Shinzo-Returns

安倍総理の志は死なない!!

ネコウヨ戦記 安倍総理と駆けた10年 019

私はネコである。名前はもうない。


現役世帯の3割が400万円に達していない現実
2000年から2021年の推移を見ると、「児童のいる世帯」の年収分布で急上昇しているのは、800万円以上の世帯で、ほぼ3%ずつ増えている。近年、所得上位層だけが子どもを産んでいるともいえるわけである。
しかし、これは、高所得層の人口が増えたからではない。あくまで構成比であり、実数が増えているのではない。そもそも、「児童のいる世帯」そのものの絶対数は婚姻減もあり激減している。ここから解釈できるのは、「高所得層が結婚して子どもを産んでいる」のではなく、「ただでさえ少ない高所得層しか結婚も子育てもできなくなった」とみるべきである。
図表1のデータに戻るが、そもそも子の有無にかかわらず、日本の現役世帯の全体の3割が400万円に達しないというのはどうなのだろう。これは、年金だけが所得である高齢者世帯は除いた数字、日本全体が貧乏となっているということではないだろうか。
そもそも日本の少子化は、結婚した夫婦の子どもの数が少ないせいではない。結婚した夫婦の一組当たりの産む子どもの数はざっくり約2人であり、1980年代と比べても遜色はない。
少子化は「もうひとり産む」では解決しない
少子化の解決には、今結婚している夫婦に「もうひとりプラスで1人産んでもらえば解決する」などという鉛筆なめなめの論説を展開する御仁もいるのですが、論外だ。そもそも女性の初婚年齢自体が上がっており、晩産化が起きている中で、どうしても出産年齢の問題がある。ベビーブーム期のように20代前半で第1子を産んだ時とは時代が違う。
少子化は、婚姻数の減少であり、生涯無子率上昇の要因の大部分が未婚率の上昇によってもたらされていることからも明らかだ。
そして、その婚姻減少とは、若者が若者のうちに結婚できない問題でもある。人口動態調査より、対未婚人口初婚率というものがある。未婚人口のうちどれくらいが結婚するのかを見る指標である。人口千対のその数字の25~29歳と30~34歳の男性の累積値をみると、1990年と2020年とを比べれば、半減していることがわかる。
この減少と児童のいる世帯数の減少とは、当たり前だが完全に一致するほどの強い相関がある。婚姻が減る分だけ子どもの数が減る。
対策に躍起になる政府に絶望的に欠落しているもの
初婚率の推移と児童のいる世帯の平均年収推移とを合わせる。こちらは負の相関で、初婚率が下がれば下がるほど、児童のいる世帯の平均世帯年収はあがっている。つまり、ある程度の基準の年収に達しない層が結婚できていないことを意味する。
「結婚と年収とは関係ない」などという人がいる。もちろん、そういう見方もあろう。しかし、統計をマクロで見れば、若者の経済環境が改善しないまま何十年も放置したせいで、結婚も出産も「一部の経済的に恵まれた層だけができるものと化していったことは否定できまい。
所得というものだけを取りあげたが、仮に額面の所得があがっても、それを上回る物価高の現状では実質賃金は減っているも同然だ。しかも、税や社会保障費といった非消費支出が、じわじわと何十年もかけてステルス値上げされており、可処分所得で見ればかえってマイナスとなっている人も多いことだろう。
年明けから政府がぶちあげた「異次元の少子化対策」は、基本的に「子育て支援」一辺倒である点が問題だ。子育て支援を否定するものではないですが、出生数の増加を本気で考えるのであれば、今結婚している夫婦よりも、30年間で半減してしまった初婚の増加に目を向けるべきだ。その観点が絶望的に欠落している。
そして、それは婚活支援やマッチングアプリなどではなく、そもそもの若者の経済的基盤の安定と将来に対する安心を提供することだ。
若者の半数が希望を失ったのはだれのせいか
今、若者には、未来に対する希望が失われている。
内閣府が全国の13歳~29歳までの男女を対象として実施した2018年「子供・若者の意識に関する調査」の中に「自分が40歳になったときどのようになっているか」という質問がある。その中で、「出世」と「お金」に関する結果に注目した。
40歳になった時「出世しているだろう」と予測しているのはわずか38%。「お金持ちになっているだろう」と予測しているのは35%にすぎない。10代から20代というまだまだ可能性を秘めている若者自身が、もはや自分の将来に出世も経済的裕福さも望めないと6割以上が思わざるを得ない社会とは一体なんなのだろう。
子ども家庭庁の理念には「常にこどもの最善の利益を第一に考え、こどもに関する取組・政策を我が国社会の真ん中に据えていく。結婚・妊娠・出産・子育てに夢や希望を感じられる社会を目指し……」などという言葉が並べ立てられてはいるが、そもそも子どもや若者自身が自分たちの未来に何の夢や希望も信じられない「今」を作ったのは誰なのか、大人たちは胸に手を当てて考えてみる必要があるのではないだろうか。
米国大統領フランクリン・ルーズベルトは、「若者のために未来を創れるとは限らない。だが、未来のために若者を創ることはできる」という名言を遺している。それをもじっていうのであれば、
「若者のために、大人はその未来を創れとまではいわない。が、せめて、大人たちよ。未来を作る若者たちの邪魔をしないでくれ」