Shinzo-Returns

安倍総理の志は死なない!!

緊縮財政と株主資本主義が公共交通インフラを劣化させ、破壊する

From 室伏謙一
  @政策コンサルタント
   /室伏政策研究室代表


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 6月20日の夕方から、山手線等の首都圏の主要鉄道線が最大で4時間運転を見合わせ、非常に多くの人々に影響が出ました。原因はと言えば、JR東日本の渋谷変電所の送電ケーブルの損傷による漏電とのこと。なぜ損傷したのかについては現在原因究明中とのことですが、こうした大事故はかつてであればあまり聞いたことないものですよね。


 確かに、10年以上前、運搬船が送電線を切ってしまったことで首都圏が大停電したということがありました。朝の通勤時間帯だったこともあり、その影響は極めて甚大で、私が当時住んでいた家の最寄駅への行列にバス停への行列、さらにはしばらく電車やバスには乗れないと諦めた人たちの喫茶店への行列と、とにかく人が溢れかえっていたのを鮮明に覚えています。


 しかしこれは、あくまでも運搬船の不注意によるものであり、かつ送電線が切れてしまったことによるものですから、交通事業者の問題ではありませんし、彼らが責められる話でもありません。


 一方今回の一件は、JR東日本の変電所での事故が原因です。したがって、これはJR東日本の責めに帰すべきものである、JR東日本の不注意だ、怠慢だ、となりそうなところですが、私は必ずしもそうは考えません。まだ原因は究明中であり明確な送電ケーブル損傷の原因は分かっていないということを承知の上で、この一件がもたらした教訓的なものについて述べたいと思います。


 公共交通は単に人や荷物を運ぶというのみならず、運んでいる間、到着を待っている間等において、乗客の命を預かり、安心安全に目的地まで運び届けるという使命を負った事業者であると言えます。(そのための必要な規制も設けられていますが、本稿ではそこは立ち入りません。)


 したがって、車両やインフラ、施設等の点検や安全確認は極めて重要な任務であり、そのために必要な人員を雇用し、技術を習得させ、向上させていくことが必要です。そのためには、人の命を預かり、安心安全を保証できる体制を維持していくためには、それ相応の人件費や維持管理コストがかかるのは当然です。つまり、お金が必要になるわけです。


 しかし、それら全てを事業収入から賄うというのは容易ではありません。したがって、公共交通事業者は、不動産や商業施設の運営等の様々な関連事業に手を出してなんとか企業全体として、グループ全体としての経営をなんとか成り立たせているわけですが、このことは端的に言って、公共交通という事業を全て民間任せにしてしまう、民間事業者の独立採算にしてしまうのは、無理があり、望ましい話ではないということをも意味していると思います。


 そこで、国の役割、特に財政支出による支援が重要になってくるわけですが、まだまだ緊縮財政脳が支配するこの国では、バリアフリー化にまで事業者負担に加えて利用者負担を求めろと、国土交通省が本気で検討を開始するような始末です。


 しかし、公共交通事業者を苦しめているのはそうした緊縮財政だけではありません。JR東日本のような大手の事業者は株式市場に上場していますから、その経営の在り方については当然株主からの影響を受けます。昨今の株主の大きな興味関心は配当であり、経営への影響力の行使はその観点から行われますから、人件費や設備投資を中心にコスト削減が求められます。


 結論を急げば、今回の一件、こうした株主資本主義の進展による過剰なコスト削減が原因なのではないでしょうか。すなわち、人件費削減のため必要な人員も削減するとともに、設備の維持管理費も削減し、最良の状態で維持管理ができなくなったために起こったのではないかということです。分かりやすい例で言えば、これはJRではないですが、東京メトロでは、駅員の代わりに警備員がホームに立って声を出していますよね。あれは社員である駅員を削減し、代わりに外注の警備員を配置することで大幅なコスト削減につなげようというものですね。


 別に乗客の命や安心安全を軽視しているというわけではなく、公共交通事業者は大手であってもそこまで追い詰められているのではないかということです。


 そこに新型コロナショックによる乗客の大幅減で大幅減収。更に軸なしで右往左往する政府や首長に減便や終電の繰り上げを求められ、更なる減。しかし粗利補償等の財政支援はしないわけですから、まさに「身を切る」しかなくなってしまうわけです。


 繰り返しになりますが、そうしたことのまさに悪影響が今回の一件だった、そう考えると腑に落ちるのではないでしょうか。そして、今回の一件の原因、直接的には送電ケーブルの損傷ですが、そこに至らしめた最大の原因は、緊縮財政と株主資本主義を推し進め、困窮する交通事業者にマトモな支援もしない政府である、ということです。


 皆さんよくよくこのことをご認識の上、JRを責めるのではなく、菅政権、財務省、国交省の責任を追求していくのが筋だと思いますよ。