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北朝鮮がミサイル発射試験で初歩的大チョンボ

 北朝鮮は、2021年10月19日、新浦級弾道ミサイル潜水艦(SSBまたはBMS)から弾道ミサイル(SLBM)を1発発射し、このミサイルは、最高高度約50キロを変則軌道で約600キロ飛翔したと公表した。
 ミサイルの発射実験はほぼ成功した。だが、発射母体であるSSBには、大きなトラブルがあったようだ。
1.新浦級潜水艦、進水以来初の乾ドック入り
 38ノース(商業衛星を使用して、北について画像解析を専門に行う米国のシンクタンク)の情報によれば、2021年12月13日に、新浦港の東方近くの乾ドックで、水が完全に抜かれた状態でこの潜水艦が置かれていた。
 つまり、衛星からは完全に丸見えの状態になっていたのだ。
 潜水艦、特に弾道ミサイル潜水艦は、その能力を隠すために、陸上に挙げられた状態で艦を晒すことはあり得ない。2014年に新浦港に出現してから初めてのことであった。
 新浦港内の偽装網を張り巡らしているところではなく、艦を完全に晒す状態で置いたことは、特別で大掛かりな修理を行う必要があったからだろう。
 12月28日の乾ドックには、その姿はなく、新浦港に戻っていた。
 つまり、短期間で修理を行い、元の新浦港のいつもの埠頭に戻された。北としては、かなり急いで改修を実施したようだ。
2.発射後、発射管の蓋が半開きに
 北が公表した新浦級SSBや飛翔するSLBMの写真を見ると、潜水艦は浮上中であったが、ミサイルの発射管の蓋が半開きのままであった。
 半開きということは、あってはならない異常な状態である。
 発射管の蓋が半開きのままで、閉まらないということは故障したということだ。
 本来は閉まるはずなのに閉まらなかった大きな原因は、発射時に発生したものであろう。この後、作戦上どのような問題が発生するのか。
 まず、有事であれば、ミサイルを発射すると米国の早期探知衛星にその位置を発見され、通報され、日米の軍艦、特に潜水艦に追跡される。
 日米の攻撃型潜水艦の方が、移動速度が格段に速い。したがって、速やかにその位置を離れなければならない。逃げる場合には、音を出さずに静かに潜航しなければならない。
 発射管の蓋が開いていると、航行中、異常な音を発生させる。
 移動中に異常な音を発生させていると、発見されやすくなり、その結果、対潜ミサイルを撃ち込まれて、撃沈させられてしまう。
3.乾ドック入りして艦を露呈させるリスク
 新浦級SSBは、いつも新浦港の定まった埠頭に繫留されている。そこでは、上空、つまり、偵察衛星から見えないように、艦の上部に偽装網が展張されている。
 このため、艦がどのような状態にあるのか、ミサイルを装填しているのかなど、詳細が分からないようになっている。
 極めてまれに、艦の隣にクレーンがあれば、ミサイル装填の可能性の兆候と読める場合もある。
 だが、詳細な情報を入手できなければ、実際の活動は、具体的に何なのかは分析できない。
新浦港に繫留されている新浦級SSBイメージ

© JBpress 提供 以前の様子(偽装網なし)

© JBpress 提供 現在の様子(偽装網展張)、出典:38ノースの衛星画像より筆者作成
 新浦港の沖には、マヤンドという島があり、ここには潜水艦部隊があって、埠頭には、8~10隻の通常型潜水艦が繫留されている。
 これらの潜水艦は、商業用の衛星からも丸見え状態になっている。
 画像分析用の偵察衛星であれば、リアルタイムで見られており、どの艦が出港したのかが分かる。だが、新浦級SSBは上空から見えないようにしている。
マヤンドの埠頭に繫留されている潜水艦

© JBpress 提供 出典:Google Earth(2022年1月23日確認)の画像を筆者が図示
 普通では見えないこの艦が、ミサイル発射後の12月13日にドックに入れられ、その後、完全に水が抜かれ(乾ドック)、空から丸見えの状態になっていた。
 通常は、艦は偽装網によって完全に見えなくされているのにもかかわらず、このときは、偽装網は一部分だけで(CSIS情報2022年1月7日)、ドック内の水はすべて抜かれ、ほとんどが丸見え状態になっていたのだ。
 38ノースによると、艦の長さは68.6メートル±1メートル、幅6.5メートル(ROMEOクラスより約1.5メートル広い)であると判定することもできた。
 露呈された艦は、米国の画像偵察衛星(画像解析能力が10センチ以下)によって、隅々まで見られてしまった。
 発射筒の蓋が、一時的に外されていただろうから、その時点で、内部まで見られてしまっただろう。
 筒に入るミサイルの大きさ、また、その時に運び込まれた修理の部品までも暴露しただろう。
 つまり、北がミサイル発射後に行ったことから、ミサイル発射時に何が発生したのか、完全に解明されてしまったといえる。
 潜水艦は、兵器の中で最も秘匿しなければならないものだ。しかし、艦を陸の上にあげた状態にしてしまい、構造の細部を暴露してしまった。
 北は、衛星に見られることはわかっていたはずだ。艦を暴露してまでも、大がかりな修理を行わなければならなかったのには、相当な理由があったのだろう。
4.新浦級潜水艦の最大の欠点
 北は、潜水艦から空中にミサイルを射出した後に点火する「コールド・ローンチ方式」をとっている。
 この方式には、圧縮空気を使用して射出する方式と補助発射薬を使用する場合がある。
 北の方式は、各種情報を総合すると、ロシアの補助発射薬を使用したものである。
 その裏付けは、これまで発射実験用の浮桟橋を使用した北極星号の発射実験の映像にある。
 これは、圧縮空気を使ってミサイルを放出するのではなく、補助発射薬を使って、ミサイルを放出し、その直後に、補助発射薬筒を横に放出している映像だ。
 ロシアのサルマータICBMが、サイロから発射される映像を見ると、サイロから放出されると直ちに、補助発射薬筒が横にはじき出される。
 新浦級潜水艦は、これとほぼ同じ方式が採用されているようだ。
 補助発射薬を使用すると、潜水艦の発射筒が焼けてしまうために、交換が必要になる。
 したがって、新浦級潜水艦が新浦港の偽装網展張の下で、修理することができなかったのは、焼けた発射筒の交換が必要だったからである。
 加えて、ミサイル発射筒の蓋の開閉のための動力装置およびその他の修理のためだったのではないか。
補助発射薬を使用したSLBMの発射のイメージ

© JBpress 提供 出典:筆者作成
 発射筒の蓋の開閉の動力装置の修理は、改修すれば、同じ故障が再び発生する可能性は低い。だが、発射のたびに焼けて交換を余儀なくされる発射筒の交換は、毎回実施されなければならない。
 ということは、この潜水艦のミサイル発射装置を使用している限りは、1発発射するたびに、水を抜いてある乾ドックにおいて発射筒を交換しなければならない。
 新浦級潜水艦の最大の欠点だ。
5.1発のミサイルが狙うのは日韓のいずれか
 新浦級潜水艦は、1発しか発射できない。1発発射すれば、大がかりな修理とその後にミサイル1発を再装填することが必要だ。
 南侵する場合、1発発射するたびに基地に戻って、埠頭に接岸し、あるいは乾ドックに入り、大がかりな修理・整備をするなどということはできない。
 航空優勢や海上優勢を得られない北は、米韓の航空攻撃やミサイル攻撃を受けるからだ。つまり、戦争では、新浦級SSBは、1発しか発射できない。
 では、それをどこで使用するのか。
 核弾頭を搭載し、戦争終末段階の最終手段として使用することになるだろう。
 おそらく、北とロシアの海上国境付近に潜んで、米韓の攻撃を逃れ、戦争の重要な段階で、勝敗を左右する戦局に、核を搭載したミサイルを韓国あるいは日本に打ち込む可能性が高い。
 たった1発であっても、小型の核兵器が搭載されて発射され、撃ち落とすことができなければ、その被害は極めて大きい。
 もう一つ気になることがある。
 乾ドックから新浦港に戻るまでが、非常に短期間であったことだ。早々に、次の発射実験を実施する可能性がある。
SSBが日本海に進出して新型SLBM1発が狙う目標


© JBpress 提供 出典:筆者作成