Shinzo-Returns

安倍総理の志は死なない!!

超党派のド緊縮勉強会

 「「財政勉強会」のご案内」なるチラシが、衆参の議員会館に配布されたようです。しかも、特定政党の所属議員向けではなく、全政党所属議員向けで。つまり超党派の勉強会の案内ということです。超党派の活動は特段特別なものというわけではなく、普通に行われています。したがってそのこと自体は特に注目すべきものでもなんでもないのですが、今回取り上げることとした理由は、この勉強会が、ド緊縮財政を進めるためのものであるということ。そしてこの勉強会の基本的な認識としてチラシに書かれていることが間違いだらけで、お話にならないレヴェルであるということ。まあ緊縮推進側のお話は支離滅裂なものばかりなので、当たり前と言えば当たり前ですが。


 では、どんなことが書かれているのかと言うと、例えば、「昨今の円安は、アベノミクスの失敗が遂に顕在化したものと言え、その対策として、遂に「異次元の金融緩和」「0金利(Yield Curve Control)」の修正が議論の俎上に挙がるようになりました。」というのがあります。全部間違いである、ということは皆さん即座に理解されていると思いますが、一応解説しておくと、現状は円安ではなく、ドルが全ての通貨に対して高くなっているドル高の状態。各国とも通貨安に悩んでいます。その理由はアメリカ政府がしっかりお金を出して新型コロナショック対応をしたことを背景に、事実上新型コロナが収束しているところ、米国において消費が極めて旺盛になっているためFRBが金利を上げてこれを抑制しようとしていることもありますが、特に脱ロシア資源依存を目指す欧州において、米国産石油への需要が一気に高まっていることが非常に大きく影響しています。石油の取引はドルで行われていますから、石油を買うためにはドルを入手する必要があります。つまりドルへの需要が高まっているということであり、それがドル高の非常に大きな原因となっているのです。(そもそも最近話題になった英国も、欧州ユーロ圏も、新型コロナショック対応で政府がしっかりお金を使って国民を保護・支援してきました。それもあって事実上のコロナ収束後からは旺盛な消費欲により需要が高まり、インフレが進んでおり、これを抑えるべく金利の引上げが行われてきましたが、みなさん対ドルのポンドやユーロ安に悩んでいます。)


 そもそも世界的なエネルギー価格の上昇は為替レートの問題というより、ウクライナ紛争に起因する資源高によるもの。これは自国でエネルギー資源を産出している国や、エネルギーの地産地消が可能な国を除き、どこの国でも直面している問題です。食料にしてもそうで、ただ食料の場合はウクライナ紛争に加えて天候不順による作柄不良も大きく影響しています。これに加えて日本の場合は政府が港湾インフラに十分な投資をしてこなかった悪影響で、大型の食料原料輸送船が日本には寄港せず(というか規模が小さくて接岸できず)、中国の港湾に行ってしまうので、中国経由で食料を買わざるをえなくなり、その分の輸送コストと、中国で買い負けてしまった分、つまり価格の上昇分が乗っかって高くなってしまっているという面もあります。


 要するに、アベノミクスは関係がないということですし、イールド・カーブ・コントロールが出来ているという点で、アベノミクスはしっかり機能しているのです。


 それからこのチラシにもう一つ、面白い記載があるので紹介しておきますと、「元より我が国の財政は、政府債務残高が1千兆円を超え、対GDP比でジンバブエに次いで世界第2位で、先進国では突出した第1位であり、その状況は終戦直後を凌駕していると言われています。」というものです。ウケ狙いですか?としか思えないような文章ですね。債務残高とは国債の発行残高のことでしょうが、各国ともこれは増えて当然。通貨発行の額に過ぎませんから。そもそも国債の60年償還ルールなどというものを定めているのは日本だけで、各国とも「借換」という方法により発行し続けています。(そんなことも知らないの?)対GDP比はGDPが成長せずに小さければ大きくなるのは当然で、しっかり政府が財政支出を行って成長させてGDPが大きくなれば自ずと小さくなりますよね。(それすらも知らないの?)そして、ジンバブエ、もう数年前にこの事例は全く当てはまらないということが確認されていると思いますが・・・(それも知らないとは・・・)ジンバブエの問題は供給能力の問題で、これが著しく低い同国はハイパーインフレになっただけ。国債の発行残高の問題ではそもそもありません。そして極めつけは、「終戦直後を凌駕している」という部分。この点についての誤解は自民党の財政政策検討本部で島倉原さんがしっかり解説してくれたそうですが、簡単に言えば次のとおり。戦争により生産施設の多くが破壊されて供給能力が著しく低下していたこと、その一方で戦後復興や外地にいた兵士の復員等により、需要が一気に高まっていたこと、そして、終戦処理費の名目で米軍の駐留経費を負担したのみならず、彼らの住宅や娯楽施設の整備まで一気に行わさせられたことで公的需要が一気に高まっていたことにより高インフレになったということ。戦時国債の発行残高云々は全く関係ありません。


 ということで完全に誤った認識の下、この勉強会は超党派で進めようとしているようですが、何人参加するんでしょうね。この嘘チラシを信じて真面目に参加する議員がいたら、次回の選挙では落選対象ということでしょう。


 ちなみにこのド緊縮勉強会の呼びかけ人は立憲民主党の米山隆一衆院議員。元新潟県知事で自民→日本維新→立民と渡り歩いてきた御仁です。そして勉強会の講師は・・・なんと、緊縮・増税の権化のような存在の土居丈朗慶應義塾大学教授です。