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宅配手数料2万円、アプリで食料争奪…中国・上海の日本人が見た「ロックダウン」

中国最大の経済都市、上海で新型コロナウイルスの感染拡大が続いている。街はロックダウン状態に陥り、食料不足の地域も出てきているという。上海には日系企業の拠点が多数あり、約4万人の日本人が暮らしている。先の見えないロックダウンの下、現地の日本人たちは今どのような思いで過ごしているのだろうか。(日中福祉プランニング代表 王 青)
続く上海のロックダウン
1カ月近く外に出られない人も
 ロックダウンが続く中国上海市で、新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。4月8日時点の政府の発表によると、前日7日の感染者数は2万1222人に上り、7日連続で過去最多を更新した。オミクロン株が流行し始めた3月以降の感染者数の累計は12万人以上となった。この数は、2020年に武漢で最初に感染が判明して以降、2年間における中国全体の累計感染者数をも上回るという。 
『ロックダウンで大混乱の上海で見えた、住民たちの古き良き「共助精神」』(4月11日配信)で述べたように、上海市政府は3月28日から4月4日まで、上海を東西に分けて、順次ロックダウンをするという措置を取った。しかし、感染者数の増加傾向が収まらない中、当初の予定を過ぎてもロックダウンが解除される見通しは立っていない。
 ここで中国の都市部にある特色ある住宅の形態について説明しておこう。都市部では、数棟~数十棟のマンションが「塀」に囲まれた敷地内に建てられている。中国語で「小区」と呼ばれ、日本の団地に似たつくりだ。小区の入口にはゲートがあり、守衛所が設置されている。敷地内には、噴水広場や緑地、歩道があったりして、散策できる環境になっていることが多い。
 ところが、ロックダウンになると、敷地内に出ることさえできない。つまり、家の玄関から外に一歩も出てはいけない状況なのだ。
 すでに3月上旬から、感染者が出た一部の小区は封鎖されていた。そのため、1カ月近く部屋に閉じ込められているという人も少なくない。
 そんな中、人口2600万人の上海は今、深刻な食料不足に陥っている。ロックダウンのために物流が止まり、宅配を行う従業員の多くが外に出られない状況だからだ。
 中国では、これまで生活用品から食材まであらゆるものがスマホ一つで簡単に購入でき、すぐに家に届けてもらうことができた。
 しかし、今はそんな食材や日用品のデリバリーは争奪戦になっている。毎朝6時に起き、一日中スマホとにらめっこ。十数個の食材宅配のアプリを使って何とか商品を買おうとしても、何も手に入らない日が多いのだという。「食材はもうすぐ底を突く。どうしよう……」「こんなに空腹でいるのは生涯初めてだ」「これが21世紀の国際大都市の姿か?」など、上海市民からは悲痛な声が上がっている。
4万人の日本人が住む上海
ロックダウン下の暮らしは?
 このような厳しい状況にある上海には、多くの日系企業が進出している。その拠点数は約1万に上り、在留邦人約4万人が暮らす。中国の都市としては最多である。
 今、上海にいる日本人の皆さんはどう過ごしているのか。現地にいる筆者の仕事上の関係者や知人などの日本人や日本人留学生などから、現状を聞かせてもらった。
 5人家族で上海に暮らすビジネスマンの山崎徹さん(仮名、40代)は、上海在住歴が5年以上になるが、今回の事態を「異常だ」と嘆く。
「今は毎日PCRと抗原検査の繰り返し。2歳の娘がいるが、粉ミルクとオムツ、食料が全然足りていない。今、朝はわざと遅くまで寝て、朝食は取らず、お昼と夜の2食だけで済ますようにしている。デリバリーにお願いしても、運ぶ人がいないし、そもそも店もやっていない。手数料を200元(約4000円)を払ってもだめ。他の人は一体いくら出しているんだろう……と思う。(ロックダウンが)いつ解除されるのが全く見えないし、説明がない。もう異常だよ」
 食料不足が深刻なため、宅配手数料の相場は上昇し続けている。ある筆者の友人は、1000元(約2万円)の手数料を支払ったという。そんな高い金額を……と思うかもしれないが、食料が底をつき、外にも出られない中、何とかして必要な品を手に入れなければならない。背に腹は代えられないのだ。
 設計・建築コンサル会社に勤める原田健司さん(仮名、50代)は、ロックダウン下で仕事にも支障が出ていると話す。
「みんなテレワークになったこともあってか、ネットの回線が脆弱(ぜいじゃく)で、オンラインの会議ではよく通信が止まったりして困る。あとは、いろいろな情報が飛び交って、デマか真実か分からない」
 ただ、原田さんの小区は幸い、食料が手に入る状況にある。政府から無料の支援物資が配布されているという。しかしこうした支援物資が届いてない地域もあり、また場所によって中身も量もバラバラだといわれている。
 食料面の不安が解消されているからか、原田さんにはこの異常事態を楽しむ余裕もあるようだ。
「(ロックダウンは)日本ではなかなかできない経験で、思ったよりこの状況を楽しめている。街が静かになり、鳥のさえずりも聞こえてある意味気持ちが良い」(原田さん)
 生活に関しては、住人同士で協力し合い、情報交換をしているという。
「住人のグループチャットがあり、地元の皆さんがとても親切に助けてくれている。上海だからか、日本語ができる人が多い。自分が感染してしまわないか、この状況がどうなるのか、この先に不安がないわけではないが、自己責任である程度のリスクを負う覚悟をしてこの地で仕事をしている」(原田さん)
人事異動で帰任予定も帰国できず……
病院に行けない不安も
 また、筆者の親しい友人であり、インテリアデザインの仕事をしている井上紀子さん(仮名、40代)は、ロックダウン中に体調の異変を感じた。そのとき、外出できない中、どう行動すべきか非常に困ったという。
「実は、先日の早朝、突然原因不明の激しい腹痛に襲われた。背中が痛く、手足がしびれ、冷や汗が出るほど呼吸が苦しくなり、死ぬかと思った……。ロックダウンで自宅を出られない中、どうやって病院へ行けばいいのかとろうばいした。幸い、夕方にはちょっと症状が回復したが、そのとき、ふと上海に大勢いる一人暮らしの高齢者は大丈夫なのだろうかと不安に思った」
 井上さんは、これまで「コロナ政策の優等生」だった上海がロックダウンに陥ってしまった事態に直面したことで生じた心境の変化を明かしてくれた。
「今まではできれば楽観的にいようと、本能的に良い情報にしか目を向けなかったが、今回はたくさんのことを考えさせられた。つい、日本と比べたりもして、やっぱり自由が一番、決して自由はお金で買えないと思った」(井上さん)
 また、上海に駐在している日系企業の社員たちも、突然のロックダウンに戸惑っている。日本の衛生用品大手メーカーの上海支社に単身赴任している谷内幸喜さん(仮名、40代)は、「3月末に人事異動で帰任する人は、ロックダウン下で通行証の申請や車の手配など一連の手続きができず、現在空港まで移動ができない状況」だと教えてくれた。
 谷内さんが勤めるメーカーでは、紙オムツや生理用品などを上海の医療機関に寄付しようとしているが、作業員が自宅から出られず、そうした商品の出荷作業もストップしてしまっているという。
 また、上海での生活については、以下のような悩みを話す。
「政府が配布する無料食材は大変ありがたいが、実を言うと、普段は外食やデリバリーで食事を済ませていたから自宅は料理が満足にできる環境ではない。調理器具や道具がそろっておらず、丸1羽の鶏やタチウオなどをどう調理すればいいか困っている……」(谷内さん)
 加えて、上海に赴任してから日が浅い人は、言語の壁にも苦労することが多い。
「最近上海に赴任した人たちは、中国語もまだできないし、生活環境にも慣れていない。特に、今は地元の人たちが、食料をアプリで“奪い合う状況”だ。また、小区の住民同士で共同購入を行っているが、こうしたやりとりは、中国人でもうまくできないのに、ましてや日本人はついていけないだろう」と、谷内さんは心配そうに話した。
 また、上海には多数の日本人留学生も暮らしている。彼ら彼女らは今、どんな状況にあるのか。
「上海日本人留学生会(SJSA)」の会長であり、現在上海の大学4年生の三田明絵さんによると、多くの日本人留学生は、2020年の春に武漢から新型コロナウイルスの感染拡大が始まったときに日本に帰ったという。以来、そのまま上海に戻れず、オンライン授業を継続し、中には休学する学生も目立つ。
「遠くの親戚より近くの隣人」
小区内での助け合いが重要
 先が見えない突然のロックダウン――。中国人でも生活に苦労する中、現地に住む日本人の不安は測り知れないが、そんな中でも近隣の住人同士で助け合いながら、危機を乗り切ろうとしている姿がある。
 上海市の西にある虹橋地区には、2棟の29階建てのマンション「太陽広場(Sun Plaza)」という小区がある。365世帯、約580人住民が暮らし、3分の2が日本人駐在員とその家族という上海では最大級の日本人コミュニティーだ。
 筆者の昔からの知人である上海市政府機関の元幹部の男性は、この小区の住民管理組合で主任(日本の管理組合理事長に相当)を務めている。彼は、現在の様子をこう話す。
「うちの小区は、今も陽性者が1人も出ていない。上海では珍しいぐらいだが、それには日本人の皆さんの良い生活習慣に関係していると思う。最近は約2日に1度のPCR検査を実施しているが、500人以上もいる大所帯にもかかわらず、フロアごとに秩序よく進めることができている。皆さんは並ぶときに、必ず2メートルの距離を守る。また、多くの人が積極的にボランティア活動に参加してくれて、大変助かっている。
メシウマ案件、いただきます!