Shinzo-Returns

安倍総理の志は死なない!!

「同化政策」激烈推進の中国、天に唾するその行状

(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)


 2021年、中国共産党は、創設100周年を迎える。


 それを前に、今年の中国の強硬姿勢は目立つものがあった。


 際立つのは、一国二制度を約束していたはずの香港を呑み込んでしまったことだ。国家安全維持法を6月末に成立、施行させると、事実上の統治下に置いてしまった。今月には“香港の女神”とも“民主の女神”とも呼ばれる民主活動家の周庭らが、昨年の違法デモを煽動したなどとして実刑判決を受け、収監されている。


香港の裁判所から実刑判決を下され、現在収監されている民主活動家の周庭氏と黄之鋒氏。写真は2019年8月撮影(写真:AP/アフロ)© JBpress 提供 香港の裁判所から実刑判決を下され、現在収監されている民主活動家の周庭氏と黄之鋒氏。写真は2019年8月撮影(写真:AP/アフロ)
 中国に批判的な論調で知られる新聞「リンゴ日報」の創業者である黎智英も、国家安全維持法違反の罪で起訴され、勾留された。保釈が認められたものの自由な活動はできない。


 そればかりではない。


 少数民族のモンゴル族が多く暮らす内モンゴル自治区で、小学1年生と中学1年生の国語の授業が従来のモンゴル語から中国語に変わったのは、今年9月の新学期からだった。始業前の8月26日にいきなり通知された。来年以降は段階的に別の教科でも中国語に切り替えられる。これに地元住人が反発。抗議デモや授業をボイコットしたところ、その参加者や保護者が相次いで逮捕される事態になっている。


 習近平国家主席の唱える「中華民族の偉大な復興」のスローガンから、少数民族の子どもたちに「中華民族」であることを意識させ、共産党の価値観や歴史観を浸透させるのが目的とされる。


チベット自治区や新疆ウイグル自治区でも「同化」推進
 こうした「同化政策」は、すでにチベット自治区や新疆ウイグル自治区でも進む。


 9月25〜26日には、北京で新疆ウイグル自治区に関する重要会議「中央新疆工作座談会」を6年ぶりに開いている。そこで習近平は、「共産党の統治政策は完全に正しく、長期間にわたって必ず堅持すべきだ」と評価。さらには「イスラム教の中国化を堅持せよ」「中華民族共同体の意識を心の奥底に根付かせよ」と述べたとされる。少数系イスラム民族にも共産党の指導を徹底させる意向だ。これが欧米諸国からウイグル族への人権弾圧と批判されていることはいうまでもない。


 だが、こうした自由を奪うこと、民族の迫害をもっとも嫌っていたのは、中国共産党のはずである。過去に同じ仕打ちを受けたからだ。かつての日本軍によって。


旧満州に建つ「反日教育」施設
 いかに日本は酷いことをしたか。それを反日教育に利用している場所がある。


 中国吉林省長春は、かつて満州国の首都として「新京」と呼ばれていた。


 ここを訪れると、「偽満皇宮博物院」「長春溥儀研究会」と記された門と鉄条網に囲まれた区画がある。そこには満州国の皇帝だった愛新覚羅溥儀の皇宮が残っていて、料金を払って見学することができる。もっとも、地元ではこの歴史的建物を『偽満州国皇宮』と呼んでいる。偽りの国ということだ。


 そして、それと並んで隣に「東北淪陥史陳列館」という巨大で近代的な建物が置かれている。中に入ると「日本侵略中国東北史実展覧」というものが常時、催されている。日本の中国侵略の歴史を伝えるものだ。


日本の中国侵略の史実を伝える展示がなされている「東北淪陥史陳列館」(筆者撮影)© JBpress 提供 日本の中国侵略の史実を伝える展示がなされている「東北淪陥史陳列館」(筆者撮影)
 私がここを訪れたのは5年前のことだが、いまの中国のやっていることと、当時の私の目に焼き付いたこの展示内容を見比べると、中国共産党があまりにも滑稽で、しかもおぞましく思えてきてならない。


「日本文化の押し付け」を中国は批判しているはずだが・・・
 まず、エントランスホールに入ると、壁に大きく「勿忘9・18」と書かれている。「忘れる勿(なか)れ9・18」という意味で、満州事変のきっかけとなった柳条湖事件のあった日を指す。


 そこから日本がこの東北の地をいかにして侵略し、「偽満州国」を建国して、どれだけ酷いことをしてきたかを示すコーナー展示が続く。それぞれが「文化」「教育」「宗教」などとテーマが記され、そこに中国語と英語、それに日本語で総括の解説文が掲げられていた。そこから、それに見合った資料や写真が並べてある。それをいま書き起こすだけでも、啞然とさせられる。


 例えば、「文化」についての日本語の解説。


【植民地支配を維持・強化するために、日本侵略者はあらゆる方法で中国固有の思想を破壊し大量に日本文化を輸入して、植民地文化を発展させた。文化的独裁を推進するために、日「満」(日本と偽満州国)が偽満州国国務院総務庁に日本人が完全に支配する弘報処を置き、新聞、出版、通信、文芸などの文化・宣伝・世論の陣地を中央集権的な方法で統制・管理し、審査・監督して、植民地文化を以て中国民族文化に取り替えようと図った。】


 香港が聞いて呆れる。


 あるいは「教育」についての解説。


【植民地支配を一層強化するために、日「満」は“日満一徳一心”“五族協和”などのいわゆる建国精神を大宣伝し、日本語を国語と定め、奴隷化教育を強制的に推進して、東北人民、特に青少年の民族意識を滅ぼし、彼らを日本植民地支配の忠実な従僕に育てあげようとした。】


 内モンゴル自治区からモンゴル語を奪ったのは誰だ?


 次に、「宗教」について。


【偽満皇帝溥儀はさらに、自ら日本に赴き、日本を象徴する“肇国の祖”である“天照大神”を偽満皇宮に招きいれ、それを“建国元神”として祭り、また東北人民に信奉・礼拝するよう強制した。東北人民は民族と祖先を失うという辱めを被った。】


 イスラム教の中国化を進めるのはどこのどいつだ?


 また、「白色恐怖」というコーナーでは、こう説明している。


【東北の人民には人身の自由と言論の自由は全くなく、少しのことにも嫌疑をかけられ、逮捕監禁されることになり、いわゆる“思想矯正”を受けたり、さらには殺害さえされた。銃剣が支配する東北の大地は極度の白色テロにさらされた。】


 もうここまでくると、中国共産党が自分たちのしていることをあげつらっているに等しい。愚かさを通り越して、恐ろしくもある。


 誕生から100年を前に中国共産党は、歴史をブラックユーモアで塗り固めようという狂気に充ち満ちている。


自らが被害者となった「歴史の悲劇」を、今度は加害者として繰り返すつもりか
『勿忘“九・一八” 江沢民』


 そう揮毫の刻まれた巨大な石碑が皇宮の庭のど真ん中に置かれているように、この施設は、江沢民が国家主席だった時代に整備されたものだ。


 その理由は、エントランスホールから展示スペースに入る壁の脇に中国語と英語、それに日本語で文章が掲げられていた。中国語で「前言」、日本語では「始めに」とあるその全文を、少し長いがあえて示しておく。


【炎帝と黄帝の子孫である中国人は、1931年9月18日、日本が凶暴にも内外を驚愕させる“九・一八事変”を引き起こし、武力で中国東北を侵略・占領して偽満州国をつくり、ファッショ的植民地支配を行って東北人民を奴隷化し、ほしいままに資源を収奪すること14年の長きにわたったことを、誰ひとりとして忘れるはずはない。


 しかし、日本国内の一部の人々はこの時期の歴史を正視することが出来ず、甚だしくそれを歪曲・否認さえしている。そして、現在、中国(国内)の青少年の中には、日本が中国侵略で行ったファッショ的植民地支配の蛮行が分からず、日本軍国主義、偽満州国とは何ものであるかが分からず、銃剣による支配下でかつて中国人民が受けた屈辱と苦難が分からず、抗日戦争の困難さと比類のなさが分からない者がすでに少なくない。


 それゆえ、私たちは大量の歴史的図面、文物、また、歴史証人の証言などの音声・画像資料をもって展示を作り、当時の歴史を再現したが、これは歴史とはいかなる人も書き替えることが出来ないものであることを証明するためである。すなわち、広範な人民にこの悲惨で苦痛な屈辱の歴史をしっかりと記憶させ、国の強化を図って中華民族の偉大な復興を実現し、歴史の悲劇の再演を許さないためである。】


 明らかに日本への恨み、反日教育を目的としたものであることがわかる。


 それから時間が経ったとは言え、「中華民族の偉大な復興」という変わらない目的のために、「歴史の悲劇の再演」を自ら果たしている中国共産党。こういうことを日本語で「間抜け」というはずだ。