Shinzo-Returns

安倍総理の志は死なない!!

「日本上空に飛来する中国偵察気球」今この国が問われているのは「排除する意思があるかないか」だけだ

米国安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は、13日の記者会見で、中国人民解放軍が偵察気球を使った情報収集に関与していると米政府が断定したことを明らかにした。
8日の拙稿『中国「痛恨のミス」?元空自情報幹部が「アメリカは偵察気球撃墜のタイミングを待っていた」と分析するワケ』で述べたとおり、米国防総省は以前から、このような中国人民解放軍による偵察気球の活動を把握していたと見られ、いつか米本土上空でこれを確認した際には、今回のような撃墜作戦を実行することによって、「中国に警告を与えよう」との狙いがあったものと思われる。
その後、次々と米アラスカやカナダなどの上空に現れる気球に対して同様にこれを撃墜したのも、「国際法を遵守せず、他国の主権を侵害するような行為に対しては断固たる行動で応じる」、という姿勢を強調する意味合いがあるものと考えられる。
防衛省も中国の偵察気球と発表
同様の気球は、わが国の上空でも3年あまり前から数回確認されていたが、これらについて防衛省は14日、2019年11月(鹿児島県)、2020年6月(宮城県)、2021年9月(青森県)で確認された気球に関して、「中国が飛行させた無人偵察用気球であると強く推定されるとの判断に至った」、と発表した。
この発表のタイミングから推測して、おそらく防衛省はかなり以前からこの偵察気球の存在を認識しており、米国防総省と情報共有をしていたのではないだろうか。防衛省にはその程度の情報収集能力は十分にあると思われる。だとすれば、当然のことながら浜田防衛大臣や岸田総理にも報告は上がっていたであろう。つまり、いつか米国がこのような行動に出ることは予想できた、またはしていたのではないかと推察されるのである。
このような気球の対応に関して、松野官房長官は13日の記者会見で、日本上空に気球などの飛行物体が飛来して領空侵犯した場合の対応について、「わが国自身の警察権の行使として国内法に基づき自衛隊が行う」と述べた。これは、従来航空自衛隊に付与されている任務である「対領空侵犯措置」の範疇で対応する、ということにほかならない。これでは、航空自衛隊がこれを「撃墜する」というような行動を執ることはとてもできないだろう。しかし、本当にこれで良いのだろうか。
「対領空侵犯措置」ではなく有事に準じた対応が必要
これが軍事情報などの機密情報の収集が目的の気球である限り、これは情報戦のツールということである。すなわち、これは情報戦の一環としての軍事活動である。しかし一方で、情報戦には平時と有事の区別はない。したがって、このような国際法に違反した情報活動に対しては、有事に準じた対応をしなければ国家の安全は保障されないのである。
わが国や国民は、自衛隊の活動や原発などの国の重要施設に関わる「機密情報が盗まれる」という事態をもっと深刻にとらえるべきだ。加えて、日本に駐留する米軍の機密情報を「わが国の不作為で盗まれる」ということは、同盟国としての信頼を失墜させる、ということにもつながる。
2022年7月1日の拙稿『中国大型軍事ドローンが日本周辺で活発化、でも「領空侵犯されても撃墜できない」日本政府見解がヤバすぎる』でも触れたとおり、そもそも「対領空侵犯措置」というのは、あくまで有人機を対象とした「平時における警察権の行使」という自衛隊の行動である。現在のように、軍事活動の一環として無人機や気球が領空付近や領空内で飛び交うような事態を想定してはいない。
日本の周辺情勢や使用される兵器体系がこのように劇的に変化してきているのだから、これに柔軟に対応していかなければわが国の防衛はとてもおぼつかない。これを決断するのは政治家であり、自衛隊最高指揮官の内閣総理大臣以外にはないのだ。
中国はわが国の対応を注視している
偵察気球による領空侵犯という国家主権の著しい侵害に対して、わが国はどのような決断を下すのか。諸外国もさることながら、このような不法行為を平然と実行してわが国の対応を見極めようとしている中国が何よりも注目しているだろう。
速やかに、岸田総理には国家の意思を明示していただきたいと思う。その意思に従って、防衛省の官僚(背広組)は法的根拠を明確にしようとするだろうし、必要ならば大臣をはじめとする政治家に法改正を進言するだろう。自衛官(制服組)は示された最高指揮官の意思に従って最も効果的な行動を選定するだろう。
これこそがシビリアン・コントロールである。今、わが国に問われているのは、「この気球を撃墜できるかできないか。ではなく、撃墜してでもこれを排除する意思があるのかないのか」、なのである。
後編『【元空自幹部】偵察気球やドローンは「撃墜覚悟の消耗品装備」だが、それをスルーして日本は本当にいいのか』につづく。