Shinzo-Returns

安倍総理の志は死なない!!

残念な安倍元首相の不在 台湾問題「場合によって武力侵攻の可能性」と習主席が明言も 米専門家「漫然とよい方向に進むこと願う」日本へ憂慮

安倍元首相を失い、日本の政治は国民を守り切れるのか
安倍晋三元首相なき日本が心配だ。そう考えているのは、心ある日本国民だけではない。
米ダートマス大学准教授のジェニファー・リンド氏は、外交専門誌『フォーリン・アフェアーズ』に、「安倍ビジョンと東アジア安全保障」との論考を寄せ、次のように指摘している。
「(安倍氏は)安全保障議論を進めて国を導くことのできる、知的枠組みと政治的洞察力を備えた数少ない指導者だった」
そして、安倍氏なき後の日本に対して、次のように憂慮している。
「市民も多くの政治家も国内問題に気をとられ、中国がますます支配力を強めるアジアで(具体的な手を打つのではなく)漫然とよい方向に進むことを願っているにすぎない。日本人が、このまま状況を見過ごすことを選択する可能性もある」
いずれの指摘も正鵠(せいこく)を射ている。安倍氏なき日本で議論されているのは、ほぼ旧統一教会(世界平和統一家庭連合)問題である。新聞を読んでも、テレビを見ても、「統一教会」「統一教会」と報じている。
旧統一教会の問題行為を批判することが悪いとはいわない。霊感商法や多額の寄付、悲惨な2世信者の問題について議論することは重要だ。だが、日本の問題は旧統一教会の問題だけなのか。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、ウクライナ侵攻を命じたことは大きな衝撃だった。暴力による現状変更を、国連安全保障理事会の常任理事国が断行したからだ。多くの日本国民もこうした侵略に慄然とし、激しい憤りを感じた。あの憤りはどこに消えてしまったのか。ウクライナ侵攻はいまだに解決していないのだ。もう忘れてしまったのか。
目をアジアに転じてみれば、日本にとってより深刻な問題が存在する。台湾問題だ。安倍氏は「台湾有事は日本有事であり、日米同盟の有事でもある」と喝破し、日本がわがこととして対応すべきであると説いた。
では、この台湾問題はすでに解決したのか。逆である。むしろ深刻度は増している。
中国では16日、5年に一度の共産党大会が始まった。大会で習近平総書記(国家主席)は次のように述べた。
「最大の誠意と努力で平和的な統一を堅持するが、決して武力行使を放棄せずあらゆる必要な措置をとるという選択肢を残す」
端的に言えば、「場合によっては武力侵攻の可能性がある」と世界に向かって明言しているのだ。
軍事拡張を続け、武力侵攻もいとわないと公言する中国と、いかに対峙(たいじ)していくのか。国内問題を軽視するつもりはない。だが、累卵の危うき(=積み上げた卵のように、非常に不安定で危険な状態)にある、わが国の平和をいかに守り抜いていくのかを真剣に考えなければならない。
安倍氏の不在は、返す返すも残念でならない。
■岩田温(いわた・あつし)1983年、静岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、同大学院修士課程修了。大和大学准教授などを経て、現在、一般社団法人日本歴史探究会代表理事。専攻は政治哲学。著書・共著に『偽善者の見破り方 リベラル・メディアの「おかしな議論」を斬る』(イースト・プレス)、『エコファシズム 脱炭素・脱原発・再エネ推進という病』(扶桑社)、『政治学者、ユーチューバーになる』(ワック)など。ユーチューブで「岩田温チャンネル」を配信中。