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安倍総理の志は死なない!!

「台湾統一だけは譲れない」…早ければ10月にも!習近平が仕掛ける「台湾侵攻」のタイミング

習近平はいつ決断するのか。前編記事『中国にとって台湾問題は「恥辱の歴史」…習近平が腹をくくった、「台湾奪取」の戦慄シナリオ』に引き続き、「最悪」のシナリオを想定する。
日米が準備を整える前に
© 現代ビジネス Photo by gettyimages
しかも、中国は核高高度電磁パルス攻撃を核攻撃の範囲に含めていないという。元海上自衛隊情報業務群司令で、実業之日本フォーラム編集委員の末次富美雄氏が続ける。
「核高高度電磁パルス攻撃は、台湾軍と米海軍を『同時に無力化できる手段』として認識されています。ただし、現時点では中国が先制攻撃に使用する確率は低いと言えます。しかし、米軍が『自分たちの領土』=台湾に侵入したと見なした場合には、自国の領土を守るという大義名分で使用する可能性もゼロではありません」
中国はすでに台湾を強奪するための戦力を保持し、そのための戦略を練り上げつつある。あとは習近平の決断次第だ。いつ習近平は軍事行動に踏み切るのか。中国の軍事情勢に詳しい明海大学外国語学部教授の小谷哲男氏がこう見通す。
「'27年には中国が台湾侵攻に必要となる上陸作戦を遂行する能力を整えると言われています。奇しくも'27年は、今年後半に異例の3期目に突入する習近平政権の終盤にあたります。国家主席を3期務めた偉大な指導者として、大きな成果が必要とされる。習近平が軍事的な冒険主義に走り、台湾侵攻に踏み切る可能性を考える必要があります」
習近平は3期目を盤石にし、機が熟すのを待ってから台湾侵攻を実行に移す―。これが国内外の安全保障の専門家の「相場観」だ。
これを踏まえて、中国がこれ以上軍事力を拡大しないよう、欧米諸国は歯止めをかけようとしてきた。新疆ウイグル自治区や香港で行われている人権侵害を非難し、中国のさらなる海洋進出に圧力をかけ、経済の中国依存を解消しようとさまざまな施策を取っている。
尖閣諸島と与那国島が占拠される
ただ、逆に習近平の目から見ると、どう映るか。西側諸国は中国が'27年以降に台湾統一を試みると考えている。それまでに中国の経済成長を封じ込め、軍事作戦を展開した時に日米が即座に反撃できるよう準備を整えるかもしれない。「台湾統一」だけは譲ることができない国家的な目標だ。であるならば、欧米と日本が準備を整える前に侵攻に踏み切ったほうが容易に台湾を落とせるのではないか。習近平がこう考えてもおかしくない。
事実、少なくとも日本に関しては、中国の台湾侵攻に関する準備はまったく整っていない。前出の日本戦略研究フォーラムの報告では、日本が中国から大規模なサイバー攻撃を受け、反撃する能力もないまま、為す術もなく尖閣諸島と与那国島が占拠される悪夢のようなシナリオが提示された。
国家安全保障会議(NSC)の事務局である国家安全保障局元次長で、同志社大学特別客員教授の兼原信克氏が言う。
「日本のサイバーセキュリティは藁の家のように脆い。戦争になって本格的なサイバー攻撃を受ければ、沖縄はもちろん、九州・四国・中国電力管内もブラックアウトしてしまいます。このままでは有事の際、戦う前に負けてしまうでしょう」
こうした状況を見据えて、習近平が早期に動く可能性を指摘するのは、中国に詳しいジャーナリストの福島香織氏だ。
「7月28日に米下院を通過した『半導体法案』は、米国内の半導体企業を支援し、補助金を受け取った企業は、中国など安全保障上の懸念がある国での事業拡大を禁じられるという内容です。一部のアナリストはこれで米国と中国の半導体サプライチェーン(供給網)のデカップリング(分断)が進むと指摘しています。
中国にしてみれば、最先端の半導体が手に入らなくなるおそれがある。一方、台湾には半導体の受託製造で世界最大の台湾積体電路製造(TSMC)があるので、中国は台湾をなんとしても統一したいし、そのために武力を使うこともいとわないかもしれません。秋の党大会以降、11月26日の台湾の地方選挙までの間に戦争のリスクが高まってもおかしくありません」
ペロシ訪台が「口実」になる
だが、これすら「最悪」のシナリオではない。ゼロコロナ政策の失敗、不動産価格の高騰、不動産会社の経営危機、地方銀行での預金凍結など、中国社会では長年蓄積した歪みが庶民の暮らしを直撃している。
「コロナで店舗の閉鎖や企業倒産が相次ぎ、人々は深刻な就職難に見舞われています。好景気を支えてきたとされるIT業界でも大規模なリストラが行われている。習近平政権が抱える矛盾も、臨界点に近づきつつあるのではないか」(東京大学大学院教授の阿古智子氏)
戦争は、ひとまず国内の不満をそらすことができる為政者にとっては便利な手段だ。合理的ではないかもしれないが、独裁者にとって、そんなことは関係ない。ロシアのプーチン大統領も、多くの識者は合理的ではないからと開戦の可能性を否定したが、ウクライナ侵攻に踏み切った。
習近平が国内の不満を払拭するためには、ペロシ訪台という「火遊び」は、中国が行動を起こす格好の口実になる。そうなれば、党大会を前にした10月に台湾侵攻に踏み切っても、不思議ではない。元米海軍副次官でヨークタウン研究所創設者のセス・クロプシー氏がこう話す。
「習近平が台湾侵攻に踏み切るとしたら、(中国の国会にあたる)全人代が3月に行われ、人事を改めて掌握する来春と考えていました。しかし、ペロシ訪台でここまで緊張感が高まってしまうと、中国がどのような軍事的行動を起こすのか、わかりません。中国が台湾との偶発的な衝突に乗じて、侵攻を開始する危険性は十分にありえます。その時、中国が核兵器を使えば、米国が報復し、世界大戦にまで発展する可能性もあるでしょう」
独裁者の頭の中は誰にも読めない。しかし、台湾奪取に向けて、習近平が腹をくくっていることだけは間違いない。