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安倍総理の志は死なない!!

米中、台湾有事はもはや「時間の問題」 林外相任命は「日本の弱腰」示すメッセージ…日本の危機感はあまりに薄い

 米国と中国の、台湾をめぐる駆け引きが一段と激しくなっている。もはや台湾有事は「起きるのか」ではなく、「いつ起きるか」という段階に入った、とみるべきだ。
 中国軍が、台湾の防空識別圏(ADIZ)に戦闘機などを飛ばす挑発は11月も続き、常態化した。中国国内では、国民に食糧備蓄を呼びかける一方、水陸両用の軍用車両が日中に浙江省(=東シナ海に面する中国東部の省)の市内を移動する動画もネットで拡散している。
 中国共産党は11日、第19期中央委員会第6回総会(6中総会)で、党創建100年を総括する「歴史決議」を採択して閉幕した。戦時体制ともいえる動きは、台湾に対する威嚇と習近平体制の引き締めを図る狙いだろう。
 一方、米国は上下両院議員団が9日、米軍の輸送機で台湾入りした。これより先、米紙ウォールストリート・ジャーナルは「米海軍特殊部隊のネイビーシールズと海兵隊が台湾軍を訓練している」と報じ、台湾の蔡英文総統もそれを確認した。
 こちらは「いざ有事となれば、米国は一段と軍事支援を強化する」というサインだ。
 ジョー・バイデン大統領の米国が「台湾有事」の可能性を真剣に受け止めている証拠は他にもある。国防総省が3日に発表した「中国の軍事力に関する2021年版報告書」で、人民解放軍の台湾侵攻シナリオを具体的に検討していたのだ。
 それは、「空と海での台湾封鎖」と「情報戦などを含む限定的な台湾攻撃」「空爆とミサイルによる大規模攻撃」「大部隊による台湾上陸作戦」という4つの可能性を示している。
 私は、もっともありそうなのは2番目の「情報戦を組み合わせた限定的攻撃」シナリオではないか、とみる。例えば、電力などインフラを支えるネットワークを破壊するだけで、相当な打撃を与えられるからだ。
 あくまで仮想のシナリオとはいえ、米国防総省が具体的に中国共産党を名指しして、公式文書で攻撃作戦を示すとは、尋常ではない。普通の外交関係にある国同士なら、深刻な外交問題に発展してもおかしくないところだ。
 だが、建前の応酬を繰り広げているような段階は、とうに過ぎ去った。米中両国とも「有事は時間の問題」とみているのである。
 だが、それに比べて、日本の危機感はあまりに薄い。
 先の国防総省報告書についても、多くのマスコミは「中国が2030年までに核弾頭1000発を保有する」という点を強調した。危機は「今そこにある」というのに、30年の核弾頭数を心配しているのだ。
 台湾をめぐって米中が正面から衝突すれば、核戦争は30年ではなく、すぐにも起きるかもしれない。念のために付け加えれば、これは私の見立てではない。米海軍戦争大学の教授が真剣に懸念している事態である。
 そんななか、岸田文雄首相は茂木敏充前外相の自民党幹事長転出に伴って、林芳正氏を外相に任命した。林氏は日中友好議員連盟の会長を務めた、「親中派」の代表格でもある。これは、「日本の弱腰」を示すメッセージになりかねない。岸田政権は大丈夫か。(ジャーナリスト)
 ■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革会議委員などの公職も務めた。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア-本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。ユーチューブで「長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル」配信中。