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タワマン富裕層は大増税を覚悟せよ…2023年中にも実施が検討されている「タワマン増税」の中身

行き過ぎた「タワマン節税」はもうできなくなりそうだ。不動産コンサルタントの長嶋修さんは「現在はタワマン購入で相続税と固定資産税を大幅に圧縮できるが、早ければ23年中にもこうしたスキームが禁止されそうだ。これ以上、税の抜け穴を放置するべきではないだろう」という――。
防衛増税、消費増税の次は「タワマン大増税」?
消費者物価指数が4.0%上昇する中、「防衛増税」の検討、「異次元少子化対策」のための消費増税など、岸田政権の増税姿勢が話題になっています。
そんな中、昨年12月、国税庁がタワマン節税の見直しに着手すると報道されています。
高層階ほど評価額を高くするなど、税負担の公平化を今後議論していくということで、実現すれば「タワマン大増税」となるかもしれません。
いまのところ内容、実現可能性ともに未知数ではありますが、2023年の税制改正で導入される可能性も否定できない情勢です。
富裕層をはじめとするタワーマンション保有者が、大幅な節税を享受できている点に、税務当局が高い関心を持っているのは間違いありません。
富裕層が活用する「タワマン節税」
タワマン節税とは、簡単に言えば、不動産の購入金額と、税金を払う上での評価額が違うことを利用した節税スキームです。
タワマン節税には「相続税対策」の側面と、「固定資産税対策」の側面があります。
相続税を支払う際、預金や株式については時価で計算されますが、不動産の相続については「相続税評価額」を計算します。
面積あたりの戸数が多いほど税金が減る
ただ、この「相続税評価額」は、路線価などを基に計算されますので、実際の不動産取引の価格より安くなります。後で触れますが、これは固定資産税の評価額についても同様です。
そのため、現金・株式を相続するより、不動産で相続するほうが、支払う相続税額はお得になるというわけです。
しかも、タワーマンションは高層建築ですので、1棟に多数の住宅が存在します。
この場合、「土地の相続税評価額」は、マンション全体分の相続税評価額を、住宅数で割った金額が適用されます。
そのため、戸数が多ければ多いほど、「土地の相続税評価額」も安くなります。高層建築であるタワマンは、土地面積あたりの戸数が多いので、税制面で非常に有利です。
しかも、タワーマンションの1戸あたりの価格は、均一ではありません。通常、低層階よりも高層階のほうが価格は高くなります。
そのため、タワマン高層階は、低層階より、相続税評価額の面でより有利になります。
このほか、「小規模宅地等の特例」として、一定の要件を満たすと土地の相続税評価額を最大80%も減額できる制度があります。
1億円の相続で2550万円も節税
タワマンの「相続税評価額」がどのくらい安いか見てみましょう。2011年から2013年にかけて国税庁が343物件を調査した結果によると、評価額は平均で「時価の3割ほど」だったといいます。
仮に「現金1億円の相続」だと、相続税率は30%なので、支払う相続税は3000万円(基礎控除を除く単純計算の場合)。
しかし「1億円のタワマンを相続」だと、評価額が3分の1の3000万円だとすれば、相続税率は15%、支払う相続税額は450万円ですみます。
およそ2550万円も相続税を圧縮できるのです。
「高層階ほど得」は2017年に税制改正
固定資産税の面でもタワマンは有利です。
先ほど述べたように、同じ面積に多数の住宅が存在するタワマンは、土地の評価額が安くなります。また、そのメリットは高層階ほど大きくなります。
これは固定資産税の評価額でも同じであり、税の支払い額を圧縮することができます。
ただ、税務当局はこの問題を把握しており、すでに対策が取られています。2017年の税制改正において、20階以上(60メートル超)のマンションでは、階数に応じて固定資産税の税率が変わることになりました。
具体的には、中層階を基準として、そこから1階下がると約0.26%の減税、1階上がると約0.26%の増税となっています。
ただ、これだけで公平性が担保されたわけではありませんし、今後、税制がさらに厳しいものに変わる可能性は高いでしょう。
「タワマン節税」は抜け穴に過ぎない
そもそも、なぜタワマンが税制面で優遇されているのでしょうか。
結論から申し上げますと、優遇されているのではなく、単に制度ができた時にタワマンがなかったので、現在になって抜け穴が生じているというだけの話です。
日本では戦後ずっと住宅難の時代が続きましたが、その時代に土地を遊ばせておくのは非効率だということで、空き地に住宅やアパートを建てたほうが節税になるという税制が求められたのです。
それから時を経て、日本中にタワマンが建築される時代になると、土地面積に対して住戸数が多いタワマンが、税制面で圧倒的に有利になったのです。
つまり、「タワマン節税」は、税制が当初想定していなかったもので、多くの人が「抜け穴」に目をつけ、節税目的で利用しただけというのが本当のところです。
国がタワマンを税制面で優遇しようとしているわけではありません。
そのため、節税目的でタワマンを購入し、居住実績がなかったということで、裁判で認められないケースもありました。
さすがに問題視されるようになり、数年前から見直しの議論が進んでいます。
冒頭でご紹介したように、早ければ23年中にも、税制改正がなされる可能性があります。
少子高齢化時代に「タワマン節税」は不要
税制の公平性に加えて、別の面でも「タワマン節税」は問題視されるべきです。
以前の記事でもご紹介したように、日本では少子高齢化が進んでおり、全国の空き家率は2018年の調査で13.6%となっています。
また、野村総研が発表した予測では、2033年の空き家率は27.3%にもなります。
今後日本全国の空き家率が急増する中、タワマン建設だけでなく、住宅やアパート建設を優遇するような税制が本当に必要なのか、疑問が残るところです。
少なくとも、現在「タワマン節税」として行われているような、税制を悪用・濫用するような節税については、今後見直されることはほぼ確実だと思われます。
一方、土地に住宅やアパートを建てると得をするという現在の税制は、戦後に設計されたもので、少子高齢化が進む中で見直しが必要になってきています。
「タワマン節税」が見直されたとしても、それによってタワマンが急に売れなくなるとか、すでにタワマンを購入した方が一斉に手放す、といった状況は考えにくいです。
タワマンは大抵良い立地に立っていますし、税制優遇が多少なくなっても資産としての価値が変わるわけではありません。
特に、人生の節目に居住目的でタワマンを購入した人達が、節税できなくなったからといって、急にタワマンを手放すこともないでしょう。
ただ、過剰な「タワマン節税」が見直されるのはほぼ確実と思われますので、相続税等の節税目的での購入はおすすめできません。
「タワマン節税」だけでなく、税制全体の見直しが必要になっているのは間違いありません。
今後どこまで議論が進むのか、動向が注目されるところです。
---------- 長嶋 修(ながしま・おさむ) 不動産コンサルタント さくら事務所会長。1967年生まれ。業界初の個人向け不動産コンサルティング会社「さくら事務所」を設立し、現在に至る。著書・メディア出演多数。YouTubeでも情報発信中。 ----------