Shinzo-Returns

安倍総理の志は死なない!!

衰退しかないロシアが最後にすがる、「西」vs「南」の世界対立構図はこれだ

このウクライナ戦争によって西側諸国はウクライナ支援に廻り、対ロシア制裁やロシア自身の戦略によって、世界的なエネルギー、穀物の需給バランスの混乱が起きている。それでは戦争が何らかの終息を迎えたとき、世界はそれ以前の状態に戻っていくのであろうか。それはないだろう。世界の分断は恐らく固定化する。そしてその要因となるのは、戦後のロシアのあり方であると考える。
長期的な視点に立つと、ロシアがこれから国力を回復する事があるとは思えないし、間違いなく衰退の道を歩んでいくことになる。
だが、問題はそれが急速なものか、なだらかなものかなのだが、制裁をかけている西側は急速な衰退を期待したが、その点では中国がエネルギーや食料を買うことで支えてしまっており、そうはならない。これは、ウクライナの戦場での西側の支援の性格とも似ているが、世界各国ともロシアのおかげで世界の秩序が壊滅的な崩壊を来すことだけは、つまり第3次世界大戦だとか世界経済の破綻だとかギリギリ避けたいと考え、ある一線で踏みとどまっているとしか言いようがない。
ただこのまま戦争が終結したとしても、西側諸国が、エネルギーや穀物といった物資を使って戦略的な脅しをかけ続けたロシアに、今後、このような重要物資の供給を依存することはあり得ないし、軍事転用可能な技術の輸出も許すことは考えられない。
そこでロシアに残された道は、多分、緩やかに中国のジュニア・パートナーになっていく、ということだろう。北朝鮮化、あるいはイラン化である。
それに加え、アフリカ、中東などの途上国、つまりグローバル・サウスを、食糧やエネルギーの供給元となることで影響力を保持し、取り込んでいくことだろう。
ロシアはこの2つの軸に寄りかかるしかないと見るべきだろう。
衰退ロシアの人工呼吸器
グローバル・サウスだけが、ロシアに対して人工呼吸器になり得るかもしれない。特に食糧の問題というのは、中東、アフリカは結構深刻で、今後ますます大きくなってくるからだ。
ロシアは今のところ、この点で、中東、アフリカに大きな利害関係を持っている。小麦、そして肥料だ。化学肥料というのは、製造のために、結局のところ電力を大量消費する。脱炭素に舵を切っている西側では、増産を期待できない。その点、ロシアの化学肥料産業を中東諸国などは、むしろ取り込みに入るのではないかと見ている。今後、彼らの方からロシアに投資をするなどの動きも十分にあり得る。
さらにロシアの今後を考える場合、中長期には中国がどういう行動をとっていくかが焦点だ。
中国はアメリカとの良好な関係は、もう無理だが、まだヨーロッパは、中国に対して一抹の期待を持っているのではないだろうかとみている。それは、昨年11月のドイツのショルツ首相の中国訪問などに典型的に現れている。ショルツは習近平への手土産として、ハンブルグ港のオペレーション権の許可まで用意していった。中国からしてみると、米欧関係を分断して、ヨーロッパをまだもう少しこちら側に取り込めることが出来ることになる。
中国がアメリカに対していい顔したいがためにプーチンを斬ったところで、米中関係の本質的な矛盾には何の影響も無い。だからここを見誤ると、中ロ関係を見誤ってしまう。中国からしてみると、今の状況がいいのだ。ロシアがますます中国に依存度を深めていく、この状況自体が、習近平にとっては何の問題も無い。
アメリカとの戦略的な競争関係を見てみると、アメリカが、食糧、エネルギーとも世界最大の輸出国であるのに対し、中国は、エネルギー、食糧とも自給できない国だ。当然、ロシアという、エネルギー、食糧の供給源として生きて行かざるを得ない国で、しかもそこから中国への輸送路がアメリカに抑えられていない国が、中国の国力、経済力に頼ってくるというのは願ってもいない事なのだ。
ロシアからすれば、中国であるとか、中東であるとか、アフリカであるとかの、食糧、エネルギーの需要先とグループ化し、それなりの影響力を維持することで、かろうじて、自分は大国だと言い続けられるような形を取り続ける形をなんとか作る。中国もその辺は、なんとかやらせてあげるわけだ。
以前よりは半分ぐらいに減っているが、ロシアは国外から半導体を輸入し続けている。その主なルートは、中国と香港だ。
グローバル・ウエストvsグローバル・サウス
今の事態は、単にウクライナで終わるものではなく、新しい秩序に向けた戦いなのだと思う。西側の制裁は制裁として効いてはいるし、ロシアがこれまでのように戦略的自立性を維持しながら、大国として繁栄するという道は、多分もう無い。ただ、ロシアが完全にダウンするということも無いのだと思う。
ロシアにとってみれば、西側、つまりグローバル・ウエストと、自らが影響力を残しているグローバル・サウスの対立が深まれば深まるほど、自らの足場は確かなものになる。
しかし、それを可能にするには中国という生命維持装置が必要になる。最後の最後は中国がどこまでロシアの面倒を見るかだ。グローバル・サウスがパワーとして形作られるには、やはり中国がまとめるしかない。そこにロシアがパートナー的に組んで、アメリカと対峙していくしかない。
もちろんグローバル・サウス諸国が、中国、ロシアとだけ付き合うと言うことはない。アメリカや、西側とも付き合っていくだろう。しかし、局面、局面において、中国やロシアを完全に追い込まない立場をとっていく可能性は十分ある。
そして、国際社会では、このような第3極の影響力、発言力がこれからますます高まると思う。世界に絶対的な秩序の支配者は存在しなくなった。アメリカはもはやそういう立場ではない。中国もアメリカに取って代わることは出来ないだろうが、アメリカの秩序に完全に呑まれたくないと思って動いているのは間違いない。
ウクライナの戦争の帰趨が持つ問題は、どちらが勝つか負けるか、ということを超えて、それがいつどのような形で終わるにせよ、その過程でその後の世界の態勢をどのように方向付けるかに重要度がある。
ロシアが予想以上に疲弊し、国際社会から疎外され、中国も手を出しようがなくなるか、また、西側が長期化の支援疲れで分裂してしまうか、前編で説明したように全く極端な結果に陥らないよう落とし所を探られていくだろうが、それでも何が起こっても不思議ではない。
第1次世界大戦100年後の新たな崩壊
大局的に、このグローバル・ウエストとグローバル・サウスの対立へと向かう局面を考えると、その転換点は、2013年から14年に向かうあたりにあったのではないかと思われる。もうちょっといえば、2008年から9年にかけてのリーマンショックがあり、それ以前からのイラク侵攻の後始末の問題もあり、アメリカはもはや世界の警察官ではないとオバマ大統領が言ったのが2013年の秋で、翌2014年2月にクリミア侵攻が行われた。これが国際秩序を崩壊させる現在の戦いのきっかけとなった。
2014年というのが今のプロセスの始まりと見るとすると、第1次世界大戦勃発のちょうど100年後となる。あのときに崩れ去った世界秩序が、第1次世界大戦をへて、さらに第2次世界大戦をへて、アメリカが圧倒的に勝つことで、もう一度立て直し、国際連合も設立され、なんとか維持されてきたが、今や国際連合を中心とした秩序そのものが機能しなくなってきている。要するに100年後にまた秩序が崩れ始めたのだ。
その前後に中国が一帯一路を打ち出したという流れもある。2010年に中国は名目GDPで日本を抜いて、世界2位の経済大国になっている。
そしてその流れを決定づけたのが、今回のウクライナ戦争ということになる。
この局面を日本は深刻に考えるべきだ。ロシアが中国のジュニア・パートナー化するということは、東アジアで台湾危機のように、日米と中国が対立する際に、ロシアが中国側について行動する可能性が高くなる事を意味する。
すでに中露の空軍や海軍が日本周辺で共同パトロールを実施している。今後、ロシアが中国のジュニア・パートナーと化していく中で、日本周辺での実際の戦闘や軍事的威嚇でも両国が共同歩調を取る可能性は排除できない。
日本にとっても第2次世界大戦終結後の秩序に頼れない事態が、目の前に突きつけられている。その意味でウクライナ戦争は決して地球の裏側の出来事ではないのだ。