Shinzo-Returns

安倍総理の志は死なない!!

地球温暖化説を疑え 喧伝される「脱炭素」で得をするのは誰か? 今こそ考えるべきだ

EV革命に成功した英国
 欧州議会が発行した文献「The Future of the EU Automotive Sector(EUの自動車産業の将来)」を題材として「自動車分野の未来」を概観するシリーズ企画。最終回となる第6回は地球温暖化について考える。
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 関東地方で節電要請が出ているが、原因はウクライナ危機だけではない。性急な電力再エネ化も影響している。近年、CO2による地球温暖化の問題が大きく取り上げられているが、そもそも科学なのか、政治の手段なのか、どちらなのだろうか。
 ということで最終回となる今回は、自分自身で考え、判断するための糸口を提供する。
 2022年6月14日、英国政府は2011年以降、電動化促進のために施行されてきた1台当たり約25万円のプラグインカー補助金の即時廃止を発表した。開始以来、50万台以上に適用され、2011年に1000台程度だったEVの国内販売台数を、2022年の5か月間だけで10万台近くにまで押し上げた。
 英国の国会議員20人が2022年1月、次のような意見書をメディアに提出した。
・環境のための税金や賦課金によって、エネルギー価格は他国より高く、賃金は低い人たちにとって、暖房や輸送コストの上昇は大きな負担となっている
・企業が消費するエネルギーに対する「気候変動税」は企業の競争力を低下させ、消費者の負担も増加する
 日本と違って、与党議員からこのような意見が出る政治は健全といえるだろう。改革は痛みを伴うが、国民や産業が死んでしまってはいけない。
 脱炭素の起源と経緯は、次のとおりだ。
・1950年代後半:大気中のCO2濃度の観測を開始した
・1963年:気象学者のチャールズ・デービッド・キーリングらが、CO2による地球温暖化の懸念を報告した
・1989年:マーガレット・サッチャー元英国首相は国連総会で気候変動防止のための行動を促した
・2006年:アル・ゴア元米国副大統領が地球温暖化を訴えた「不都合な真実」を上映した
・2007年:英国高等法院は「不都合な真実」は政治的に偏向し、一部に誤りがあるとして、学校での上映に際して是正措置をとることを求める判決を下した
 2000年代にサッチャーは立場を大きく変え、欧州の「高コストのCO2抑制策」を嘆いた。大学で化学を専攻したサッチャーは、地球寒冷化の方が、温暖化より被害が大きく、科学が政治に利用されることは
「人類の進歩と繁栄にとって脅威」
だ、と考えていた

IPCCの主張とは

© Merkmal 提供 近未来の気候変動:予測・予想可能性(画像:IPCC)
 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、2021年8月発行の第6次報告書で、人間活動の影響で地球が温暖化する可能性には「疑う余地がない」と断言した。
 IPCCは、全球気候モデル(GCM)という大規模なコンピューター解析の結果を「科学的」根拠として利用している。図は世界の平均気温推移と今後の予測を示しているが、黒い太線が示す実測結果は、さまざまなシナリオの予測範囲の下限にあり、かつ最近10年間ではほとんど上昇していない。
 しかし、IPCCはその理由を明確に説明することなく「温暖化は疑う余地がない」と断言した。GCMの信頼性と有用性については科学会でも論争がある。興味があれば、
・地球温暖化の予測は正しいか?(杉山大志、キヤノングローバル戦略研究所)
・誰にでもわかる気候モデルの問題点(Judith Curry、地球温暖化政策財団)
という論文を一読いただきたい。
GCMによる評価は不適切

© Merkmal 提供 地球システムモデルの3次元格子構造の模式図(画像:海洋研究開発機構)
 GCMはコンピューター支援工学(CAE)のツールのひとつであり、一般的なCAEは広範囲に利用される。ただ、解析結果と実測結果が合わないことに悩むケースが多く、GCMは0.5度レベルの絶対値を評価するには不適切だ。その理由は、次のふたつだ。
●有限要素法
 CAEは有限要素法とも呼ばれ、難解な微分方程式を近似的に解くために、解析の対象物を小さな要素に分割して、単純な関数で表す手法だ。近似すれば解析と実測は合わなくて当然だ。なお、地球全体を扱うGCMの1要素のサイズは通常100~200km平方、高さは1kmだ。100kmどころか1km先でも天気は変わる。
●実測による検証
 通常は精度を上げるために、実測結果に合わせて数値モデルを修正する。これを検証と呼ぶ。検証データのないCAEに関する論文は信用されない。一方、気候現象は人為的に変更して解析結果を検証することができないため、GCMは過去の気象現象を再現できるように修正されているが、「過去の延長線上に未来がある」とは限らない。
 46億年の地球の歴史の中で、全球凍結や周期的な寒冷化が発生した、という仮説を説明する証拠はあり、まじめに議論されている。
脱炭素のコストとは

© Merkmal 提供 注目すべき気候政策のメリットとコストの比較(画像:AAF)
 脱炭素には多くの未解決課題があるが、そのことはあまり議論されていない。
 気候変動対策の費用対効果を試算した米国政策提言フォーラム(AAF)は
「差し迫る気候変動危機のためにはコスト度外視で対応するべき、との議論があるが、気候変動だけが危機ではない。政策立案者は、費用対効果を考えて政策を決定すべきだ」
「米国グリーンニューディール政策の費用は効果の数倍にもなる」
と語っている。
 またマッキンゼーは、地球の温度上昇を1.5度以下に抑えるシナリオ実現には、2021~2050年までに総額275兆ドル、年間平均支出は世界国内総生産(GDP)の約7.5%と試算した。樹脂原料のナフサやアスファルトも原油から製造され、その過程でガソリン、灯油や軽油も一定割合で製造されてしまうが、無害化処理技術がないため、有効活用する必要がある。
 再生可能電力は不安定なエネルギー源であり、水力、原子力等の安定した電力で補完しなければならない。太陽光パネルや風車は製造時にCO2を排出し、その寿命は20~30年だが、リサイクルや廃棄に関する規制がない。
 さらに、太陽光パネルの製造は中国、風車の製造は中国、欧州、米国に集中し、日本の産業振興にも雇用の増加にもほとんど寄与しない。しかも2050年までは、高額な再エネ賦課金を払わなければならないのだ。
COP26で署名しなかった日本メーカー

© Merkmal 提供 今日の石油産業(画像:日本石油連盟)
 新興国の炭素中立化は、先進国の10~20年遅れを目指している。2026年には欧州で「炭素国境調整」が始まるが、対象は鉄鋼、セメント、アルミニウム、肥料、電力に限られる。ESG投資についても客観的な判断基準がなく、脱炭素への偏重がイノベーションを阻害し、経済全体の発展を阻害している。
 植物はCO2を吸収して成長するため、植物由来の燃料や原料は炭素中立と扱われる。CO2回収・貯留も同じ考え方で、排出したCO2を、貯蔵あるいは再利用して大気中には放出しない技術だ。国際エネルギー機関(IEA)は、CO2削減の現実的な手段として期待している。日本に残された脱炭素ビジネスのチャンスだ。
 国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)では、
「主要市場で2035年、世界全体では2040年までに、全ての新車販売をBEVなどゼロエミッション車にする」
という共同声明に、フォルクスワーゲン、BMW、ルノー、ステランティスと、全ての日本車メーカーは署名しなかった。
脱炭素で誰が得をするのか

© Merkmal 提供 世界のエネルギーセクターのためのロードマップ(画像:IEA)
 英国ジャーナリストのルパート・ダーウォール氏の著作『緑の専制』によれば、多くの環境NGOは気候産業複合体の「突撃隊」であり、メディアと同様「責任を伴わない権力」を行使するという。
 また、「SDGsの不都合な真実 「脱炭素」が世界を救うの大嘘」(宝島社)で、東京大学の有馬純特任教授は、脱炭素で誰が得をするのかを下記のようにまとめている。
・公的補助金の誘導
・環境NGOの活動資金
・環境意識の高い富裕層が免罪符として資金を提供
・学者の研究資金獲得
・メディアの視聴者と購読者の増加

としている。筆者はこれに、
・太陽光パネルやレアアースでもうける中国
を付け加えておきたい。総額275兆ドルの一部はこれらに消えてゆくのだろう。
 野心的な努力目標が必達目標にすり替わらないよう、国民は政治を監視する必要がある。
・バッテリー電気自動車(BEV)に魅力を感じ、自宅に充電設備を設置できるなら買って夜間に充電し、そうでなければハイブリッド車(HEV)やエンジン車で省燃費運転する
・都市部では、健康増進も兼ねて公共交通機関、自転車、徒歩で移動する
・再エネを補完するベース電力ミックスが確定・実現するまで、オール電化は避け、停電のリスクを減らす
など、自国の事情にそぐわない他国からの要求には、正々堂々と対処することが政治の責任なのだ。