Shinzo-Returns

安倍総理の志は死なない!!

プーチンを「戦争犯罪人」として起訴できないこれだけの理由

プーチンの娘2人の財産没収できても・・・
 ウクライナの首都キーウ(キエフ)近郊のブチャやボロシャンカなどでロシア軍の撤退後、民間人とみられる遺体が見つかった。
 後ろ手に縛られたまま殺害された遺体や、殺害した後に穴を掘って遺体を埋めた「共同墓地」も見つかった。
 欧米各国、そして日本も「戦争犯罪」だとロシアを一斉に非難し、国際法廷で責任を追及する姿勢を強めている。
 欧米はロシアに追加制裁も科し、プーチン政権への圧力をさらに強める構えだ。
 米国は4月6日、①ロシア最大銀行ズベルバンクに対する制裁強化、②米国人によるロシアへの新規投資の禁止、③ウラジーミル・プーチン大統領やセルゲイ・ラブロフ外相ら高官の親族を制裁対象に追加指名*1――などの措置に踏み切った。
(https://www.whitehouse.gov/briefing-room/statements-releases/2022/04/06/fact-sheet-united-states-g7-and-eu-impose-severe-and-immediate-costs-on-russia/)
*1=制裁対象にはプーチン氏の長女、マリア・プティン(37=モスクワ大学AI=人工頭脳=研究所所長)やカテリーナ・チコホノバ(36=投資会社「ノメンコ」共同オーナー)も含まれている。バイデン政権は対象者の米国入国禁止や在米個人財産の凍結・没収を決めている。
(https://nypost.com/2022/04/06/meet-putins-daughters-who-face-us-sanctions-over-ukraine-war/)
 ジョー・バイデン米大統領は4月4日、プーチン大統領について「残虐で、ブチャで起きていることは常軌を逸している」と記者団に指摘し、改めて「戦争犯罪人だ」と糾弾した。
 国際法廷で裁くため「あらゆる詳細な証拠を集めるべきだ」と訴えた。
 欧州連合(EU)のフォン・デア・ライエン欧州委員長は4月4日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と電話で会談。ツイッターに「EUはウクライナの検察と連携して戦争犯罪を立証するため、合同調査チームを派遣する用意がある」と投稿した。
 一方、プーチン氏は4月6日、「親ロシア」のビクトル・オルバン・ハンガリー首相との電話会談で、「あれはウクライナ側による粗雑で恥知らずな挑発行為だ」と主張している。
 国際世論の高まりを受けて、ウクライナは戦争犯罪や人道に対する罪で捜査している国際刑事裁判所(ICC)検察官との連携も進める方針だ。
 ロシアのウクライナ侵攻をめぐっては、2つの国際司法機関が矢継ぎ早に動いた。
 国際司法裁判所(ICJ)と国際刑事裁判所(ICC)だ。
 国際刑事裁判所は、「戦争犯罪の可能性がある」と捜査を開始し、国際司法裁判所はロシアに対し、軍事行動を即時停止するよう命じる仮保全措置を出した。
 だが、2つの裁判所とも捜査、起訴、審理には長時間かかり、大国が関わり合う紛争解決にはほとんど役に立たない。
「やりたい放題のプーチン氏が大国・ロシアの最高権力者である限り、手も足も出ない」(米主要シンクタンクの国際法学者)
「戦争犯罪人・プーチンを捕らえて裁け」と威勢はいいが、「言うは易し、行うは難し」である。
 欧米の専門家たちは、プーチン氏が「戦争犯罪人」だったとしても捕まえて、起訴することは極めて難しいとみている。
「戦争犯罪」を成文化した国際法はない
 まず「戦争犯罪」の定義だ。
 国連は、「戦争犯罪」について「戦闘状態における軍隊による民間人に対する攻撃」としているが、「戦争犯罪」を成文化した単独の国際法はない。
 1869年以降、数度行われた国際会議で戦時中の傷病兵や捕虜などの取り扱いを取り決めた「ジュネーブ条約」でも触れてはいるが、第2次大戦以降、その定義も変更されてきた。
 これまでの「特別国際法廷」の判例では、「戦争犯罪」の具体例として民間人を対象とした拷問、人質、性的暴行、児童虐待などのほか、「宗教、教育、芸術施設に対する攻撃」も対象にはなってきた。
 1995年の国際法廷*2では、ボスニア・ヘルツェゴビナ内戦(1992~95年)の際の「スレブレニツァ大虐殺」(95年) を指揮したセルビア人司令官、ラトゴ・ムラディッチ被告に戦争犯罪で終身刑を下したことがある。
 大虐殺では8000人のボスニア人イスラム教徒が殺された。内戦全体では10万人が殺害されている。
*2=ボスニア・ヘルツェゴビナ内戦終結後、国連の決定を受けて設置された「特別国際法廷」ではムラディッチ被告ら161人が「戦争犯罪」で起訴された。
 もっとも「特別国際法廷」がこれだけの人数の被告を堂々と(?)「戦争犯罪」で起訴し、有罪判決を下せたのは、セルビアもボスニアも「小国」だったからだ。
 これがロシアや中国のような「大国」相手だとそうはいかない。
 国連安保理がロシアの暴挙を非難する決議案が出ても常任理事国・ロシアが拒否権を発動すれば可決できないのと同じように、「特別国際法廷」にもICCにも限界があるのだ。
 さらに、もう一つ、ロシアはICCの構成・管轄犯罪・手続きを規定する国際刑事裁判所ローマ規程」(1998年採択)に一度は調印したが、2014年のクリミア併合後、脱退している。
 軍事力行使でクリミア半島を奪取したことに対する国際世論に不安を抱いたため脱退したのか。加盟国でなくなれば、「戦争犯罪」を追及されることはない。
(もっとも米国も一度調印はしたが、その後脱退、中国は最初から調印していない)
 第2次大戦後、戦勝国が中心となって作られた国連は、ナチス・ドイツの戦争犯罪を調査する特別委員会を設置、これを踏まえて「ニュルンベルク国際軍事裁判」や「極東軍事裁判」が戦犯を裁いた。「特別国際法廷」のはしりだ。
 だが、「安保理でロシア非難決議案を一本も可決できない国連がロシアの『戦争犯罪』を法的に追及できるわけもない」(米主要メディアの国連担当記者)のが実情だ。
「戦争犯罪」の証拠資料入手の難しさ
 ボスニア・ヘルツェゴビナ内戦における「特別国際法廷」で法廷検察官を務めたアレックス・ホワイト・ハーバード大学客員教授は、戦争犯罪追及の難しさをこう指摘している。
「第一に重要なのは攻撃が軍事標的ではないことを立証することだ。戦闘状態の中で武装した兵隊にはではなく、丸腰の民間人、女子供を意図的に標的にした攻撃でなければならない」
「近年、『戦争犯罪』の現場を捉えた映像データや録音された電話交信記録が大量に入手でき、『戦争犯罪』を立証できる方法は以前に比べ容易になってはいる」
「最大の問題は『戦争犯罪』とみなされる軍事活動を指揮、実践した個人や集団を特定することだ」
「現場の統括司令官なのか、実戦部隊の師団長、連隊長なのか。そこまでは押さえることができたとしても、いざ政府の最高政策決定者の責任追及となると、至難の業だ」
(https://www.axios.com/russia-putin-war-crimes-icc-ukraine-739a31a7-9b7e-47b0-938b-5f52cf36da3f.html)
 バイデン氏は3月16日、プーチン氏を「戦争犯罪人だ」と呼んだ。
 これに対し、プーチン氏は「全く持って受け入れがたい。米ロ関係は今や断絶寸前だ」とやり返している。
 プーチン氏は自分自身が「戦争犯罪人」として起訴されることはないという自信に満ちているかに見える。
 中国は例によって「(ロシアが戦争犯罪をしているかどうかは)もっと事実関係を精査しなければ分からない」(中国外交部の趙立竪報道官)と、ロシアをかばいながら洞ヶ峠を決め込んでいる。
 ブチャなどには市街戦に慣れているとされるシリア人雇われ兵が導入されているという情報がある。残虐行為はこれら兵士の仕業かもしれない。
「戦争犯罪容疑者」を起訴する作業はなかなか難しい。
 さらに万一、これらの作戦をプーチン氏自らが命令していたという確固たる証拠が出てきても起訴は難しいらしいのだ。
 ワシントン・リー法科大学院のマーク・ドラムブル教授(国際法、多国籍法)はこう指摘している。
「万一、プーチン氏が実際に命令を下したという事実が判明しても、ウクライナ領内で身柄を確保せねばならない。プーチン氏の身柄を拘置しなければ公判は成立しない」
 つまりプーチン氏が国外に出国しない限り、捕まることは絶対にないのだ。
(https://www.axios.com/russia-putin-war-crimes-icc-ukraine-739a31a7-9b7e-47b0-938b-5f52cf36da3f.html)
 バイデン氏は「プーチンは政権の座から降りるべきだ」と政権転覆をほのめかすようなアドリブ発言を発して、顰蹙を買った。
 だがプーチン氏を本当に捕まえるのであれば、ロシア国民が選挙なり、国民投票で同氏を政権の座から引きずり降ろさなければ実現しない。
 バイデン氏の言いたかったのはそういうことだったのであろう。
 メディアはプーチン氏が今にも「戦争犯罪人」として断罪を受けるかのような報道を続けているが、「言うは易し、行うは難し」なのである。