Shinzo-Returns

安倍総理の志は死なない!!

「グローバル人材」の作り方

From 施 光恒(せ・てるひさ)
    @九州大学



こんにちは~(^_^)/(遅くなりますた…)


7月1日に報じられていましたが、菅義偉首相が千葉県八街市で起きた、小学生の男女5人が死傷した交通事故(6月28日に発生)の現場を視察したというニュースがありました。
(「首相「悲しく痛ましい」 千葉・八街事故現場で献花」『朝日新聞デジタル』2021年7月1日配信)
https://www.asahi.com/articles/ASP7163RDP71UTFK00M.html


首相が交通事故現場を視察するのは珍しいので「なぜかな…」と思っていたのですが、公立の小中学校へのスクールバス導入の議論につなげたかったからのようですね。


昨日(2021年7月9日)、いくつかのメディアが取り上げていましたが、八街市へのスクールバス導入をモデル事業としたうえで、さらに全国規模で小中学校へのスクールバス導入を検討していくということでした。
(「千葉・八街5人死傷 臨時スクールバス、政府が支援 全国導入も検討」『毎日新聞』2021年7月9日)
https://mainichi.jp/articles/20210709/k00/00m/040/265000c


スクールバス導入自体は必要なところも多いでしょう。しかし、以前、本メルマガ記事で書きましたように、政府としてはスクールバス導入と同時に、小中学校の統廃合をさらに積極的に進めたいのでしょう。教育予算の削減を狙っているのだと思います。地域社会の荒廃がますます深刻化しそうです。
(施「スクールバス導入よりも大切なこと」(メルマガ『新・経世済民新聞』2021年6月12日)
https://38news.jp/economy/18534


さてさて、今日はスクールバスではなく別の話題です。タイトルにあるように、「グローバル人材」の育成についてです。


先日、『週刊新潮』(2021年7月8日号)に「五輪代表 海外組最多が全然喜べないワケ」という記事が出ていました。


サッカーの五輪代表18人が発表されましたが、海外のクラブでプレーする選手は史上最多の9人(前回のリオ五輪のときは2人)。これについて、一部のスポーツ紙などでは、海外のクラブで活躍する日本人選手が増え、日本のサッカーのレベルが上がった喜ばしい現象だという記事も見られましたが、『週刊新潮』の見方は違います。


「海外組といっても、チャンピオンズリーグに出るような強豪クラブは見当たりません」という某サッカーライターの言葉を引きます。そして、「日本代表は決してスター集団ではない」のであり、海外の小さなクラブに属している者も多いと書いています。


そして、日本人のサッカー選手で海外のチームに所属する者が増えた要因として次のようにサッカーライターの談話を続けます。


「海外組が増えたのは、ひとえにJリーガーの年俸が安すぎるからです。Jでは若手に億単位の年俸は払えませんが、海外なら弱小クラブであってもJの倍以上は払ってくれます」。


つまり、サッカー界でも日本の賃金水準が低いために、能力と野心のある日本の若いサッカー選手は、さほど突出した選手でなくても、海外に行くようになったというわけです。


この新潮の記事でも引かれていますが、中原玲『安いニッポン――「価格」が示す停滞』(日経プレミアシリーズ、2021年)という本が最近、よく話題になります。日本では薄給のアニメーターが、続々と中国のアニメ会社に引き抜かれ、転職しているといった話が掲載されている本です。


(この本の元になった『日経新聞』の連載について、以前の本メルマガ記事で触れたことがあります。)
(施「安いニッポン」の今後」『新・経世済民新聞』2019年12月21日)
https://38news.jp/economy/15094


実際、日本の賃金水準はデフレの中で下落が続き、今では韓国よりも低くなっています。


最近では、いわゆるキャリア官僚の東大卒の割合が過去最低になったというニュースがありました。
(「キャリア官僚」倍率過去最低に 合格者の東大出身割合も」『NHKニュース・ウェブ』2021年6月21日)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210621/k10013095601000.html


その代わり、東大卒業生の就職先の上位に名を連ねるようになったのが外資系のコンサルタント会社です。日本の優秀な若者の多くをこれらの会社が引き付ける理由の一つは、給与水準の高さです。うまく行けば、30歳前後で年収2000万円ぐらいになるところもあります。
(「日本で唯一の成長産業?知られざる“コンサル業界”に迫った」『NHK ウェブ特集』2021年6月11日)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210611/k10013078681000.html


この東大卒業生の就職先の変化の話と、さきほどのプロ・サッカー選手の話を念頭に置くと、近い将来の日本の姿が見えてきます。


日本の野心的な若者が、日本では望むことができなくなった高い賃金に惹かれて、どんどん海外に流出していく事態です。


文科省は現在、英語化のさらなる進展や「国際バカロレア」(IB)認定校を増やすなど、相変わらず「グローバル人材」の育成を目標として掲げています。(文科省は、経済界に「英語が使えて海外業務をこなすことができる人材を作れ」と尻を叩かれています)。


ですが、皮肉な言い方をすれば、文科省は別にさらなる努力をしなくても、このまま日本の賃金水準が諸外国に比べて落ちていけば、近い将来、「グローバル人材」はどんどん増えていきます。


相対的に高い賃金に引き付けられ、多くの若者が、日本を見限り、英語や中国語を熱心に学び、海外での就職を目指すようになります。生活がかかっているので、これまでと違い、若者も外国語学習に本腰を入れるようになるでしょう。


経済界や文科省がいろいろと知恵を絞っていた「グローバル人材」の最も効果的な育成法は、どうやら日本の賃金水準を下げることだったようです。


「グローバル人材」は今後、増えていきます。しかし、日本は没落していきます。


これが幸せな未来なんですかね。政府や文科省、また経済界も、何を目標とすべきか考え直す必要があるようです。


長々と失礼しますた…。
<(_ _)>