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安倍総理の志は死なない!!

「台湾有事」を防ぐために西側諸国は台湾支援を

「米国は関与しない」と中国に思われたらダメ
長谷川 隆 : 東洋経済 記者
2023年08月09日
「台湾有事」を防ぐために西側諸国は何をすべきか。元空将が語ります。
台湾海峡の緊張が高まっている。中国が台湾統一(併合)に向けて武力侵攻する日がくるのか。7月31日発売『週刊東洋経済』の特集「台湾リスク」では、日本企業に迫り来る台湾有事の全シナリオを示した。
──台湾海峡で緊張が続いた場合、どんな事態になると予想しますか。
考えられるシナリオの1つ目は極度の緊張状態の継続だ。第3次台湾海峡危機(1995〜96年)では一触即発のリスクもあった。これと同じような「グレーゾーン」が長く継続するような状態だ。2つ目は、台湾の孤立化だ。台湾発で毒性の強い感染症が広がったなどと口実をつくり、台湾を封鎖する。物理的遮断のほか、サイバー攻撃や海底ケーブル切断によってネット上からも遮断し、混乱に乗じて対中融和政権を確立する。3つ目が本格的な軍事侵攻だ。軍事侵攻は簡単ではないが、中国は当然、準備をしている。これらを組み合わせることもあるだろう。
──中国の軍事的膨張に強い懸念を示されています。
中国は戦争ではないグレーゾーンの作戦を今も仕掛けている。昨年、ペロシ米下院議長(当時)の訪台への対抗措置として、これまでにない規模で演習を行った。台湾上空を越えて弾道ミサイルが日本のEEZ(排他的経済水域)に着弾し、台湾海峡の中間ラインを無効化した。それ以降、中国軍は平気で中間ラインを越えるようになった。
自衛隊は日本を守るべく行動する
──台湾有事で日本の自衛隊はどう動きますか。
自衛隊は日本を守るべく行動する。安全保障関連法で定める「存立危機事態」になるかは、そのときの情勢による。3つの論点を挙げると、1つ目は台湾在留邦人の安全や台湾海峡での邦船の安全航行が保たれるかだ。2つ目は、中国が主張する第1列島線の東にまで中国軍が自由に動き回れる事態になれば日本の安全保障にたいへんな悪影響が出る。3つ目は、仮に中国軍が台湾の占拠に踏み込むと、その作戦区域は広く、八重山、宮古の島嶼(しょ)部はもちろん、沖縄本島まで作戦区域になって中国軍機が日本の領空に入ってくる。尖閣諸島を取られる可能性もある。とすれば日本は参戦する。
──台湾有事を起こさないためには何をすればよいでしょうか。
平時から西側が支援することだ。中国による一方的な現状変更は許さないと、西側のさまざまな支援や連帯を見せつける必要がある。そして台湾防衛に米軍が必ず関与すること。米国は台湾有事に関与しないと中国に少しでも思われたらダメだ。さらに事が起きた場合に、米国だけでなく日本やフィリピン、豪州などが何らかの関与をすると理解させることだ。
備えは必要だが、過度に追い込むのはよくない。相手を分析し、冒険主義に走らないよう重要な情報は把握しているぞと警告するのは効果的だ。中国共産党指導部には戦略的なコミュニケーションをつねに働きかけることが大事だ。
(聞き手 長谷川 隆)