Shinzo-Returns

安倍総理の志は死なない!!

バイデン大統領の不人気で囁かれるトランプ大統領カムバック?!!

(山中 俊之:著述家/芸術文化観光専門職大学教授)
トランプが再度大統領になってくれれば!
 バイデン大統領の不人気のため、敵失で共和党が復活する。
 バイデン氏の支持率は2021年7月には40%台に落ち、11月現在では30%台との調査もある。歴代大統領に比しても、下落が早く、低飛行であることは間違いない。
 それだけではない。
 11月に実施された「USAトゥデイ」の世論調査では、60%以上の有権者が「バイデン氏は再選の大統領選挙に出馬すべきではない」と答えている。1期目の大統領は再選に向けた大統領選挙に出馬することが通例だ。出馬自体に否定的な世論は異例といえる。国民は、バイデン大統領にイエローカードを出していると言ってよいだろう。
 バイデン氏の不人気、支持率低下は、主に以下の3つに集約されると見ている。


© JBpress 提供 メラニア夫人とワールドシリーズ観戦に訪れたトランプ氏。相変わらず血色がよい(写真:AP/アフロ)
バイデン氏の支持率低下を後押しした失策
 第一に、共和党支持者だけでなく民主党左派勢力からも批判される政策である。
 典型例が、米国内政において最大課題といえる移民問題である。バイデン氏は、トランプ氏と違って移民に対して寛容な姿勢を打ち出しながら、実際にはメキシコ国境で強制送還を続け、中南米系の米国人の反発を招いている。
 米国では、ラティーノと呼ばれる中南米系の人口が全体の18.7%を占めている(2020年国勢調査)。ラティーノはフロリダ州など大統領選挙で接戦州と呼ばれる州でキャスティングボートを握ることも多い。
 なお、中南米系の人口はヒスパニック系と呼ばれることがあるが、スペインやイベリア半島出身者を意味するヒスパニックよりも、中南米全体を指すラティーノの方が使用されることが増えている点を付言しておきたい。
 学生など若者支援を含めた貧困層支援や気候変動問題対策に対しては、民主党左派から「対策が不十分である」との批判が付きまとう。
 第二に、アフガニスタン撤退の判断に対する批判である。
 私は、米国の中東への軍事的関与が中東に混乱をもたらしてきたとかねてから主張している。そのため、米軍が今後もアフガニスタンに駐在していても状況が改善するとは思わない。
 しかし、米軍の撤退がアフガニスタンに混乱をもたらし多くの難民が生まれていることも事実である。多くのアフガニスタン国民が飢餓の危機にあるとの報道に接してバイデン氏の決断を批判する人は多い。
【関連記事】
◎「テロ撲滅」の大義で無辜のアラブ市民を殺戮する米国の欺瞞(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/66988)
◎バイデン次期大統領が直面する中東情勢のイバラの道(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/63329)
 第三に、高齢からくる健康不安である。
 バイデン氏は11月20日に79歳となった。米国歴代大統領の中で最高年齢を更新中である。
 世界各国を見ても、選挙で選ばれた80歳を超える元首は、多くない。英国のエリザベス女王やサウジアラビアのサルマン国王など、バイデン氏よりも年上の元首もいるが、大半は終身の国王であるか、政治的権力を手放さない独裁者である。
 高齢であること自体は批判すべきことではない。しかし、バイデン氏の健康不安をうかがわせるあやふやな発言や歩く際のよろめきなどの言動が米国メディアに掲載されることは多い。国民はバイデン氏の大統領としての判断力に不安をもっているのだ。
中間選挙後に想定されるシナリオ
 内政においては、来年、2022年の中間選挙では与党民主党にとって厳しい結果になり、議会を通すべき法案などが通らないなど政策遂行に支障をきたすことが想定される。
 米国の中間選挙は、大統領選挙から2年たった11月に実施される。4年に1度の大統領選挙の中間時に行われるため「中間選挙」と呼ばれる。
 任期6年の上院議員の3分の1、任期2年の下院議員全員が選挙の洗礼を受ける。下院は日本でいうと衆議院だから、2年ごとに総選挙があるようなものだ。米国の下院議員は頻繁に選挙があって大変だと思う。
 大統領選挙は4年に1回しかないので、その間の国民の意思を反映させようという米国民主主義の礎のようなものだ。
 過去の中間選挙を見ると、現職大統領側に厳しい結果であることが多い。今回はそれに加えて、バイデン氏の不人気である。
 そのため、来年の中間選挙敗北が分水嶺となり、求心力を失っていく可能性が高いと考える。
 米国の上下院では、民主党と共和党の議席は拮抗している。中間選挙で民主党の取りこぼしがあれば、議会が共和党多数になる可能性がある。その場合、バイデン政権は政策遂行が大きく困難になるだろう。
 コロナ対策としての経済対策などすでに国民受けする政策は打ち出しており、国民からの支持率増加につながる新たな打ち手は限られている。
 そして、少し気が早いが、3年後の大統領選では、トランプ氏やトランプ信奉者の当選の可能性がある。
大統領のレームダック化が世界に与える影響
 冒頭に紹介した友人がトランプ氏の再度の当選を恐れるのは、共和党内に他に有力な候補がいないからである。共和党支持者の中では、依然としてトランプ氏支持者が多い。
 現時点で共和党の大統領候補を選ぶ予備選が行われたらトランプ氏が圧倒的な強さで当選するのではないか。
 さらに、バイデン氏以外の民主党の有力候補者も現時点では不透明感が強い。当初、有力と見られていたハリス副大統領は、その手腕に疑問符がついている。
 今後、バイデン氏の影響力が落ち、民主党が批判を受け、78歳になったトランプ氏が再度大統領に──という夢が現実のものになる可能性は少なくない。
 このような国内の支持率低下は、外交における米国の影響力の低下につながる。
 外交においては、ある政権の支持基盤が弱体化すると、敵対的関係にある他国が強硬策に走ることは定番である。
 すなわち、中間選挙敗北を受けて、バイデン政権に黄信号がともると、中国やロシア、イランなどが、軍事や経済政策において強硬政策に出てくる可能性がある。国際社会の不安定化は増すであろう。
 中国の国家存立に関係する台湾問題とウイグルなどの人権問題については、習近平体制が続く限りは中国が妥協することは考えられない。バイデン政権の弱体化を見越して、人権問題での対立が中国側の関税引き上げなど経済関係に飛び火すれば、バイデン政権へのさらなる批判は避けられない。
 中東では、アフガニスタンの混迷に加え、イランの核開発の進展、シリア・イエメンの見えない泥沼なども懸念材料だ。
 中間選挙の結果次第では、バイデン政権が一気にレームダック化して、世界各地が不安定化する可能性がある。バイデン氏の支持率低下は決して「対岸の火事」ではないことを我々は知るべきだろう。