Shinzo-Returns

安倍総理の志は死なない!!

「地方創生」とはそもそもは何だったか?

From 室伏謙一
  @政策コンサルタント
   /室伏政策研究室代表



 先々週の19日土曜日、九州大学大学院未来共創リーダー育成プログラム主催シンポジウム「豊かで強靭なまちづくりを目指して ― 脱・緊縮の地方創生の可能性」で、パネリストの一人として、「「改革」ではなく、国が役割を果たし、守り育てる地域再生を」と題して講演してきました。(私以外のパネリストの方々については、こちらをご覧ください。 https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/events/view/1166/ )



 ご来場いただいた方、オンラインで参加していただいた方、ありがとうございました。



 今回のシンポに引っ掛けて、地方創生というものについて少し考えてみたいと思います。



 まず、シンポジウムは、脱緊縮の地方創生というところがポイントです。現状で地方創生と言うと、緊縮が前提、地方が自分で頑張るのなら国が応援してあげるというのが基本的な仕組みですが、この考え方が始まったのは小泉・竹中構造改革の時。「民間にできることは民間に、地方にできることは地方に」という考え方の下、構造改革特別区域制度により、お金をかけずに、規制の特例措置を活用して、民間企業等と上手に組んで地域を活性化していこうというものでした。その後に、似たような制度として設けられたのが、地域再生制度ですが、こちらの方は税制優遇措置や財政支援措置も一応含まれるものです。現在の地方創生に関する施策は、後者の地域再生制度により進められてきています。



 その現在の地方創生の目玉は、何と言っても地方創生推進交付金。地域再生計画を作成、そこに計画の内容に紐付けて具体的に欲しい交付金の額を記載し、認められれば交付金が交付されて事業ができるという仕組み。安倍政権以降ずっと毎年度この原資として1000億円が措置されてきました。しかし地方に任せて自分たちで考えろという仕組みであるということもあり、一件あたり数百万円から多くても数千万円台前半程度で、具体的な事業も地域の産品を使った新商品開発や観光ルートの開発、イヴェントといった程度のものが多く、地方を本当に創生するに至るようなものはあまり見られないと言った方がいいかと思います。



 ちなみにこの計画を申請し、交付金の交付を受けることができるのは地方公共団体のみであり、小さな地公体の場合は、そもそも一事業で大きな額を動かすということをやったことがないので、金額も事業規模も小さくなりがちであるという点もあるようです。(某首長さんからそんな話を以前聞きました。)



 しかし、それ以前の問題として、この地方創生は基本的に3年間で結果を出すことが求められていますから、中長期的視野を持った事業などなかなか出来ません。これを支援する民間企業等にとってはいい儲けの機会ですから、すぐに結果が出るものに傾きがち。(勿論、ある程度の期間にわたってチャリンチャリンと出来る仕組みを3年間で構築できればいいですが、地方創生を支援するようなコンサル、シンクタンク(と言っても内実はコンサルですが)は短期で結果を出さないと評価されませんから、中長期的事業構築のための投資というのは、個別のプロジェクトベースでは困難でしょうね。)



 地方創生、地域の再生でも地域活性化でも名称はいずれでもいいですが、結局、本当に創生なり再生なり活性化なりにつながってきたのかと考えると、そうなった例はごく稀なのではないでしょうか。



 すなわち、今後地方創生なりを本気で考えるというのであれば、これまでの地域活性化施策、地域再生施策、地方創生施策の総括をすることがまず必要であると思います。(そんな話もシンポでさせていただきました。)それをせずに、失敗も成功も有耶無耶なまま、屋上屋を重ねるがごとく似たような政策を繰り返してきたことが地方の衰退に拍車をかけたのではないかと考えざるをえませんね。(ここも指摘して、処方箋の方向性についてお話ししました。20分しか時間がないので、本当に方向性しか話せませんでしたが。)



 そして、そうした総括をしてこなかったからこそ、地域を、地方を衰退させた大元は緊縮財政であるということが理解できず、緊縮を続けたまま地方を活性化しようという愚策を続ける結果となってしまったのではないかと思います。