静岡県の川勝知事は８日、未着工となっているリニア中央新幹線静岡工区の工事予定地のある静岡市の南アルプス山中を視察した。知事は、工事で県外に流出する湧水を大井川に戻すＪＲ東海の新提案について、県が求める「全量戻し」には「なり得ない」と述べ、改めて工事の対策としては認めない考えを示した。その上で、新提案は「ＪＲ東海による地域貢献だ」との持論を展開し、大井川の水量回復に期待を示した。
　川勝知事が現地を視察するのは約２年ぶり。ＪＲ東海は今年４月、工事で山梨県に湧水が流出する間、東京電力リニューアブルパワーが大井川源流にある田代ダムで取水量を抑制し、流出量と同量を大井川に流す方法を提案した。視察は、案の要となる田代ダムや、トンネル掘削で発生した土を置く場所などを確認するために行った。県側の専門家や、ＪＲ東海の宇野護副社長らとともに回った。
　川勝知事は視察後、ＪＲ東海に田代ダムの活用方法についてより詳しい説明を求め、「言い出した以上、責任を持って（水を戻すよう）尽力いただきたい」と注文。「実現すればみんなが喜ぶ。広い意味での地域貢献だと思う」と語った。
　宇野副社長は「全量戻し（のための案）として、地元住民の懸念や不安に応えるために提案している」と述べ、工事対策として提案していることを強調した。
　視察には、田代ダムの水を使う発電施設を持つ山梨県早川町の辻一幸町長も同行した。辻町長はＪＲ東海に対して田代ダムの活用を提案したと明かし、「大井川の水を確保しながら、工事が進んでいくことを期待している」と語った。
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