Shinzo-Returns

安倍総理の志は死なない!!

デフレの追い風はもう終わった、習近平3選で中国は「北朝鮮」になる 脅威は経済でなく、ミサイルぶっ放し

本当に毛沢東を超えるのか
10月16~22日まで開催された第20回党大会共産党大会閉幕の後、習近平氏の「3選」が確定した。
石平氏の10月24日公開記事「これは毛沢東を超える皇帝独裁体制だ、習近平3期目最高指導部人事」に詳しいが、この「3選」によって少なくとも表面的には「習1強」体制をさらに固めたと解釈されている。
確かに、「共産党内の政治力学」だけを考えれば、この解釈は正しい。だが、中国国内の共産党員は1億人弱であり、14億人とされる人口の7%ほどだ。もちろん、共産党員が「特権階級」として国民を牛耳っているのであるが、それは清朝において少数派の満州(女真)族が、多数派の漢民族を支配したのと同じ構図である。
また、習近平氏は「毛沢東超え」を目指しているようだが、そこまでの大物であろうか?
毛沢東は、8000万人(西側推計)もの国民を死に追いやったという観点からは、アドルフ・ヒットラーや、ヨシフ・スターリンと並び称される人物であり、西洋社会での評判は芳しくない。
だが、中国ではいまだに「革命の父」、「建国の英雄」として称賛される存在だ。現代中国においては、第一級のカリスマの地位を維持しているといえよう。
中国において毛沢東がこれほどまでに讃えられるのは、「欧米植民地主義」から解放し、「中国を中国人(漢民族)」に取り戻したとされるからだ。簡単に言えば、「欧米列強に蹂躙されるよりも、毛沢東独裁の方がましだ」と思っているということである。
中国共産党は国際政治に長けているから、現在の「国際社会」の支配者である欧米に対する批判は控えめだ。しかし、第2次世界大戦の敗戦国である日本に対しては、あること無いこと、遠慮会釈なくバッシングを続けている。
だが、中国人が本当に憎んでいるのは日本ではなく欧米諸国ではないだろうか。
皇帝と宦官
その典型例がアヘン戦争である。この戦争は、簡単に言えば、英国から輸出されていた麻薬(アヘン)が中国社会に多大な悪影響を与えていたことが始まりだ。輸入を禁止し、英国商人の保有していたアヘンを没収したことに逆切れした英国政府が中国を侵略したのである。したがって、どのように考えても理不尽な「侵略」の結果奪われた香港を取り返すことは、共産主義中国にとって悲願であった。
このように歴史を振り返ってみると、習近平氏が、「中国を解放」した「革命の英雄」である毛沢東を超えるとは思えない。カリスマ性も人気もはるかに劣る。
また、改革開放によって中国を繁栄に導いただけではなく、香港返還の道筋をつけた鄧小平と比べても実績面でまったく太刀打ちできない。むしろ、ゼロコロナ政策やアリババを始めとする有望な民間企業つぶしなどで、中国経済を破壊していると言える。
それでは、なぜ習近平氏が冒頭で述べた権力を獲得できたのか。それは法律や共産党という組織をフルに活用した「権謀術数」によるといえよう。
中国大陸の歴史で言えば、毛沢東は秦の始皇帝に代表されるような暴君(皇帝)である。それに対して、習近平氏は宮廷内の「権謀術数」によって、皇帝さえしのぐ権力を掌握した宦官だといえるのだ。
つまり、習近平氏を「皇帝を目指す宦官」であると解釈すると状況がよく理解できる。そして、「宦官が皇帝になれるのか」という疑問も浮かんでくる。
国民を洗脳できるか?
大躍進、文化大革命のような一種の「狂気」ともいえる政策を毛沢東が推進できたのは、共産主義中国建国の1949年に冷戦がすでに始まっており、「竹のカーテン」によって外部からの情報が遮断されていたことが大きな理由の一つだ。
「洗脳」するためには外部からの情報を遮断し「同じことを繰り返し吹き込む」ことが重要だが、まさに文化大革命はそのようにして実行されたといえよう。
だが、現在はいくら中国共産党が鬼のような検閲を行っても、ネット社会であることには変わりが無い。習近平氏が毛沢東時代のように国民を「洗脳」するのは簡単ではない。
さらに、毛沢東時代は、欧米による蹂躙から解放されたばかりで、元々貧困にあえいでいた。北朝鮮よりもはるかに貧しいとされていたほどだ。だから、貧しさや国内の混乱にも国民が耐えることができた。
だが、改革開放の成功によって「バブル」と形容できる豊かさを経験した現在の中国人はどうであろうか。習近平氏のイデオロギー優先路線によって、「再び北朝鮮のように貧しく」なることを受け入れることができるとは考えにくい。
インフレは中国への暴風雨だ
2021年10月2日公開「これは習近平の経済自爆戦術か、行き着く先は巨大な北朝鮮」で述べたように、最近の習近平氏の経済政策はまさに「自爆」と形容するのがふさわしい。
そこにやってきたのが、昨年11月30日公開「習近平ですら吹っ飛ぶインフレの脅威…2022年、世界『大乱』に立ち向かう7つのポイント」で述べたような世界的インフレである。
このインフレがどれほどすさまじいものであるのかは、「大原浩の逆説チャンネル<第2回・特別版>安倍元首相暗殺事件と迫りくるインフレ、年金・保険破綻」14:49頃「インフレの中で年金・健康保険が破綻する?」などを参照いただきたい。
2019年5月29日公開「世界経済低迷の最大原因・中国が退場すればデフレが終わる」で、過去のデフレの大きな原因が共産主義中国であることを述べた。
もちろん、日本を含む世界中のほとんどの国がこのインフレの打撃を受けるのだが、過去デフレで潤ってきた中国は、その中でも最大の悪影響を受ける国の一つである。
食糧危機も?
7月19日公開「結局、『グローバル化』で大企業がやっていることは『中抜き』で勤労者を疲弊させ儲けるだけではないか」で述べた「中抜き」という手法で、「デフレ輸出国」の中国の支配層は汗水たらして働く国民の上前を撥ねて十分儲かったのである。
だが、インフレに転換した現在では「輸出国」としての中国のメリットは乏しい。エネルギ―効率、材料の歩留まりが悪い中国で生産することは、多少人件費が安い(現在の中国の給与水準はかつてほどの激安ではない)事ではカバーできずむしろマイナスだ。
また、燃料費の高騰で「輸送」にコストがかかるため、「中国で生産して輸出する」モデルの維持も難しくなった。コスト面もさることながら、船舶などの輸送手段の手配が難しくなり、「欠品」などのリスクも高まるから、日本を始めとする先進国での国内生産回帰の流れをとどめることができないであろう。
さらには、米国の中国への「半導体規制」に代表されるように安全保障上の問題も、輸出に頼る中国経済には大きなダメージを与える。
その上、経済が落ち目になれば、現在危機が迫っている食糧問題においても苦境に立たされる。2021年11月6日公開「食糧危機は中国から始まる――14億人の民を誰が養えるのか」で述べたように、歴史的に飢餓の惨劇を繰り返し、現在でも14億人もの人口を養わなければならない中国の食糧安保は脆弱だ。
経済混迷によって現在は充分あるとされる外貨が失われれば、価格高騰を続ける食料を輸入するのが難しくなる。実のところ、現在の外貨準備が本当に存在するのかどうかを疑問視する声もある。
「共産党発表」の数字が信頼できないことには定評があるが、中国恒大のドル建て債券の償還を共産党政府が積極的に支援しなかったのは、(本当はすぐに使える)外貨準備が充分存在しなかったからともいわれる。統計上存在するはずの外貨が、蓋を空けたら煙のように消えるというようなことは、最近でも共産党大会中のGDP発表を突然取りやめにした政府であれば十分あり得る。
独裁と戦乱の繰り返しが中国大陸の歴史である
中国大陸での歴史を振り返ると「『独裁』か『戦乱』か」の二者択一を繰り返してきたといえよう。
多くの中国人の本音が「習近平独裁はちょっとね……でも戦乱よりはましだから……」というのもうなずける。
だが、秦の始皇帝はもちろんのこと「戦乱よりはまし」であるはずの多くの皇帝による「独裁」も、耐えかねた国民の反乱によって消滅してきた。
特に、前述の「宦官型」である習近平氏の権力基盤は危うい。
だからこそ、これからより一層イデオロギーで国民を締め付ける可能性が高いと考える。
台湾進攻はあり得るか
普通に考えて、世界最強の米軍と真正面から敵対するメリットが習近平氏には無い。だが、(実際の)権力基盤が弱いからこそ、無謀とも考えられる挙国一致を演出するための「台湾進攻」のリスクが高まったといえよう。
ただし、通常兵器だけによる侵攻という可能性はそれほど高くは無いと考える。バイデン民主党政権がロシアを口汚くののしりウクライナに巨額の軍事支援を行っても、米国自身が直接参戦しないことを習近平氏はよく知っている。もちろん、バイデン民主党政権だけでは無く、NATO加盟国も「核戦争」を望んでいないからだ。
したがって、習近平氏が台湾進攻を行うときにも「核の脅し」は当然行われると考えるべきだ。
現在、約5500の米国、約6200のロシアに比べて中国の核弾頭保有数は約350である。だが、それでもフランスを追い越して世界第3位だ。また、中国は、NPT(核兵器の不拡散に関する条約)加盟核兵器国の中でほぼ唯一、弾頭数を増やしている国である。
プーチン氏による核の使用はもちろん恐ろしいが、台湾統一に関して習近平氏は、「最大の誠意と努力で平和的な統一を堅持するが、『決して武力行使を放棄せずあらゆる必要な措置をとるという選択肢を残す』」と共産党大会で述べている。
もし、武力行使を行うのであれば当然「核の脅し」を使うと考えられる。
日本で防衛費がGDPの2%に引き上げられる方向にあるのは喜ばしいことだが、それだけでは中国の侵略を阻止することはできない。日本も「専守防衛」の精神に則って核兵器の保有を目指すべきである。
悲しい現実だが、現代社会においては「核兵器」こそが、戦いを避けるための「最強の防衛装備」なのだ。