Shinzo-Returns

安倍総理の志は死なない!!

習近平の大誤算…「アメリカを越える!」はずが、西側諸国から「締め出し」を食らい、迎える末路

バブル崩壊以降、最高値をつけた株価、相次ぐ世界の半導体大手の国内進出。コロナ明けで戻ってきた外国人観光客。なんだか明るい兆しが見えている日本経済。
じつはその背景には、日本を過去30年間苦しめてきたポスト冷戦時代から米中新冷戦時代への大転換がある。
いま日本を取り巻く状況は劇的に好転している。この千載一遇のチャンスを生かせるのか。
商社マン、内閣調査室などで経済分析の専門家として50年にわたり活躍、国内外にも知己が多い著者が、ポスト冷戦期から新冷戦時代の大変化と日本復活を示した話題書『新冷戦の勝者になるのは日本』を抜粋してお届けする。今回は新冷戦時代になって問題山積の中国経済について解説する。
前編記事【全日本人が絶句…中国と日本の「GDP」を比較して見えてきた「ヤバすぎる真実」】より続きます
フレンド・ショアリングからの排除と労働コスト上昇
米国をGDPで超えるのも時間の問題と思われていた中国だが、新冷戦時代に入り、そうは状況が進まないことが見えてきた。
まずは外患だが、新冷戦下では第1に経済安全保障の観点から西側民主国家が構築するサプライチェーンであるフレンド・ショアリングから排除されるので、西側からの直接投資にブレーキがかかる。同時に中国の労働コスト上昇の影響も見逃せない。
1992年に2635元だった賃金(年間)が2021年には10万6837元と40倍も上昇している。もはや安い労働力を求めて中国に投資する企業はいない。
中国の内需拡大を見込んでの投資ならあり得るが、共同富裕で経済減速が予想されるのでこれもあまり期待できない。
第2は先端技術・製品の対中輸出制限が広がることだ。民主主義対専制主義の闘いを標榜するバイデン大統領の圧力もあって、西側諸国が有する先端技術や製品の中国向け輸出は制限される方向にある。
象徴的なのが半導体製造装置で米国と並んで世界をリードする日本、オランダが米政府の強い説得により、中国向けの輸出制限に合意したニュースである。
この日米蘭の3ヵ国で世界の半導体製造装置の90%以上を占めており、ここから締め出されると、中国の半導体産業は立ち行かなくなり、中国の製造業に致命的なダメージを与えることになる。
共同富裕の弊害
内憂で言えば、やはり共同富裕の弊害だ。鄧小平の先富論を否定したいまの習近平の治世では、アニマルスピリッツに溢れた若手起業家の活躍の場はない。
格差社会の是正という名目で高い税金をかけられ、賃上げによる労働分配率の変更を要請され、かつ利益の社会還元を強制されるからだ。
しかも、習近平は「国有企業はより大きく、より強くならなければならない」と述べるなど、国が指導する産業政策の役割を重視し、それを実践する国有企業を優遇する「国進民退」の考え方を押し出している。これでは民間企業にイノベーションを起こす意欲が湧いてこないので民間投資は減速せざるを得ない。
結局、官製イノベーションに依存するしかなく、科学技術の「自立自強」を唱える習近平だが、これではイノベーション主導の経済発展は望み薄である。
巨額債務問題が重くのしかかる
次に構造問題としては巨額債務が中国経済に重くのしかかっている。第1が地方政府の債務問題である。
これまで中国の成長を支えてきた要因の一つは地方政府による道路、鉄道、港湾などのインフラ投資であり、また省内の国有企業の尻を叩いて設備投資を増大させたことである。
共産党の省トップは担当地域のGDPが急増すれば、北京に戻ってから出世が見込めるので、GDP競争で他の省に負けていられないのだ。勢い、後先を考えないで自分がトップにいる間は無茶な投資でもやらせてGDPを上げる傾向がある。これが地方債務急増の背景だ。
まだ、リーマンショック以前は不動産価格の上昇に連動して土地使用権収入が増大したので、地方財政が比較的健全であったが、リーマンショックを乗り切るために、中央政府が打ち出した4兆元(約57兆円)の景気刺激策あたりからおかしくなってきた。
中央から地方に割り当てられたノルマ達成のために、無茶な不動産開発や設備投資が進められた結果、「鬼城」と言われるゴーストタウンが生まれたり、稼働しない設備が放置されたりして社会問題化した。
特に地方政府は地方融資平台という投資会社を設立して、金融機関に高利回りの資産運用商品「理財商品」を販売させて得た資金で開発を進めていったが、銀行からの融資ではない資金調達だったので「シャドーバンキング(影の銀行)」と呼ばれた。
身の丈に合わない不動産開発投資はバブルを醸成し、バブル崩壊から巨額の債務を抱える羽目になった地方政府の窮状は相当に深刻化しているようだ。
地方政府といっても、地方自治とは無縁で、あくまで中央政府の出先機関であるので、債務処理は中央政府が責任を持ってやるしかない。よって、地方政府や国有企業の不動産開発投資、設備投資は長期的に低迷を余儀なくされる方向にある。
第2が民間の不動産開発業者の債務問題である。2021年11月に大手の恒大集団がドル建て債務の利払いができずデフォルトに陥った。資金難に陥った恒大集団が建設工事を途中で取りやめたために、代金を払っても入居できなくなった人たちや個人投資家が抗議行動に出るなど各地で混乱が拡がった。
中国は改革開放後に急速な経済発展を見せ、不動産需要の高まりから不動産価格が急上昇、さらに利益を求めて一段と不動産投資が活発化するという循環が生まれた。
日本のバブルと同じパターンであり、不動産投資は儲かるという経験則から「絶対に」儲かるという不動産神話が生まれて、不動産業者はさらに借り入れを増やしてバブルが醸成されていった。
ところが、不動産価格の上昇は家を持てる人と持てない人の格差を生み出すが、これは中国共産党が最も嫌う事態である。
早速、習近平は「共同富裕」の観点から、「住宅は住むためのものであり、投機のためのものではない」という方針を繰り返し、「三条紅線」という不動産業者の負債状況を示す3つの指標を参考にした不動産向け融資規制を銀行に指示した。
日本のバブル崩壊の引き金となった「総量規制」と全く同じであり、当然ながら中国版不動産バブルが崩壊して、恒大集団の破綻につながった。慌てた習近平が「三条紅線」の緩和に踏み切ったが、時すでに遅し、その後も不動産市場の低迷が続いている。
結局、これも中国政府が債務処理に乗り出さない限り解決は難しい。不動産が引っ張ってきた中国の成長パターンが壊れたので成長減速は避けられないだろう。
頓挫しつつある一帯一路
さらに、「一帯一路」も暗礁に乗り上げている。第1に途上国向けインフラ融資が焦げ付いて、不良債権化しつつある。第2は中国マネーで融資国を属国化する中国の姿勢に対して途上国で反中ムードが拡がっている。
その結果、ユーラシアに一大経済圏を創り上げて中国主導の経済成長を目論む習近平の構想は頓挫しつつある。
これまで共産党大会や全国人民代表大会で幾度も強調していた「一帯一路」に最近、習近平が言及しなくなったのは何か不都合がある証かも知れない。
いずれにせよ、共産党一党独裁、習近平の皇帝化が進むにつれて、人権抑圧や言論封じ込めが酷くなってきており、人心の共産党離れ、習近平批判が高まっている。共産党一党独裁の制度疲労が進行しているので、新冷戦下の中国経済の行方は極めて厳しいものになると予想される。