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安倍総理の志は死なない!!

“迷走”続ける習近平・国家主席に残された「2つの選択肢」 または王朝交代期

 昨年10月の中国共産党大会で異例の3選を果たした中国の習近平・国家主席。しかし、「ゼロコロナ政策」では国民からの不満を買い、中国経済の成長も失速させてしまった。現状を立て直すため習氏に残された選択肢とは――。経営コンサルタントの大前研一氏が分析する。
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 中国の人口が1961年以来、61年ぶりに減少した。中国国家統計局によると、2022年末時点の人口は14億1175万人で、前年から85万人減だという。まだ中国の人口は世界最多だが、少子高齢化による人口減少社会になったとみられ、すでにインドに抜かれた可能性もある。
 最近の中国は右往左往している。昨年12月7日に「ゼロコロナ政策」を放棄した途端に感染者が激増し、中国の感染症の専門家は1月下旬に「人口の約80%がすでに感染した」との見解を示した。事実であれば、人口14億人のうち11億人余りが感染したことになり、日本の致死率0.2%を適用すると、220万人が死亡していてもおかしくない。
 いきなりゼロコロナ政策を放棄した習近平国家主席は「右にウインカーを出しながら左にハンドルを切って暴走する運転手」とも揶揄されている。
 本来、緩和策にハンドルを切るのであれば、感染者の増加に備えた医療機関の拡充などが必要になるが、その準備が全くなかったため、大混乱が起きた。もし、さらに感染者や死者数が爆発的に増加し、各地で暴動が起きた昨年11月下旬のような状況になったら、習近平政権は再び反対側(過度な封じ込め策)にハンドルを切るかもしれない。
 外交政策も場当たり的で、一貫性がなくなっている。たとえば、日本と韓国が中国からの入国者に到着後の検査を義務付けたのに対し、中国政府は「差別的だ」と反発してビザ発給を停止する報復措置を取った。しかし、欧米諸国も中国に対して同様の水際対策を取っている。中国からの入国者の陽性率を考慮すれば、各国の水際対策は至極当然なのだが、中国政府は日韓にだけ報復措置を発動したのである(日本に対しては1月29日に発給を再開)。
 なぜ、こんなことになっているのか? 習近平「1強」体制の弊害にほかならない。習近平は昨年10月の中国共産党大会で異例の3選を果たし、新たな最高指導部「チャイナセブン」(中央政治局常務委員7人)は全員が過去の赴任地で配下だった“身内”で固められた。今年3月の全人代(全国人民代表大会)で、腹心の李強を行政トップの首相に就けると見られている。
 まさに習近平は右に左に“迷走”中なのだが、今後習近平が取るべき選択肢は2つしかないと思う。
 1つは、4~5年前までの経済最優先の中国に戻ることだ。実際、すでにEC最大手のアリババグループや配車サービス大手の滴滴出行(ディディ)への規制を緩和する方針を示している。そして、「BATH」(バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ)などの大手IT企業にまた稼がせて、その利益を掠め取り、「共同富裕」で国民に分配してガス抜きをすればよい。ただし本来、そのためには法律が必要であり、ロビン・フッドや鼠小僧でもないのに、法的根拠もなく金持ちから奪った金を配るような手法が未来永劫続けられるわけがない。その折り合いをつけられるかどうか。
 もう1つの選択肢は、「戦狼外交」を改め、周囲に脅威を与えない“温厚な中国”になることだ。アメリカと協調しつつロシアから原油や兵器を輸入しているインドのような全方位外交へと転換し、アメリカや日本とも仲良く付き合い、台湾とは「大三通(通信・通航・通商の緩和)」の経済重視で武力統一を放棄する。そういうまろやかな国になって、世界との共存共栄を図るのである。しかし、これも現実問題として中国が180度方針転換するとは考えにくい。
 だが、もし今後取るべき2つの選択肢が実現不可能だとすれば、習近平に残されたオプションは、民衆暴動を受けた退陣しかない。