Shinzo-Returns

安倍総理の志は死なない!!

「お金を出せば輸入できる」は通用しない世界

ガチガチやれよ!
政争が繰り返される政治こそが真っ当だ
[三橋TV第641回]三橋貴明・高家望愛


https://youtu.be/JfXwT4Ue8EU



 本当は昨日、
本件を取り上げたかったのですが、
日銀のYCC修正があったので、
一日ずれました。



 コストアップ型インフレが、
我々日本国民を苦しめていますが、
同時に「コメの消費」という需要は
萎み(deflate)続け、
販売農家戸数はピークと比較し
七割近く減少。
100万戸を割り込んでいます。



 同時に、輸入物価上昇で
生産費の急騰が追い打ちをかけ、
多くのコメ農家は廃業の窮地に
立たされることになりました。



 自由主義、市場原理主義に従えば、
「競争に負けた農家は自己責任」
 という話になるのですが、
本当にそうか? 



 そもそも、コメの消費需要が
落ち込んでいるのは、
政府が「じゆうぼうえき~」などと、
小麦の輸入を拡大してきたためです。
(※もっとも、これでも一応、
政府はまだ小麦輸入を管理はしている)



 日本国民の食を担うコメ農家が
廃業していき、
食料安全保障が崩壊し、それでも、
「農家の新陳代謝が進む。
生産性が低いゾンビ農家は
さっさと退場させるべき」
 と、彼らは言ってのけるのでしょうかね?



 日本の農業は生産性が低いって、
当たり前だろ。
国土が山がちで、北海道を除くと
「地平線の向こう側まで農地」といった、
オーストラリアやアメリカ式の農業は
出来ないのだから。



 小麦でいえば、
世界市場における60kg当たりの
価格は1680円程度。
それに対し、日本国内でで生産すると
8000円ほどになってしまい、
採算はとれません。
これは「日本の農家が生産性向上を
さぼっている」といった話ではなく、
単純に国土条件の違いからくる
乖離なのです。



 ちなみに、生産性が
無茶苦茶に高いアメリカの農家ですら、
一家四人が食べていく程度の
所得しか得られません。


理由は、買取価格が異様に安いためです。



 それでも、アメリカ農家が
やっていけるのは、
「政府が補助」しているためなのです。



 同時に、アメリカ「農業」
(※農家ではない)は
安価な農産物を世界に売り、
供給能力の維持と、輸出相手国の
「国民の胃袋」の支配を両立させています。
アメリカの安全保障上、
農産物は「兵器」「武器弾薬」
そのものなのです。



『「日本の農業は過保護」という噓
 ◆貿易自由化の「生贄」にされてきた農業
  日本は、経済産業省などの主導のもと、
 長年にわたって自動車の輸出を
 推進してきた。



 そうして製造業で儲けるかわりに、
 自由貿易交渉においては、
 いわば「生贄」として
 農産物の関税撤廃を差し出す、
 という経済政策を進めてきた。
 「食料なんて金を出せば買える」
 という考え方が、
 あたかも正論のごとく唱えられた結果、
 日本国内での農業生産は
 ないがしろにされてきた。



  近年、むしろそうした構図が強まっている。
 各省庁間のパワー・バランスが完全に崩れ、
 農林水産省の力が削がれる一方、
 経産省が官邸を掌握した
 第2次安倍晋三政権時の
 2018年9月27日、
 日米貿易交渉の構図について筆者は
 某紙に次のように書いた。



 「今は“経産省政権”ですから
 自分たちが所管する自動車
 (天下り先)の25%の追加関税や
 輸出数量制限は絶対に阻止したい。
 代わりに農業が犠牲になるのです」。



 こうした構造は
 内閣が交代しても継続している。
  ある意味、この政策は狙い通りの効果を
 あげているとも言える。



 政府が使っている計量モデルを
 筆者の研究室で再現し、
 貿易自由化による自動車の利益と
 農業の損失を計算してみた。



 すると、TPP(環太平洋連携協定)や
 RCEP(東アジア地域の包括的経済連携)
 などの大きな貿易自由協定を
 一つ決めるごとに、
 自動車産業は約3兆円儲かり、
 農業は約6000億~1兆数千億円もの損失に
 見舞われていた。



 まさに農業を「生贄」にして自動車が
 儲かる構造があることが
 見事に示されたのである(表1参照)。
 (後略)』



 後略部で、鈴木先生は
「食料は「武器よりも安い武器」」
と表現していますが、まさにその通りで、
欧米諸国は「武器を生産する」
のと同じ発想で、国内農業に対する
支援を続けてきました。



 アメリカの場合、国内農家に対し
「生産者価格(高い)」と
「販売価格(安い)」の差を
補助金で埋めています。
穀物3品目の生産者価格補填だけで、
1兆円。
(結果、異様に安い穀物価格であっても、
アメリカ農家はやっていける。
安価な穀物は、世界に販売されていく)



 明らかな「輸出補助金」ですが、
アメリカは「輸出のみならず、
国内市場向け農家も同じように
支援しているので、
輸出補助金ではない」
というジャイアンな理屈で通しています。



 さらに、アメリカは消費者に
「食料購入支援」をすることで、
農家を支援しています。
2人世帯で月額516ドル
(所得にもよるのですが)の食料品を購入でき、
それがそのまま「アメリカ国内農家」
の所得になる仕組みです。



 日本に、
この手の農家支援システムが
ないのは、今更、
言うまでもありません。



 わたくしは、
「フードロスを無くすなど、
とんでもない!
 食糧消費が縮小し、農家の所得が減る」
「食料安全保障のためには、
政府が余剰農産物を買い取って、
捨ててしまえばいい」
 と、主張し、(農家を含めた)
様々な方々から批判されるというか、
顰蹙を買っているのですが、



「経済(経世済民という意味)」「所得」
「安全保障」という観点からは、
上記が正しいのですよ。



安全保障を真剣に考えれば、
「もったいない」など○喰らえ!
であることが理解できます。



 アメリカは消費者に
「農産物を買うカネ」を与えることで、
農家の所得を維持し、
同時に生産者価格を補助金により
補償しているわけです。



どこが「市場主義」なのでしょうか?
(アメリカの国益という観点からすれば、
完全に正しいのですが)



 いい加減に、日本は食料という
「生存」に不可欠な分野における
「市場主義」「自由競争」ついでに
「もったいない」といった
リベラリズムから卒業しなければなりません。



 日本の「農業を保護しない政府」は、
国債60年償還ルールと同様に、
グローバル標準からかけ離れている
のですよ。
「お金を出せば輸入できる」は、
もはや通用しないのです。