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安倍総理の志は死なない!!

核兵器しか選択肢にない北朝鮮という危険な存在

小此木・慶大名誉教授に聞く北朝鮮の抑止戦略
福田 恵介 : 東洋経済 解説部コラムニスト
2023年04月20日
北朝鮮は4月13日、初の固形燃料型大陸間弾道ミサイル(ICBM)とされる「火星18」の発射実験を行った。2022年の60発以上に続いて、2023年に入ってすでに12発の弾道ミサイルを発射している。北朝鮮による核・ミサイルの脅威に、日本に対処できることはあるのか。日本を代表する朝鮮半島問題専門家である慶應義塾大学の小此木政夫・名誉教授に聞いた。
――2022年、そして今年2023年と北朝鮮が弾道ミサイルの試験発射を相次いで行っています。核兵器の開発に拍車がかかっているように見えます。
北朝鮮の核ドクトリンを見ていくと、戦略的、かつ戦術的に同時に進めていることがわかる。ただ、そんな国は北朝鮮しかない。
例えば2022年12月15日にインドがICBM「アグニ5」の発射実験を行い、射程距離が5000キロメートルにまで伸びた。この射程距離は、インドから中国全土をすっぽりと覆う距離だ。
インド側も、今回の実験はミサイルの軽量化と射程を伸ばす目的があったという指摘が出ている。こうやって徐々に軽量化と射程を伸ばしていくものだが、北朝鮮はそれを同時にやっている。
戦術核・戦略核を同時に開発する北朝鮮
――北朝鮮は2021年1月、朝鮮労働党第8回党大会で「核兵器の小型化、軽量化を発展させ、戦術核兵器を開発し、超大型核弾頭の生産も持続的に推し進める」ことを決定しています。これを現在、推進しているということでしょうか。
このときの報告には、非常に政治性がある。北朝鮮にとって「戦略核」とは、朝鮮半島へのアメリカの介入を防ぐために、アメリカ本土にまで到達できるミサイルのことだ。これは米韓分断、すなわち武力衝突が発生すればアメリカが韓国側に立つという米韓同盟の信頼性を毀損させようという目的がある。
一方で「戦術核」とは地域内で使われる核兵器のこと。例えば非武装地帯や黄海などで、南北間で武力衝突が発生したら使う。というよりも、そういった衝突を発生させないための威嚇や抑止力としての意味がある。
こういった北朝鮮の核兵器開発を見ていると、通常兵器が相当老朽化し、使えないものになっているのではないか。
北朝鮮は2013年に「経済建設と核武力開発の並進路線」という方針を掲げた。これは経済建設と核兵器開発の2つを同時に進めるという意味合いだったが、通常戦力に向けられていた資本を核開発や経済活動に回すという意味もあった。だが、そのあおりで通常兵器が使えなくなっているのだろう。
――一方で、韓国や在韓米軍は合同の軍事演習を活発に行うようになりました。
韓国からの攻撃を通常兵器ではカバーしきれなくなっているのが北朝鮮の現状なのかも知れない。これは、何か武力衝突が発生したら韓国やアメリカ軍に対し核兵器で威嚇、すなわち使用せざるを得ない状況にあると言えるだろう。
これは非常に危険だ。局地的な武力衝突が起きた時点で北朝鮮は核を使用し、さらに戦略核の使用にまで発展しやすいということだ。
核兵器を使用せざるを得ない
北朝鮮にとっても、危険な選択だけがあるという状況だ。第8回党大会での核ドクトリンのままで突き進めば、武力衝突が発生し通常兵力では太刀打ちできないとなれば、核兵器を使用せざるを得ない。一方で核兵器を使用しなければ、これまでの政策の実効性のなさを国民に見せてしまうことになる。
2023年の米韓合同軍事演習では、上陸作戦が組み込まれていた。韓国側はあくまでも通常兵器での対応がメインだが、北朝鮮は核兵器シナリオがメインとなっている。これは台湾有事よりも危険な状態だ。「核兵器を使うしかない」と北朝鮮が言っているに等しい。