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安倍総理の志は死なない!!

中国の大型連休で阿鼻叫喚…EV先進国が突き付けられた厳しい現実

中国では国慶節(建国記念日)の10月1日から7日間の連休が終わり、8日の土曜日から人々は表向き「通常運転」に戻った。「表向き」というのは、政府が決めた連休は7日までで、連休の代わりに8、9日の週末は出勤することになっているからだ。ただし、個人事業主や比較的休みが取りやすい人たちはこの週末も休みにし、連続9日間の休みを取ったようだ。国が定めた通りの土日出勤というレールに乗らなくてよい人たちの、ある種の「特権」である。ただ、今年の国慶節はあちこちから「不発だった」という不満が流れてきている。昨年までとの違い、そして今年の国慶節で分かった“EVの課題”とは。(フリーライター ふるまいよしこ)
盛り上がらなかった2022年の国慶節
 例えば、映画産業。連休に加えて建国記念日という時節柄、毎年この期間には気分を高揚させる国策映画が投じられ、さらにお祝いムードを盛り上げるような商業映画が並走する、「映画館のかきいれ時」とされる。
 しかし、今年は5年ぶり20回目の共産党大会が10月16日に控えており、その前哨戦として国慶節でさらなる「愛国お祭りムード」を盛り上げようと考えたらしい。連休直前、映画館はほぼすべて愛国主義、国威発揚、英雄、災害救済をテーマにした、いわゆる「主旋律」と呼ばれる国策作品に切り替えられた。その結果、7日午後7時時点での全国興行収入額は14億9200万元(約305億円)、観客動員数は約3600万人。昨年の約9400万人の半分にも満たず、さらにはコロナ前2019年のなんと33%程度となってしまった。
 メディアの分析によると、「敗因」はやはり児童向けを除く上映作品のほぼすべてが国策映画だったこと、その他コメディー映画すらも排除されたことだという。さらに観客は見る前から結果が明らかで、同じような流れの「主旋律」映画にはほぼほぼ飽きており、その制作側の連休上映を当て込んだ「手抜き」姿勢も見抜かれてしまっているせいとされる。今やネットに娯楽があふれる時代、国策映画のお決まりの展開にはさすがに皆が飽きてしまったようだ。
コロナゼロ化政策の下、観光業界も盛り上がらず
 観光業界も振るわなかった。「コロナゼロ化」政策絶賛実施中であることもあり、一部地区では「不必要な旅行は控えるように」という呼びかけもなされた。「不必要な旅行」とはなんぞや?という疑問はさておき、その呼びかけに応えるように、多くの観光地が閉鎖されたり、入場が制限されたりした。さらに目的地近隣の地域が「静黙」と呼ばれる事実上のロックダウンになっていたり、またそれらが休み中に突然宣言されたりする可能性も考えられ、遠出が敬遠された。
 実際に、中国最南端のリゾート、海南省三亜市では連休中に全民PCR検査実施が発表されたし、西北部のチベット、新疆ウイグル自治区、内モンゴル自治区など、自然派愛好者好きのする目的地では次々と感染者の増加が報告され、厳戒態勢に入っている。
 政府の文化旅行部のデータセンターによると、それでも国内旅行(市内や近隣観光地を含む)に出かけた人の数はのべ4億2200万人。その人数も観光消費額も、昨年どころかコロナ禍1年目の2020年国慶節連休にすら及ばなかった。特に航空チケットの売り上げは5年間で最低となった。
「マイカー+高級ホテル」旅の人気は急上昇
 ただ、それでも旅行に出かけた人たちの間では新しい傾向が出現した。というのも、郊外や小都市に設けられた高級ホテルの人気が急上昇、旅行予約サイトのデータでも、そんな高級ホテルの予約率は昨年に比べてもほぼ遜色なく、国慶節消費における「一人勝ち」状態となった。
 航空チケット消費が振るわなかった分、そうやって近場旅行に出かけたのは、マイカーを持つ人たちだ。マイカーならば当然、移動中も第三者との接触を最小限に抑えることができる。さらに移動時間もそのタイミングも自分に都合よく計画できる。「選択」に慣れた、現在の都市型市民にとって最大の利便性を味わうことができるのがマイカー旅行だ。
 しかし、ここでここ数年来の連休でもたびたび議論の的になってきた点が今年もネックになった。それは、EV車両向けの充電スタンド不足問題である。
中国では新車販売の4分の1がEVなどの新型エネルギー車両に
 中国では、今年に入って8月までに販売された、EVを含む「新型エネルギー車両」(新エネ車)は386万台に達し、新エネ車両が占める市場シェアは約23%となった。またその保有台数もすでに1000万台を超えている。政策もあってその数は増え続け、政府は2026年には販売台数におけるシェアは40.6%に達するとする期待を示している。
 コロナ下の連休では、そんな新エネ車が一挙に高速道路上に乗り出した。連休の渋滞もさることながら、人々を阿鼻叫喚(あびきょうかん)の渦に巻き込んだのがその充電スタンド事情だった。
 中国国内の充電設備は、2021年の公開データによると261.7万基。同時期における新エネ車両保有台数は784万台と、ほぼ車両3台に1つ充電スタンドが準備されていると報告されている。
 問題は、こうしたスタンドが新エネ自動車が比較的普及している都市部に集中して設置されていることだ。主要高速道路上の統計を見ても、ほぼその70~90%が都市部に近い地域に設置されており、EVで長距離を走るドライバーはその走行距離とにらめっこしながら、こうした充電スタンドに並ぶことになる。
ガソリン車なら10時間で行けるところを、EVだと40時間かかる
 だが、EV車が十分な距離を走るために充電するには1回あたり30分~1時間程度と、ガソリン車の給油よりも時間がかかる。このため、例えば充電ポストが4基しかないスタンドに10台の車が順番待ちしていれば、後続の車両は充電を始めるまでに数時間待たされる。さらにその待ち時間中、残余電力量によってはエアコンを切って、寒さ暑さを耐えしのぎながら待つ羽目になる。
「充電は最大40分」と区切ったスタンドもあったが、ネットには「ガソリン車で10時間程度で行けるところに、EV車では40時間近くかかった」という笑えない話も投稿されている。さらには充電ポストが壊れていたり、その取り合いを巡って殴り合いの騒ぎが起きたりもしたという。
 実際に昨年の新エネ車両購入者に購入時の考慮条件を尋ねたアンケートでは、「充電の利便性」をトップに挙げた回答者が64%に上った。政府はEV車の数と同数の充電ポスト設置を公共充電スタンド政策に掲げているものの、今年5月の時点でもまだ「1:2.7」という状態にとどまっている。さらに高速道路だけを見れば、今年8月末までに設置されたのはわずか1万7000ポスト余り、全国のポスト数のわずか2%となっている(中国交通運輸部データ)。
 スタートアップ企業が大量に出現し、政府の政策支援もあって急速に進む中国のEV化。だが、その普及のスピードに比べて、付帯設備事情はまだまだ厳しいことが再び明らかになったのだった。