Shinzo-Returns

安倍総理の志は死なない!!

「日豪印と関係改善を…」焦る中国の“甘言作戦”にダマされるな! 「クアッド首脳会議」実現に向けインド説得の好機

 中国が海警局に武器使用を認める海警法を施行して以来、海警局の船が連日のように、沖縄県・尖閣諸島の周辺海域に侵入している。6日と7日には、海警局船2隻が操業中の日本漁船に接近し、海上保安庁の巡視船が2隻を領海から退去させた。


 海警局はかつては政府機関だったが、2018年に中央軍事委員会の指揮下に移管された。中には、排水量1万トン級の大型船や、退役した軍艦を改装した船もあり、いまや完全に「人民解放軍の別動隊」だ。


 任務は「国家主権と安全、海洋権益の保護」とされる。中国の立場では「自国の主権を守るために、日本漁船の違法操業を取り締まっている」という話になる。いずれ機会を見て日本漁船の拿捕(だほ)に動いても、おかしくない。


 ただ、一挙に武器を使った衝突に発展するかといえば、そこはハードルが高いだろう。巡視船の背後には、海上自衛隊の護衛艦が常時、待機している。海警局が武器を使えば、海上自衛隊が直ちに駆けつける態勢だ。国際社会での宣伝戦でも、先に手を出した側が不利になる。


 中国は小出しに攻め手を出していく「サラミ戦術」を得意としている。武器使用の容認もその一環とすれば、一挙に緊張を高める行動は避けるのではないか。逆に言えば、日本は警備体制を強化しつつ、粘り強く中国船の追い出し作戦を続けるしかない。


 尖閣防衛は何より日本の責任だが、国際的な中国包囲網づくりも進んでいる。先週の本欄で紹介した日本と米国、オーストラリア、インドの安全保障枠組み「QUAD(クアッド)」はその1つだ。


 クアッドは英国の参加検討が報じられたが、いまの4カ国で首脳会談を開く可能性も出てきた。産経新聞は6日、日米豪が「テレビ電話方式の首脳会談に前向きで、インドが同意すれば実現する」と報じた。これまでは外相会談だったので、格上げだ。


 私は1月1日付の本欄でクアッドを「準同盟関係に格上げすべきだ」と書いたが、首脳会談は第一歩になる。


 鍵を握るインドは昨年6月、国境地帯で中国と衝突し、双方に死傷者が出た。今年1月にも小競り合いを起こし、負傷者が出ている。中印の緊張激化は、日米豪がインドを説得する絶好のチャンスだ。


 中国は「クアッド首脳会議」の報道に敏感に反応した。共産党系の「グローバルタイムズ」は2月7日、クアッドについて「アジア版の北大西洋条約機構(NATO)を作る試みは成功しない」という解説記事を出した。その理由は「中国はアジアの敵にならないからだ」という。注目されるのは、その次だ。


 記事は「日豪印が中国を脅威とみるなら、米国との多国間同盟(注・アジア版NATO)ができる可能性が高まる。中国は彼ら(日豪印)との関係を改善しなければならない」と指摘した。まさに、焦っている証拠ではないか。


 中国の分析は正しい。


 だからこそ、日本は、これから始まる中国の甘言作戦にダマされてはならない。


 ■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革会議委員などの公職も務めた。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア-本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。ユーチューブで「長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル」配信中。