Shinzo-Returns

安倍総理の志は死なない!!

習近平が進撃を決断する「Xデー」は必ずやってくる 「中国の台湾侵攻」 日本はこう巻き込まれていく

未明から始まった中国軍のミサイル攻撃で、台北(タイペイ)市の空は黒煙に覆われていた。
精密誘導弾は総統府・国防部・外交部・内政部など、台北市と桃園(タオユワン)市の各政府庁舎や軍事施設に加え、電気・ガス・通信施設などの重要インフラを破壊した。
偵察衛星やドローンを使って、台湾軍の部隊、弾薬庫・燃料集積所をピンポイントで攻撃。固定レーダーや海軍基地内に停泊していた艦艇、陸軍の地上発射型ミサイル基地にもミサイルが飛来した。
台湾軍の通信組織には大規模なサイバー攻撃が仕掛けられ、あらゆる指揮通信網が麻痺。電話も通じない。空襲警報が鳴り響く中、脱出しようとする市民の車で大渋滞が発生。台湾総統府は「政府機能の一部を花蓮(ホワリェン)市に移設する」と発表した。
米ハワイのインド太平洋軍司令部では連日、作戦会議が開かれていた。
「中国機や艦艇との直接交戦はしないように、との命令に変更はない」
「現在、沖縄の海兵沿岸連隊を石垣島に輸送準備中。輸送後、陸上自衛隊の駐屯地に配置します。さらに第1及び第2海兵遠征旅団を沖縄に輸送する予定です」
台北の空にはミサイル、ドローンに続いて、中国空軍の爆撃機が登場。基地や沿岸部に残っていた戦闘機、軍施設などを空爆した。一連の上陸前準備打撃が終了したのを受けて、南京市に司令部がある東部戦区から、一次侵攻部隊約16万人が乗艦する揚陸艦船が次々と出港。
中国国防部は「現在の台湾の混乱は台湾自ら収拾することが不可能で、台湾市民を守るために必要最小限の軍事作戦を行う」と発表。こう続けた。
「台湾の混乱収拾のための行動は内政問題であり、他国の干渉を断固拒否する」
激戦地からおよそ100㎞の与那国島では、全住民の避難が完了。自衛隊が残るのみだったが、中国側の電子戦攻撃で島外と通信が途絶えて孤立。ミサイル攻撃で反撃能力を奪われた自衛隊は、上陸した重装備の中国海軍陸戦隊に包囲されていた。決着は数時間でついた。
尖閣諸島魚釣(うおつり)島では、占領軍によって中国国旗が掲揚されていた。
間近に迫った「Xデー」
これは元陸上自衛隊中部方面総監・山下裕貴(ひろたか)氏(66)による「中国による台湾侵攻」の詳細シミュレーションである。
山下氏は’15年に陸将で退官したエリートで、陸上自衛隊および作戦に精通。政府要人を対象とした図上演習(ウォーゲーム)の企画・指導を担当し、4月17日には『完全シミュレーション 台湾侵攻戦争』(講談社刊)を上梓している。
昨年12月、岸田政権が安保三文書(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画)を決定したことでにわかに台湾有事への警戒感が高まったが、山下氏は「中国の台湾侵攻はある」と断言する。
「問題はそれがいつなのか、です。最も可能性が高いのが’27年。習近平国家主席(69)の3期目が終わって4期目をうかがう節目であり、人民解放軍創設100周年の年。’25年に米インド太平洋軍の戦力を人民解放軍が凌駕することも、侵攻を後押しするでしょう。台湾海峡は夏場に多くの台風が通過し、冬場は強風が吹き、濃い霧が発生する。’27年の春先か秋口がXデーだと見ています」
山下氏は件(くだん)の著書で、「台湾の独立宣言」「国連加盟申請」「核武装」など侵攻のトリガーとなり得る5つの状況を示しているが、「実際は習近平の胸三寸」だと言う。
「たとえば、台湾の総統がニューヨークを訪問して米大統領と会っただけで『独立に向けた動きだ』と判断することもできる。何をトリガーにするかは、習近平次第なのです」
今回のシミュレーションの肝となっているのが、ロシアのウクライナ侵攻だ。
「侵攻前のサイバー攻撃にことごとく失敗したり、レーダーや地対空ミサイルの位置を特定できず航空優勢を確保できなかったりと教訓に溢れていましたから。最大の失敗だった兵站(へいたん)(補給と輸送)には最大限、注力するでしょう」
いざ中台開戦となれば、望むと望まざるとにかかわらず日本は巻き込まれる。
山下氏は3つのケースを挙げた。
「緊張が高まると、ロナルド・レーガン空母打撃群などの米艦隊が台湾周辺の海域に展開します。この際、偶発的に米軍の偵察機が墜とされ、捜索救助要請が入ると安保法制の『重要影響事態』となる。自衛隊が捜索や燃料補給などの後方活動を支援します。米艦船が直接攻撃されれば、今度は『存立危機事態』の事態認定をして、集団的自衛権を行使。自衛隊のイージス艦等が米艦船を防護します」
3つめが「武力攻撃事態」だ。
「直接戦火を交える以外にも、たとえば中国軍と交戦して日本に避難した台湾軍の航空機や艦船、兵士を保護しただけでもリスクは高まります。中国側は『内政問題なので引き渡せ』と要求しますが、人道上、応じられない。中国から見れば避難した人員、装備は戦力ですから、ミサイルなどで攻撃される恐れが出てくる」
満を持しての台湾侵攻。米インド太平洋軍や、巻き込まれた自衛隊はどんな結末を迎えるのか。気掛かりなのは、そもそも自衛隊は戦えるのか、安保法制は機能するのか――ということだ。
「現場は常に動いており、瞬時の判断が求められます。米艦船が給油中に攻撃を受けて、海上自衛隊に防護要請が来たときに『ちょっと待ってください。まだ重要影響事態ですから、政府に存立危機事態の認定をしてもらわないと……』などと言っていたら沈められてしまう」
自衛隊は軍隊なのか。この問いに山下氏はこう答えた。
「専守防衛って聞こえはいいですが、我が国の国土で戦争するってことですよ。住民は避難できたとしても建物や土地、あらゆる財産が失われる。そういう負の説明を、政府はしなければならない。現状の安保法制では、多くの自衛官が命を落とすでしょう。人員不足、新旧装備の混合、兵器の圧倒的不足と、他にも問題は山積しています。政治家は現実にしっかり目を向けてほしい」
Xデーは決して遠くない。