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安倍総理の志は死なない!!

八幡和郎「安倍遺産」 安倍元首相は「日本のドゴール」のような存在に 立場の違う人々とも対話、保守だけでなくリベラルからも評価

国民的人気が高かった安倍元首相© zakzak 提供
「日本のドゴール」のような存在に、安倍晋三元首相にはあってほしい。生前の安倍氏は、世界各国の世論調査でも、昭和天皇を上回る知名度を獲得した。日本にようやく出現した、世界の人々から顔が思い浮かべてもらえるリーダーだった。
フランスのシャルル・ドゴール元大統領について、フランス人が持つイメージはさまざまだ。「ナチスと戦ったレジスタンスの指導者」「第五共和国の創立者」「冷戦時代に独自外交を守った愛国者」「欧州統合の基礎をつくった人」などである。
保守本流団結のシンボルとして機能し、旧ドゴール派である共和党が大政党としていまも存続することを可能にしている一方、リベラルな人にとっても評価せざるを得ない英雄であり続けている。安倍氏にも、そういう存在になってほしい。
自分にとって安倍さんはこうだというのは、誰にもある。だが、それは一面にすぎない。相手によって発言のニュアンスは違った。
安倍氏は「保守派の愛国者」として軸はしっかり持っていたが、同時に立場の違う人々との対話もできた。
だから、バラク・オバマ元米大統領や、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領、中国の習近平国家主席すら「安倍氏と会ってよかった」と感じ、それが日本の外交を支えた。
これから、安倍氏の薫陶を受けた人たちは、安倍氏の言葉を常に振り返りつつも、「安倍イズム」の多様な発展の可能性を封じてはならない。その2つの流れが、バランス良く共存することを願う。
特に、経済政策は、そのときどきの状況に応じて君子豹変(ひょうへん)も必要な分野だ。専らデフレに悩んでいた時期の安倍氏の発言を金科玉条にすべきでない。
私は、そもそもマクロ経済の専門家は、「総需要の確保」とか「財政均衡」とかいう数字にこだわり過ぎで、財政資金の効率的な使用をもっと重視すべきだと思う。
安倍政権も褒められたものでないが、岸田文雄政権になってますます財政資金をアメとするのに頼りすぎだ。
いま話題のマイナンバーカードの普及と保険証との一体化は、経済発展、財政健全化、IT社会の発展など、あらゆる意味で不可欠だ。保険証は写真がないので、不正な「なりすまし受診」がやり放題だ。身分証明書代わりにも使われている現状は、安全保障上も論外である。少なくとも写真付きの新しい保険証に移行すべきだが、それなら一体化した方が早い。
大事なことを実現するとき、国民に媚びて任意の勧奨とマイナポイントなど「アメ」だけでは非効率だし限界もある。強制と罰則という「ムチ」も使うべき時は勇気を持って使うことこそ、増税を避けつつ経済を発展させる王道だ。
=おわり
■八幡和郎(やわた・かずお) 1951年、滋賀県生まれ。東大法学部卒業後、通産省入省。フランス国立行政学院(ENA)留学。大臣官房情報管理課長、国土庁長官官房参事官などを歴任し、退官。作家、評論家として新聞やテレビで活躍。徳島文理大学教授。著書・共著に『安倍さんはなぜリベラルに憎まれたのか―地球儀を俯瞰した世界最高の政治家』(ワニブックス)、『日本の政治「解体新書」世襲・反日・宗教・利権、与野党のアキレス腱』(小学館新書439)、『民族と国家の5000年史』(扶桑社)など多数。