中で知的財産を盗みまくっている中国が「自由貿易を推進する」などと言っても、額面通りに受け止める国はない。
 そもそも、TPPは単なる通商協定ではない。当初から「アジア太平洋の平和と安全を脅かす中国を抑え込む」という「裏の使命」を帯びていた。ただ、そう宣言したら、中国が逆上するので、表向きは「自由貿易を支持するなら、どの国も大歓迎」という建前を掲げていた。
 今回の参加前向き表明にも、頭から拒絶する国はない。かといって、歓迎するかと言えば、歓迎もしていない。シラケているだけだ。
 なぜ中国は、見え透いた善人ぶりを発揮してまで「TPPに入りたい」などと匂わせたのか。問題はそこだ。
 私は「アジア太平洋の分断が狙い」とみる。残念ながら、アジアの中には「チャイナ・マネー」をあてにして経済を運営する国がある。カンボジアやラオスなどだ。逆に、南シナ海の領海権をめぐって中国と激しく対立する国や中間的立場の国もある。
 中国が署名したRCEPには、「親中」のカンボジア、ラオスのほか、フィリピン、ブルネイ、ミャンマーなど微妙に立場が揺れる国も加わっている。ブルネイはTPPにも参加しているが、カンボジア、ラオス、ミャンマーは加わっていない。米国はTPPを推進していたのに、トランプ政権で脱退してしまった。
 そんな状況下で、中国は米国がいない間にRCEPを足場にして「外からTPPへの影響力を強めよう」としているのだ。実際に加盟しようとすれば、知的財産保護や国有企業への補助金などが障害になるのは目に見えている。
 とりわけ、国有企業は習体制の生命線だ。そんな国有企業を犠牲にしてまで、TPPに入るわけもない。だからこそ、口先攻撃で「もっともらしい話」をして、味方を増やそうとしているのである。ここは黙殺するのが一番だ。
 日本は、米国の新政権にTPP復帰を促すべきだ。米国不在が長く続けば、中国に足元をすくわれる。今回の習発言は、その警告である。
 ■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革会議委員などの公職も務めた。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア-本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。ユーチューブで「長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル」配信中。