Shinzo-Returns

安倍総理の志は死なない!!

国民が「命の危機」に気づく年に 世界の覇権狙う中国の抑止へ「アジア版NATO」創設を 作家・ジャーナリスト、門田隆将氏

 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が収まらないなか、軍事的覇権拡大を目指す中国に、国際社会が厳しい目を向けている。2021年の年明けには、米大統領選で勝利したジョー・バイデン新政権もいよいよ船出する。では、日本はどう立ち振る舞うべきなのか。その処方箋を人気作家でジャーナリストの門田隆将氏が大胆に提言する。



 退陣前の安倍晋三首相は9月11日、新たな安全保障政策として、敵国のミサイル攻撃を防ぐため、これまでの迎撃能力を上回る対策を検討して年内に結論をまとめる、との談話を発表した。


 そして、12月18日、菅義偉政権は敵基地攻撃能力の保有自体には踏み込まず、「抑止力の強化について引き続き政府において検討を行う」との表現にとどめた。


 その一方で、敵の攻撃圏外から対処できる「スタンド・オフ・ミサイル」の国産開発を閣議決定した。名を捨て、実をとったのである。


 これに対して、朝日新聞は「破綻(はたん)した陸上イージスの代替策と敵基地攻撃能力の検討は、安倍前政権の『負の遺産』である。きっぱりと決別すべきだ」(12月19日付社説)と書き、毎日新聞は「日米安全保障条約の下、日本は守りの『盾(たて)』、米国は打撃力の『矛(ほこ)』としてきた役割分担の見直しにもつながりかねない。専守防衛をなし崩しで変質させることは許されない」(20日付社説)と非難した。


 歴史に特筆される新型コロナウイルスに“明け暮れた”ともいえる2020年の最後を飾るニュースへのマスコミの論調は、興味深かった。


 私は6月末に『疫病2020』(産経新聞出版)を発刊した。お陰さまで10万部を超えるベストセラーとなったが、そこで指摘した「愚か」で「脆弱」で、「先を見ることもできない」日本の政治家と官僚の姿には情けない思いがしたものである。


 菅政権に移っても、国民の命をまるで考慮に入れず、東京五輪・パラリンピックに向け、先にスケジュールありきの海外開放策には呆れ果てた。


 だが、それでも最もこの国でレベルが低く、現実に対応できないのは、先に挙げた朝日、毎日両新聞を筆頭とするマスコミだろうと思う。


 私は2021年が日本人の「気づきの年」になってほしいと心から願う。それは、私たち国民の命がどんな危機に陥っており、子や孫のために「いま何をしなければならないのか」に気づいてほしいということだ。


 この10年で日本を取り巻く情勢が激変したことには異論がないだろう。


 中国の台頭と膨張によって、彼らの「力による現状変更」の危機が日本に迫っている。


 沖縄県・尖閣諸島を「核心的利益」と表現し、「わが国の海域に正体不明の日本漁船を入れないようにせよ」と王毅国務委員兼外相が日本での記者会見で言ってのけたのは周知のとおりだ。


 南シナ海では、他国のEEZ(排他的経済水域)内の岩礁を埋め立て、非難をものともせず軍事基地化する中国。習近平国家主席は、建国100年を迎える2049年までに「100年の恥辱」を晴らして「偉大なる中華民族の復興」を果たし、世界の覇権を奪取すると広言している。


 2012年11月末、中国国家博物館を訪れた際、習氏が最初に披露したこのスローガンは以後、中国人民の大目標になった。ここでいう「100年の恥辱」とは、1840年からのアヘン戦争に敗北して以来の屈辱の100年のことだ。


 欧米列強によって、租界など各地に植民地をつくられ、日本も東北部に満州国を建国し、さらには支那派遣軍200万人との死闘という苦しみを味わったのである。


 中国はその恨みを晴らし、偉大なる中華民族の復興を果たすという。これが日本に対して向けられた言葉であることに気づかないのはおかしい。


 米ソ対立の冷戦が歴史上の出来事となり、現在は米中の「新冷戦時代」を迎えている。前者の最前線が欧州ならば、後者の最前線は東アジアなのだが、では、私たちは冷戦時代に威力を発揮したNATO(北大西洋条約機構)の「アジア版」を構築しているだろうか。


 どの国に対しての攻撃も「加盟国すべてへの攻撃」とみなし、全体で反撃するという抑止力によって、欧州は戦後、平和を保ってきた。


 私たちは、新冷戦時代に一刻も早くアジア版NATOである「環太平洋・インド洋条約機構」を創設して抑止力を強化し、スクラムを組んで平和を守らなければならない。そのためには集団的自衛権保有の憲法改正が不可欠だ。


 国民よ、目覚めよ。なんとしても2021年をそのための「元年」にしていただきたい。


 ■門田隆将(かどた・りゅうしょう) 作家・ジャーナリスト。1958年、高知県生まれ。中央大学法学部卒業後、新潮社入社。元「週刊新潮」デスク。歴史、司法、事件、スポーツなど、幅広いジャンルで活躍。『なぜ君は絶望と闘えたのか』(新潮文庫)、『死の淵を見た男』(角川文庫)、新型コロナウイルスの本質に迫った『疫病2020』(産経新聞出版)などベストセラー多数。『この命、義に捧ぐ』(角川文庫)で山本七平賞受賞。