岸田文雄首相の長男で政務秘書官の翔太郎氏（３２）が今月、首相の欧米歴訪に同行した際、公用車で観光や土産の買い物をしていたという「週刊新潮」の報道が波紋を呼んでいる。昨年１０月、首相秘書官に起用された翔太郎氏には〝身内贔屓（びいき）〟との批判があった。メディアの視線は厳しくなっており、政権の新たな〝地雷〟となる恐れもある。
「（公用車の運用状況を）改めて点検をしていきたい」
磯崎仁彦官房副長官は２６日午後の記者会見で、こう述べた。同日午前の木原誠二官房副長官の会見でも同じ質問が出たが、詳細な経緯や行動に「問題点」があったか否かは判然としなかった。
岸田首相は９～１５日、フランス、イタリア、英国、カナダ、米国を歴訪した。週刊新潮は「外遊で観光三昧」との見出しで、歴訪に同行した翔太郎氏が日本大使館の公用車でパリやロンドンの名所を観光し、現地の百貨店で買い物をしたなどと報じた。
大使館職員は付き添いや車の手配に追われたと指摘し、公用に無関係な対応で「各国の大使館員にとって大きな負担となった」とする政府関係者の証言を紹介している。
翔太郎氏は週刊新潮の取材に対し、私物購入はなかったなどとし、「外遊に行ったら、お土産を買うというルーティンがあってですね。例えば、政治家の方々に〝総理からです〟と。そういうものを買っているんです」などと回答した。
物見遊山の批判には「ご指摘は承りました」と答えている。
朝日新聞は２７日朝刊で、首相周辺の話として、「（首相が帰国後に配る）お土産を買っていた。秘書の業務の一つだ」と報じている。
野党は今後、公用車を使って購入した「お土産代の出元」「渡す相手」などを追及するとみられる。
一連の騒動をどう見るのか。
経済ジャーナリストの荻原博子氏は「政治に『身ぎれいさ』が求められるなか、岸田政権は一層気を引き締めるべきだ。外遊は公金で行われるもので、観光三昧が事実なら『異次元』で低レベルの行動だ。土産物の配り先次第ではさらなる問題になる。岸田政権は方向性が一貫せず、丁寧な説明もなく唐突に決定し、アフターフォローもない。増税路線や、コロナ後の社会など、国民は痛みと不安で一杯なのに、安心させる意気を感じない。民間の人事は、血縁ではなく、より資質が問われる時代だ。政界には世襲が蔓延（まんえん）している。岸田首相も、我が子を手元に置くのではなく、より厳しい環境で経験を積ませるべきではないか」と語っている。