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安倍総理の志は死なない!!

中国の「非公式警察」を摘発できない日本の危うさ、元公安捜査官が実態を解説

米国で検挙された中国「非公式警察」の関与者
 4月17日、米司法省は、ニューヨークのチャイナタウンにある中国公安部門の出先機関の「非公式警察」運営に関与したとして、ニューヨークに住む男2人を逮捕したと明らかにした。逮捕された2人は中国公安当局者とのやりとりの記録を携帯電話から削除し、司法当局の捜査を妨害した疑いもある。
 この非公式警察では、米国政府の同意なく運転免許証更新のサービスを提供していたが、これは今回の事件の論点ではない。
 問題は、非公式警察が反体制派の在米中国人の監視・追跡等を行っていたことだ。
 さらに、米司法当局は、反体制派の在米中国人に対する嫌がらせ等を行ったとして、中国公安当局の34人を訴追したという。
ホテルや飲食店などに偽装し在外中国人を脅迫や強制帰国
 スペインの人権団体「セーフガード・ディフェンダーズ」が昨年12月に公表した報告書によれば、海外に在住する中国人を中国警察当局が監視、または強制帰国させるため、日本を含む欧米諸国など53カ国102カ所に非公式警察の拠点を設置している。
 ちなみに、習近平国家主席が2012年に中国共産党総書記に就任してから始めた「キツネ狩り作戦」(汚職官僚を海外まで追跡して国内に連れ戻すなどしたキャンペーン)のように、海外に住む中国人を強制的に帰国させたり、脅迫を行ってきたりした歴史がある。
 さて、この非公式警察は、ホテルや飲食店などに偽装し、その実態把握が非常に困難である。
 そして、中国大使館や領事館を中心とした人・情報のネットワークを在外中国人の間に構築し、これまで政権批判などを行った在外中国人約1万人を強制的な手段で帰国させ、対象となる中国人を脅迫するほか、対象中国人の家族等に対し中国国内で嫌がらせを行っているとされている。
 これは、国際法の原則に違反し、第三国の主権を侵害している行為である。
非公式警察を中国が設置した理由
 なぜ中国はいずれ世界で明るみに出るような非公式警察を拠点として設置したのだろうか。明るみに出れば中国の信用を毀損(きそん)する。そのリスクをとってまで成し遂げたいものは何であろうか。
 それは、体制の安定である。
 中国政府は、国内秩序の安定を強く望み、秩序の不安定化につながる要因をえらく嫌う。
 習近平は、2014年4月に「総体国家安全観」を提唱している。この総体国家安全観とは、政治、国土、軍事、経済、文化、科学技術、情報等の11領域における安全保障を唱え、習近平政権における「安全保障」の概念の中で、「政治安全」が最も重要であることが示されている。
 習近平政権が国内の安定=体制の安定を強く希望している表れでもあり、裏を返せば、体制の“不”安全が習近平政権の最大の恐怖でもある。
 そして、その体制の安全を脅かすものが国内要因だろうが国外要因だろうが関係ない。海外にいる在外中国人でさえ封じ込めたいと思考しているのだ。
非公式警察の日本における実態
 外務省によれば、中国非公式警察は日本国内に2カ所存在するという。
 一つ目は、中国の福建省福州市公安局が東京・秋葉原に開設し、ホテルが入居するビルであり、最上階には中国福建省・福州市の名前を冠した一般社団法人が所在する。
 この社団法人には傘下団体が存在し、さらに同社団法人の役員の一人は、在日華僑華人の経営する企業を主体とする経済団体の役員にも名を連ねており、その関連性が懸念される。
 二つ目は、江蘇省南通市公安局も所在地不明ながら設置しているとされるが、福岡に拠点を構えていると思われる。
 同拠点には、一般企業が入居しており、以前の会社代表が人民解放軍の関係者であったが、現在は別の中国人が代表となっている。
 実は、更に3カ所存在する、ないしは存在が強く疑われる場所がある。
 それは、東京・銀座、名古屋、そして大阪だ。
 前記の秋葉原、福岡も含め、共通点として、中国の同郷会・華僑団体に関連性があり、また華僑団体は、在外中国人の海外における福利の向上などを目的とするOCSC(Overseas Chinese Service Centers)として世界にネットワークを張り巡らせており、同ネットワークを利用して非公式警察が設置されていると推測される。
 また、華僑団体にも言えることだが、同郷会などを通じて在外中国人内でのコミュニティを利用し、非公式警察の任務を遂行しているのだろう。
 これら非公式警察は、あくまで“拠点”であり、その任務は各団体の関係者“個々人”に割り当てられていると思われる。
日本の主権を侵害する非公式警察を摘発できるのか
 米国司法当局が中国非公式警察の関係者を逮捕したことに対し、松野博一官房長官は「実態解明を進めている」と説明。さらに「中国側に対し、外交ルートを通じて我が国の主権を侵害するような活動が行われているのであれば断じて認められない旨、申し入れを行っている」としている。
 恐らく、その言葉の通り、非公式警察の実態解明を進めているだろうが、果たして日本の主権を侵害する非公式警察を摘発できるのだろうか。
 答えは「難しい」と言わざるを得ない。
 まず、在日中国人に対する監視や脅迫は表に出づらい。対象となった中国人が日本の警察に助けを求めれば、非公式警察は中国本土にいる対象中国人の親族に嫌がらせをするだろうし、対象中国人もその可能性は十分認識しているだろう。
 そして、日本の法に触れるような形で非公式警察が脅迫や嫌がらせを実施するとは思えない。
 また、拠点の設置についても、非公式警察が入居ビルを偽名で借りたり、偽造身分証明などで各種契約をしたりするまでもなく、正当に企業や日中友好団体等としてビルに入居し、企業活動をしながら、任務を与えられた非公式警察関係者が粛々と任務を行えば良いので、あえて法に触れるようなことはしないだろう。
 要は、彼らが行う日本の主権侵害に対し、速やかに適用できる法令がないのだ。
 これまで筆者は、日本社会において、民間レベルでのカウンターインテリジェンス(防諜活動)意識の醸成とインテリジェンスコミュニティの形成を唱えてきたが、加えて、改めてスパイ防止法の議論の必要性を訴えたい。
 スパイ防止法において、基本的人権との衝突の可能性が議論を衰退させる理由も理解できるが、このような国際情勢下で、非公式警察のような組織を摘発する法令さえ準備されないのは危険ではないだろうか。
 まず、スパイ防止法の検討に向けた議論の開始がなされることを祈る。
(日本カウンターインテリジェンス協会代表理事、元警視庁公安部外事課警部補 稲村 悠)

「脱原発」を実現したドイツ経済がこれから直面する困難とは? ロシア問題、再エネの不安定性

福島第一原子力発電所が炉心融解(メルトダウン)する惨事が起こった。これを受けて、ドイツのメルケル前政権は、当時国内で稼働していた17基の原発を段階的に廃止し、2022年末までに脱原発を実現すると決定した。
そのドイツで4月15日、残る3基の原発が送電網から切り離された。予定よりも4カ月程度遅れたが、メルケル前政権の遺志を継いだショルツ政権は、脱原発を遂に達成したことになる。
脱原発を重視する環境主義者はこの決断を高く評価しているが、ドイツの一般的な世論は、必ずしもこの決断を支持していないようだ。
ロシア問題が解決しないのに「脱原発」?
ドイツの大衆日刊紙ビルドの日曜版(4月8日付)によると、世論調査会社INSAの調査では、回答者の52%がこのタイミングでの脱原発に反対と回答した。一方で、賛成と答えた回答者は37%にとどまったようだ。ロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギー危機が生じたこのタイミングで脱原発を進めることに、世論は慎重な模様だ。
またドイツの週刊誌フォークスのウェブ版などさまざまなメディアが、中道右派の日刊紙ディ・ヴェルトの日曜版を引用して報じているところによれば、連立第三位の政党であり、親ビジネスの立場であるドイツ自由民主党(FDP)の議員団は、2024年4月半ばまで、3基の原発を稼働させ続けるべきだという考えを持っていたようだ。
天然ガスの脱ロシア化は2024年4月までに実現する見込みだが、それまでの電力需給の不確実性を考慮に入れれば、原発を稼働させ続けるべきだというのが、FDPの意見だった。しかし連立二位の環境政党である同盟90/緑の党(B90/Gr)は、FDPのこの提案を一蹴し、ショルツ首相擁する社会民主党(SPD)とともに脱原発を断行した。
再エネと天然ガスが抱える「不安定性」
ドイツ連邦統計局によると、ドイツの電源構成に占める原子力発電の割合は、2022年時点で6.4%にまで低下した。ドイツの電源構成に占める割合がすでに6%程度にとどまっているのだから、これが脱原発によって0%になっても、ドイツの電力需給はそれほど悪化しないだろうという見解は、いささか楽観が過ぎるのではないだろうか。
周知のように、2022年2月にロシアがウクライナに侵攻したことをきっかけに、ドイツをはじめとするヨーロッパ各国はエネルギー危機に陥った。この間に、ドイツの電力価格は急騰(消費者物価ベースで2022年のドイツの電力価格は前年から20.0%上昇)したが、この電力価格の高騰は、脱原発政策の推進によって促された側面も強い。
ドイツ政府は2021年に3基の原発の稼働を停止した。その結果、電源構成に占める原子力発電の割合は、2021年から2022年の間に12.6%から6.4%に低下した。仮に2021年に停止させた3基の原発を再稼働させていたなら、ドイツの2022年の電力需給のひっ迫度は、エネルギー危機を受けてもより軽くて済んだはずである。
そもそも再エネやガス火力に原子力や石炭火力と同等の安定性があれば、2022年のドイツの電力需給はもっと安定していたはずだ。6%とはいえ、原子力という安定した電源があったからこそ、電力需給のひっ迫はあの程度で済んだ。
しかし脱原発の実現で、ドイツの電力供給は、少なくとも今後数年間は不安定さをさらに強めよう。
ドイツが発電の中核に据えようとする再エネだが、最大の問題点は「出力が不安定なこと」にある。
例えば2021年にもヨーロッパの電力価格は上昇したが、最大の理由は、異常気象(風不足)による風力発電の不調にあった。それに再エネ発電は、地理的な制約を強く受ける。例えばドイツの国土は平地が多いため、ある程度のこう配を持つ河川を要する水力発電は不向きなのだ。
失われていくドイツの国際競争力
一方でガス火力の場合、ガスのコスト増という問題がある。
ドイツは「脱ロシア」の観点から、パイプライン経由のロシア産天然ガスの利用を削減し、液化天然ガス(LNG)の輸入強化に努めている。しかしLNGは、タンカーによる輸送費や加工費(液化と再気化)を要するため、ロシア産天然ガスよりもコストがかさむことになる。
ショルツ政権は、電力構成のほとんどを将来的には再エネとし、その間の移行期の電源としてガス火力を用いる戦略を描いている。とはいえ、再エネの不安定性が将来的にどのくらい改善されるか、定かではない。それにガス火力も、脱ロシア化に伴うコスト増を余儀なくされるし、さらに市況次第では、ガス価格が高騰するリスクを抱える。
以上で指摘した再エネとガス火力が抱えるリスクは、すでに交易条件や貿易収支の悪化というかたちで顕在化した。
ドイツの交易条件(輸出物価指数を輸入物価指数を除したもの)は、輸入価格が輸出価格以上のピッチで上昇したため、2021年から大幅に悪化した(図表1)。化石燃料価格の急騰で輸入が急増し、ドイツの実質所得が減少したことになる。
またドイツ経済の強さを表す代表的なバロメーターの一つであった貿易収支の黒字幅も、2022年に急減した(図表2)。そもそもドイツの輸出は、中国経済の成長鈍化に伴って勢いを失いつつあった。加えて、ロシアのウクライナ侵攻で石油・ガスといった化石燃料の価格が急騰し輸入が増えたことが、貿易黒字の急減をもたらした。
ヨーロッパの天然ガス価格は2021年から急騰したが、それは先述のとおり、風力発電の不調で、各国がガスの調達を増やしたことに起因する。さらに2022年には、ロシアのウクライナ侵攻で化石燃料の価格が高騰した。交易条件の悪化や貿易黒字の減少は、脱原発の裏でドイツが再エネとガス火力への依存を強めたことの影響を強く受けている。
注目される脱原発の吉凶
繰り返しとなるが、脱原発の進捗と同時に、ドイツは再エネとガス火力への依存度を高めてきた。言い換えれば、ドイツの電力需給、ひいては経済が、再エネとガス火力が抱えるリスクへの脆弱性を高めてきたわけだ。そうした脆弱性を抱えたドイツが、低下した国際競争力を短期のうちに改善させていく展望は、まず描きにくい。
それに、再び悪天候で再エネ発電の出力が低下したり、天然ガスの価格高騰でガス火力発電のコストが高まったりした場合、原発が使えないドイツは石炭火力を強化して電力の供給を増やすことになるのだろうか。2022年にもショルツ政権は、石炭火力を時限的に再稼働させたが、これは脱炭素という政権の戦略目標に相反する決断である。
いずれにせよショルツ政権は、民意の慎重な声を押し切るかたちで、このタイミングで脱原発を断行した。そしてこの決断により、ドイツの国際競争力は、少なくとも短期的には大きく損なわれることになる。その損失を補うに余りあるほどの便益が、環境的にも経済的にももたらされるかどうか、今後の動向が大いに注視されるところだ。

日本の選択 再び起きた凶行の「遠因」岸田首相襲撃事件 安倍氏の暗殺で相次いだテロを擁護するような発言 マスメディアに責任はないのか

岸田文雄首相(自民党総裁)が衆院和歌山1区補欠選挙の応援で訪れた和歌山市内の街頭演説会場で先週末、爆発物が投げ込まれる事件が発生した。爆発物の破片は約40メートル離れた場所でも発見されており、和歌山県警は殺人未遂容疑の適用も視野に調べている。安倍晋三元首相が昨年7月、奈良市での街頭演説中に暗殺されてから1年もたたないうちに再び起きた凶行。今回の事件の遠因として、一部のメディアや識者が、テロリストに同情するかのような言論を発信していたことを指摘する声がある。政治学者の岩田温氏が考察した。

安倍元首相© zakzak 提供

恐れていた事態が発生した。衆院補選のため、和歌山市の漁港に応援に駆けつけた岸田首相に向かって爆発物が投げつけられた。幸いなことに首相にケガはなく、犯人は取り押さえられたが、危うく大惨事になりかねない状況だった。仮に、犯人の所持していた爆発物が大爆発していたら、聴衆まで殺傷されかねなかったのだ。
「恐れていた事態」と記したが、これは私が予言者であるからではない。当然のことだが、未来を見通す力など持ち合わせていない。だが、昨年の安倍元首相を殺害したテロ事件の際に、同様のテロ行為への「危険な兆候」を感じ取っていた。
思い返してみてほしい。安倍氏が凶弾に倒れた際、「テロリズムは絶対に許してはならない」という断固たる決意が示されていただろうか。テロを婉曲(えんきょく)に擁護するような発言が相次いではいなかったか。
「確かに、テロや暴力は擁護できない。しかし、云々…」という言葉が、マスメディア、リベラル界隈(かいわい)でまかり通っていなかっただろうか。犯人の動機や背景以前に、テロリズムは絶対に許さぬとの断固たる決意が示される必要があった。
選挙に際し、有権者である国民に向かって政治家が信念を訴える。「民主主義の根幹」だ。国民は政治家の顔を眺め、声を聞き、その主張を吟味する。賛同するにせよ、反対するにせよ、政治家と直接会い、その声を聞く貴重な瞬間だ。
実際に会ってみると、世間の評判とは異なり、「なかなか、見どころのある政治家だ」と思う有権者も存在するだろう。逆に、演説は上手だが、「巧言令色すくなし仁」と判断する有権者がいてもよい。
いずれにせよ、選挙で直接政治家の話を聞くことは、国民が政治家を判断する重要な機会だ。政治家が国民に直接訴えることを恐れ、国民もまた政治家の話を聞いてテロに巻き込まれることを恐れたとしよう。政治家と国民との貴重な交流の場が喪(うしな)われることになる。
この機会が奪われることは、民主主義が危殆(きたい=危険)に瀕(ひん)していることを意味する。
だが、安倍氏の死後、テロリストを擁護するかのような映画が製作され、朝日新聞をはじめとするマスメディアは、この映画の上映情報を紙面などで喧伝した。国葬儀は否定され、あたかも安倍氏が悪かったから暗殺されたとでもいわんばかりのコメントが垂れ流された。
■「テロは許されない」国民的合意を
「表現の自由」「思想・信条の自由」を重んずる自由民主主義社会で、テロリストを擁護する映画を製作する人が存在することは否定できない。私はそのような類の映画を製作する人々の神経を疑うし、それを鑑賞する人々にも不気味さを感じる。
だが、表現の自由は守られて然るべきだ。といって、マスメディアがこれを紹介する必要はあったのだろうか。あたかも映画に一見の価値があるかのように報じたマスメディアに責任はないのか。
テロ事件を「でかした!」と絶叫する人、「世直し」とテロを擁護する人。彼らは、自らの発言が第2、第3のテロを誘発しかねないことを自覚していたのだろうか。
「何があろうともテロリズムは許されない」「理由の前にテロリズムは否定されるべきである」
こうした国民的合意が形成されなければ、「負の連鎖」は続く。日本の民主主義を守る断固たる決意が日本国民に求められている。
■岩田温(いわた・あつし) 1983年、静岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、同大学院修士課程修了。大和大学准教授などを経て、現在、一般社団法人日本学術機構代表理事。専攻は政治哲学。著書・共著に『日本再建を阻む人々』(かや書房)、『政治学者、ユーチューバーになる』(ワック)、『エコファシズム 脱炭素・脱原発・再エネ推進という病』(扶桑社)など。ユーチューブで「岩田温チャンネル」を配信中。