Shinzo-Returns

安倍総理の志は死なない!!

「小売自由化すれば光熱費が下がる」はウソだった

都市ガス料金の値上がりが続いている。国際大学の橘川武郎教授は「天然ガスの大半を輸入している日本では、国際的な天然ガス価格に翻弄されてしまう。熱供給を化石燃料(天然ガスや石炭)の呪縛から解き放つには、セクターカップリングの導入が必要だろう」という――。
ここ2年間で都市ガス料金は凄まじく上昇
現在、日本では電気料金やガス料金の上昇が、大きな社会問題になっている。今年1月の使用分(2月検針分)からは、政府による電気代・ガス代への補助金支給も行われるようになった。
都市ガス料金の毎年1月における全国平均値の推移(図表1)を見ると、2015年が7250円、16年が6521円、17年が5939円、18年が6220円、19年が6628円、20年が6473円、21年が5876円、22年が6743円、23年が8905円となる。この図表から、ここ2年間の上昇ぶりがいかに凄まじいかが、よくわかる。
日本では、電気事業に1年遅れて、都市ガス事業についても、17年4月に小売全面自由化が実施された。家庭用市場も含めてガス供給事業者間の競争は激化したが、図表1からわかるように、17年から19年初めにかけて、ガス料金はむしろ緩やかに上昇した。20年から21年初めにかけてガス料金が低下したのは、主として、新型コロナウイルスのパンデミックによる需要減によるものであった。
「自由化すれば料金が下がる」はウソだった
電気にしてもガスにしても、しばしば自由化すれば料金が下がると言われるが、それは謬論である。火力発電の比重が高く、天然ガスや石炭の大半を輸入する日本では、電気料金やガス料金の水準を決定づけるのは、自由化で活発化する企業間競争のあり方ではなく、国際的な天然ガス価格や石炭価格の動向なのである。
最近では国際的な天然ガス価格は、16~18年に上昇したのち、19~20年に低落し、21~22年に急騰するという推移をたどった。
21~22年に急騰したのは、コロナ禍が一段落したことによる需要の回復、カーボンニュートラルへの流れが強まる中でのガス田開発の停滞などによって天然ガス価格が上昇に転じたところに、22年2月にロシアの侵略によってウクライナ戦争が勃発し、世界的に天然ガスの需給逼迫(ひっぱく)が深刻化したからである。
わが国における都市ガス料金の変化は、基本的には、国際的な天然ガス価格の動向によって決定づけられると言っても、間違いではあるまい。
そんな中、話題となっているのは、千葉県茂原市周辺のガス料金である。大多喜ガス(茂原市)が地元で採取される天然ガスを活用して供給しているため、料金の変動が少ないうえに、東京都内と比べて6割程度の料金に抑えられているというのだ。
しかし、残念ながら、20年度におけるわが国の天然ガスの輸入依存度は、97.9%に達する。国産天然ガスの「ご利益(りやく)」にあずかる国民は、ごく限られているのである。
このような事情から、日本においては、都市ガス料金の値上げに対して有効な対策を講じることは難しい。しかも、都市ガスの場合には、電気と比べても対策を困難にする独特の事情がある。
現在、旧一般電気事業者10社のうち7社が料金値上げを申請し、その審査が行われている。つまり、3社は値上げを申請していないわけであるが、それは、関西電力、九州電力、および中部電力である。
これらのうち関西電力と九州電力については、複数の原子力発電所を再稼働させており、火力発電のウエイトが低いことが値上げ回避の理由だとされている。要するに、電気の場合には、原子力や再生可能エネルギーを使って火力発電と異なる形で供給を行えば、天然ガス価格や石炭価格の急騰の影響を減じることができるのである。