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安倍総理の志は死なない!!

自民女性局長「パリ視察」がこうも炎上した理由

松川氏らに厳重注意、自民の女性支援策にも冷水
泉 宏 : 政治ジャーナリスト
2023年08月04日
自民党の松川るい女性局長(参院大阪選挙区=52=)らによるフランス・パリ視察が「観光旅行」と猛批判を浴びている。松川氏らが視察中にエッフェル塔前で塔を模したポーズをとっているショットなどを投稿(一部削除)したことが、瞬く間にネット上で拡散、非難が殺到したからだ。
あわてた自民執行部は松川氏らに厳重注意し、同氏も「軽率だった」と謝罪。与党最高幹部の山口那津男・公明党代表が苦言を呈する一方、立憲民主の岡田克也・幹事長も「国民から見て疑問を持たれても仕方ない」と批判するなど、炎暑の永田町での大炎上が続いている。
松川氏はキャリア外交官から政界入りした「エリート議員」で、自民党の女性登用方針を踏まえて秋口に予想される内閣改造での入閣候補との見方もあった。それだけに党内では「女性重視の動きに冷水を浴びせる“愚挙”」(長老)との声が噴出、岸田文雄首相ら党最高幹部も苛立ちを隠せない。
投稿写真に「世間の感覚とズレすぎ」批判殺到
この海外研修は党女性局が7月24~28日の日程で実施、松川氏に加えいずれも参院議員の今井絵理子(比例=39=)、広瀬めぐみ(岩手選挙区=57=)、梶原大介(比例=49=)の3氏と地方議員ら合計38人が参加したとされる。「目的はフランスが行った義務教育開始年齢の3歳への引き下げについての、目的や効果などの調査」(女性局)。
問題は、松川氏が研修中の27日に、SNS上に仏上院議員との意見交換の際の写真とともに、エッフェル塔前で「女性局」の横断幕を掲げた多人数の写真や、松川氏らが塔を模したポーズを取る写真を、「パリの街の美しいこと!」などと書き込んで投稿したことだ。
この投稿は瞬く間にSNS上で取り上げられ、「世間の感覚とズレすぎ」「修学旅行にしか見えない」「国民が増税や物価高で困窮しているのに」など厳しい書き込みが殺到。あわてた松川氏は「大阪の地元の方と撮った写真があれしかなかった。誤解をされてはいけないと思い、削除した」と釈明、「中身のある真面目な研修なのに誤解を招いてしまい、申し訳ない」と謝罪した。
しかも、松川氏だけでなく、今井氏もリュクサンブール宮殿での松川氏とのツーショット写真を、さらに広瀬氏も現地で食べたとみられる高級フレンチの写真をそれぞれ投稿。これらもSNS上での批判を拡大させた。
さらに松川氏は投稿で、今回の視察について「少子化対策や女性活躍などをテーマに、フランスの上院や下院の議員と意見交換をした」とし、費用については「党費と各参加者の自腹」と説明した。ただ、これに対してもSNS上だけでなく、永田町でも「議員の収入は税金だ」との批判が巻き起こった。
自民党はメディアの取材に対し「今回の女性局の海外研修では、国会議員は1人30万円、その他34人は1人20万円を自費負担した」と説明。これに対し小池晃・共産党書記局長は「費用の党費には政党交付金が入っている」と指摘し「物価高などで国民が悲鳴をあげている時にポーズをとる記念写真(の投稿)は慎むべき」と批判した。
自民「党費負担分に政党助成金なし」説明も炎上
自民党の説明を踏まえ、政界関係者は「少なく見積もってもホテル代、食費、移動費などを合わせると総経費は7000万円以上となり、その大半は党費となるはず」と試算する。これに関して茂木敏充・自民党幹事長は「党負担分に政党助成金は含まれていない」と説明したが、「お金に色はついていない。誰もそんな説明は信じない」(立憲民主幹部)のは当然だ。
一連の騒動を踏まえ、まず、党側責任者の小渕優子・組織運動本部長は松川氏に対し「せっかくの視察が不適切な情報発信などによって誤解されることがないようにしてほしい」と厳重注意。さらに世耕弘成・参院幹事長も「この出張は女性活躍推進という観点からも、極めて中身の濃い出張だった」としたうえで。「ただ、観光だと誤解されるような写真をSNS上にアップしたことは、軽率だったと思うので、私からも厳重に注意した」と苦々し気な表情で会見した。
また、山口公明代表は、岸田首相の長男翔太郎氏が首相秘書官在任中に首相公邸で開いた親族の忘年会での不適切な写真をアップしたことを引き合いに「しっかり教訓として刻むことが大切だ」と苦言を呈した。
永田町では、「議員外交は必要で、その参加者が海外旅行でいろんな写真を撮るのは当たり前。それ自体に目くじらを立てるのは行きすぎ」との声も少なくない。ただ、自民党内では「参加した松川、今井両氏が参院議員の中でも特に目立つ存在だったのが騒ぎを大きくした」(長老)との指摘もある。
「エリート外交官」「人気タレント」が批判に拍車
まず松川氏の経歴をみると大阪の名門中・高等学校から東大法学部に合格、外交官試験を突破して外務省に入省した後、政治家を目指し、2016年7月の参院選大阪選挙区(定数4)でトップ当選して話題となった人物。
さらに2期目となった2022年7月参院選でも日本維新の会最高幹部の浅田均氏(現・維新参院会長)を抑えて2位当選している。「風貌とスタイルの良さに加え、外交専門家として弁が立つことで、各報道番組出演の常連となり地元大阪でも人気抜群」(自民選対)とされ、秋の内閣改造でも「女性閣僚の目玉候補」(閣僚経験者)との声も出ていた。
一方、今井氏も「女性参院議員のなかでは国民的にも知名度抜群」(参院自民幹部)。公式の経歴は「歌手、女優、政治家」だが、沖縄の人気ユニットSPEEDの元メンバーで、結婚、出産を経て音楽活動を再開し、国民的人気の芸能人として、松川氏と同じ2016年参院選で自民党がタレント候補として担ぎ出して初当選、現在は当選2期。ただ、神戸市議との不倫疑惑でワイドショーに取り上げられるなど私生活でも話題に事欠かない人物だ。
その今井氏は研修から帰国後の30日夜に「『公金を使って無駄だ』という指摘もあるが、無駄な外遊ではない。旅費についても党からの支出と、参加者の相応の自己負担によって賄われている」などと正当性を主張。これに対しSNS上では「今井さんが何を言っても、多くの国民は『あなたが言う?』と反発するだけ」などの書き込みが相次ぎ、「今井氏の“参戦”が炎上を煽り、松川氏への批判にも拍車をかけた」(自民幹部)のが実態だ。
「自民党のおごり、たるみの象徴的出来事」
折しも、自民党は8月1日、今後10年間で女性国会議員の割合を3割とする目標達成に向け、新人に活動費100万円を一律給付する「女性候補者支援金制度」の創設を柱とする支援策を発表したため、同党事務局が「せっかくの女性支援策に水を差された」と頭を抱える一幕も。
そうした中、今回の一連の騒動について自民党内では「全国的炎暑で政局もべた凪状態の中だけに、ワイドショー的にも格好の話題となってしまった」(幹部)と間の悪さを嘆く声もある。ただ、「政界以外の有識者らの反応をみても、自民党のおごり、たるみの象徴的出来事ととらえられ、そのわかりやすさからも、有権者は当分忘れない」(長老)と党内の不安は広がるばかりだ。
忘れないのはいいことだが、ちゃんと投票に行こうね!!