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安倍総理の志は死なない!!

処理水放出を巡る日本国内の「残念な反応」…なぜリベラルは「中国の味方」のような発言をして応援機運に水を差すのか?

海洋放出で炙り出されたそれぞれの「立場」と「本音」
ALPS処理水海洋放出に伴う中国の海産物全面輸入禁止措置は、日本の水産業、特に中国や香港への輸出が大きな割合を占めていたホタテ、ナマコなどを中心とした生産者に大きな衝撃を与えた。
新たな販路開拓には時間が必要となり、出荷適齢期を迎えた養殖品を中心に大量の魚介類が行き場を失くしてしまった。
国内ではこれらを食べて応援しようとの機運が高まり、中国向けにホタテを多く輸出していた北海道別海町には8月24日以降「ふるさと納税」の申し込みが相次ぎ、寄付件数・寄付額ともに去年の同じ時期に比べて連日、5倍から8倍に急増したという。
参照)ふるさと納税 海産物の支援急増 日本の水産物 輸入停止後(2023年9月1日 NHK)
農水省はX(旧ツイッター)で「#食べるぜニッポン」のハッシュタグと共に「日本産水産物の消費拡大に資する取組を実施します。特にホタテ、ブリ、鯛、マグロ、練り物。一人でも多くの方に、少しでも多く食べていただけると状況が劇的に改善します」と発信した。
公益財団法人国家基本問題研究所も9月6日、次のような意見広告を新聞各紙に掲載した。



処理水放出を巡る日本国内の「残念な反応」…なぜリベラルは「中国の味方」のような発言をして応援機運に水を差すのか?© 現代ビジネス
〈 おいしい日本の水産物を食べて、中国の横暴に打ち勝ちましょう。
東京電力福島第一原発処理水の海洋放出を受けて、中国政府は日本の水産物を全面輸入禁止にしました。「福島の『核汚染水』から中国の消費者を守るため」と言っています。科学的根拠の一切ないひどい言いがかりです。それでいて中国は多くの漁船団を日本周辺海域に送り込み魚を取り続けています。私たち日本人はこんな不条理には屈しません。
中国と香港への日本の水産物輸出は年間約1600億円です。私たち一人ひとりがいつもより1000円ちょっと多く福島や日本各地の魚や貝を食べれば、日本の人口約1億2千万人で当面の損害1600億円がカバーできます。
安全で美味。沢山食べて、栄養をつけて、明るい笑顔で中国に打ち勝つ。
早速今日からでも始めましょう 〉
ところが、こうした機運に水を差す発信も少なくない。
雑誌編集者の早川タダノリ氏(@hayakawa2600)は、この意見広告に対して〈「食べて応援」が行き着くところはこんな地点であることがわかる。失政がもたらした惨事を、一貫してナショナリズムの動員によって穴埋めしようとするこいつら、そもそも「中国に勝とう」って言うが、勝者はどこにもおらん〉と発信した。
「失政」とは具体的に何を指すのか。
そもそも処理水の安全性は確保されている。これを保管し続けるため増え続けたタンクは廃炉作業と復興の大きな障害となり、地元自治体からは地上での継続保管に反対する要望が何度も訴えられ続けてきた。
9月14日付の拙稿『処理水放出を巡る世界の反応…中国の「核汚染水呼ばわり」「水産物禁輸」は結局、政治的な“情報工作”“外交戦”でしかない』で示したように、国際社会も総じて処理水海洋放出への理解や支持表明や日本産食品の輸入規制解除が相次ぐ中、中国や北朝鮮が事実と科学に背を向け逆行している状況だ。
こうした輸出入規制について言えば、中国はこれまでもたとえば2010年のレアアースであったり、日本以外にも台湾産パイナップル、フィリピン産バナナ、オーストラリア産石炭などに対して事実上の政治的報復として常習的に繰り返してきた“前科”が無数にある。
今回もその一例を重ねたに過ぎず、これは「風評問題」ではない。極めて政治的な問題であり、文字通りの外交・情報戦と言える。
このような状況で、「日本が汚染されている」かのような極めて侮辱的・差別的な中国の横暴を「失政がもたらした惨事」と日本側に責任転嫁して正当化し、理不尽な被害を受けた当事者の救済すら「ナショナリズムの動員」などと侮辱して邪魔することが一体誰のためになり、何に利するというのか。
アメリカ在住映画評論家の町山智浩氏(@TomoMachi)も同日、〈中国が買ってくれなくなった日本の魚を日本人が食べると中国に勝つことになるの? 中国にとって痛くもかゆくもないのに?〉と発信した。



町山氏は前日9月5日にもこのような発信をした。
〈「福島県漁連によりますと、7日朝、いわき市の沖合8.8キロ、水深75メートルほどの漁場でとれたスズキから県漁連が自主的に設けた基準を超える放射性物質が検出されました」
いったん排水を止めて他の方法も検討してみて〉
しかし町山氏が共有したこのNHKニュースは約半年前の2月のものであった。
参照)水揚げされたスズキから自主基準超える放射性物質 出荷自粛に(2023年2月7日 NHK)
そもそも検出された85.5Bq/kgは主にセシウム由来であり、トリチウムが議論となった処理水とは何ら関係がない。ほぼ全ての魚介類が検出限界地未満の中で、米国の食品基準1200Bq/kgはおろか非常に厳しい国内の100Bq/kgすら下回る、リスクの議論上では意味を持たない「自主基準」超過が出た稀なケースに過ぎない。
ALPS処理水放出と無関係な過去のニュースを持ち出し、まるで近海の魚が汚染されたかのように「いったん排水を止めて」と訴えたこの投稿には、「『やり方は違えど国の事福島の事思ってやってる』事じゃないよね。ワザとデマを流して貶めようとしてる」「古い記事を引っ張り出して来てまで風評加害に勤しむ。なんでそこまで福島への憎悪を募らせてるんだろう…」などの批判が殺到している。
9月12日時点で町山氏からの訂正等は確認できず、投稿に返信できるアカウントは町山氏がフォローしているか返信した相手のみとする制限がかけられていた。
ここでとりあげた発信は氷山の一角に過ぎない。ジャーナリストの佐々木俊尚氏は9月6日のニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演し、こうした状況に疑問を呈した。
「(中国向け水産物の輸出額減少を受け)『だから処理水放出なんかダメだ』と騒いでいる人が左派を中心にたくさんいます。中国政府に言われたから処理水の放出をやめるなど、『中国政府に屈してどうするのだ』と思うのですが。
少しおかしいですよね。もともと『リベラル』と名乗っていた人たちが、気がついたら処理水放出で中国の味方、独裁国家を味方しているという謎の構図になってしまっている。これは何なのだろうという」
さらに後編記事『処理水放出で可視化された「立場」と「本音」…「汚染」を強調し続ける日本共産党の主張は、一体誰のための活動なのか?』では、「風評」「偏見差別」を助長しかねない、特定政党による恣意的な言説について検証していく。




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