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安倍総理の志は死なない!!

中国・長江の漁業資源保護へ10年間禁漁…ダム建設続き、実効性に疑問も

読売新聞 湖北省荊州の村に放置された漁船。「漁を見つけたら即逮捕」などと書かれた横断幕が掲げられていた(9月29日、片岡航希撮影)
 中国政府は来年1月1日、中国最長の河川である長江(全長約6300キロ・メートル)で10年間の禁漁措置を始める。急減している漁業資源の保護を理由とし、流域で働く漁師計約30万人に失職を迫ることになる。漁獲減の根本的な原因とみられているダム建設は続いており、禁漁の実効性に疑問も出ている。(湖北省荊州 南部さやか)
 中国の農業農村省の当局者は今月15日、記者会見で禁漁について、長江の魚種が「枯渇に近付いているため」と説明した。中国政府が2013年に公表した報告書によると、長江上流で生息する魚種はかつての143から17に減った。国営新華社通信は、年間漁獲量が1954年の約43万トンから10万トン未満に落ち込んだと伝えている。
 長江の魚の繁殖周期は3年前後とされる。禁漁期間の妥当性について中国政府は「10年間に3回の周期を経れば資源は倍増する」と主張する。
 中国政府は漁獲減の背景として、流域生態系の破壊が進んだことを認める。その上で生態系破壊の主な原因として、乱獲、水質汚染、ダム建設などを挙げる。今回の禁漁は乱獲に対応した措置と言える。
 専門家の間では、流域で多数建設されてきたダムが最大の原因との見方が有力だ。09年には水力発電などを目的とする世界最大級の三峡ダムが完成した。現在も、長江上流で三峡ダムに次ぐ規模の大型ダムが建設されている。
 三峡ダムから約150キロ・メートル下流の湖北省荊州の漁村では、50歳代の元漁師男性が本紙に「ダム建設後、魚が取れなくなった」と明かした。中国政府にとってダム建設は、再生可能エネルギー拡大の国家戦略に基づく重要政策で、長江の生態系回復の妨げになるとみられる。ドイツに在住する中国出身の水利専門家、王維洛氏はダム建設について「環境を破壊する時代遅れの方法だ」と批判する。
 禁漁に伴う漁師の失業も大きな問題だ。農業農村省によると、流域では禁漁措置の実施を控え、漁師約23万人が既に廃業し、漁船11万隻が廃船となった。中国政府は廃業者らに計約200億元(約3170億円)の補償金を支給し、転職を支援していると訴える。
 実際、転職は簡単ではない。江蘇省揚州の漁村では、漁船数隻が草むらに放置されていた。ある漁師は「漁師の多くはこの仕事しか知らない。字も読めないんだ」と話した。