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安倍総理の志は死なない!!

国連は「もう終わり」なのか…中国が西側諸国を「猛批判」し対立が激化する“世界の行方”

英仏ロ中の4カ国首脳は総会を欠席
ニューヨークで開催中の国連総会が、かつてなく求心力を失っている。肝心の安全保障理事会メンバー国は、米国のジョー・バイデン大統領を除いて、英仏中ロの首脳が欠席した。中国やインドは新興途上国を集めて、独自にサミットを開いた。国連は、もう「終わり」なのか。
ロシアによるウクライナ侵略戦争は、昨年2月の開始から1年7カ月が過ぎたが、収束する見通しはない。それどころか、ウクライナの反転攻勢は期待されたほどの成果がなく、戦争は長期化必至の情勢だ。戦火が他国へ広がる可能性すらある。
本来なら、国連こそが停戦と平和の実現に向けて、積極的に動くべき局面だ。ところが、指導力を発揮するはずの安保理メンバー国であるロシアが、侵略の当事者になった。ロシアは安保理で拒否権を握っている。ロシアに同調する中国もそうだ。これでは、国連が機能麻痺に陥るのも当然だ。
そんな現状を見極めたかのように、今回の総会には、安保理メンバー国のうちバイデン大統領が出席しただけで、英仏ロ中の4カ国首脳は欠席した。中ロは最初から相手にせず、英仏は匙を投げたも同然である。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は初めて国連総会に出席し「侵略者を打倒するために、結束して行動しなければならない」と訴えた。バイデン大統領も「ウクライナに寄り添い続ける」と支援を約束したが、英仏首脳さえ欠席したとあっては、空しく響く。
西側専門家の間では、総会前から「国連加盟国の大半は『停戦交渉をすべきだ』と考えている。もしも、ゼレンスキー大統領が総会で『我々は永遠に戦い続ける』と訴えれば、債務や貧困問題を抱えている多くの非西側諸国と不協和音を生じるだろう」という声が出ていた。
国連加盟国の7割近くを占める、いわゆるグローバル・サウスの新興途上国にとって、重要課題は重い債務や貧困、さらにウクライナ戦争が引き起こした食料のインフレ、供給不足問題だ。「西側のウクライナ支援が我々に対する支援不足の原因になっている」という見方もある。
ゼレンスキー大統領は総会の合間を縫って、新興5カ国(BRICS)のメンバーである南アフリカのシリル・ラマポーザ大統領と会談するなど、新興途上国からの支援取り付けに動いたが、成果が上がったとは言えない。演説中には、途上国代表の欠席も目立った。
それどころか、総会の真っ最中に、積極的に支援してきたポーランドがウクライナへの追加武器供与停止を発表する事態も起きた。マテウシュ・モラヴィエツキ首相は「自国の防衛に集中する必要がある」という理由を挙げた。
だが、背景には、ウクライナの穀物輸出問題がある。ロシアが黒海を経由したウクライナの穀物輸出を禁止したのを受けて、欧州はウクライナ産穀物の輸出先になったが、欧州連合(EU)は5月、地元農業保護を理由に、ポーランドなど5カ国の穀物輸入を禁止した。
ところが、EUは最近「市場歪曲効果は消えた」として禁止措置を解除した。これにポーランドが反発し、国内農業保護のために輸入禁止を続行する方針を表明したのだ。ゼレンスキー大統領は総会演説で「一部の国は穀物問題でロシアに味方している」と訴えたが、これが、ポーランドの逆鱗に触れた。
モラヴィエツキ首相は「我々はもちろん、ウクライナの問題を理解している。だが、我々にとって、農業者の利害は最重要事項だ」と地元メディアに語った。武器支援の停止が、穀物問題にリンクしているのは明らかだろう。食料問題はウクライナ支援にも飛び火した形になってしまった。
中国が西側諸国を批判
抜け目なく動いているのは、中国だ。
中国は国連総会直前の9月15日、キューバの首都、ハバマで新興途上国77カ国の首脳らを集めて「G77と中国サミット」と題する会議を開いた。中国代表は「中国は世界最大の発展途上国であり、グローバル・サウスの1員だ」と演説し、途上国に寄り添う姿勢を強調した。
そこで採択したハバマ宣言は、西側の政策を厳しく批判している。
〈我々は、現在の不公平な国際経済秩序が開発途上国に及ぼしている問題を深く懸念している。たとえば、新型コロナの悪影響や地政学的緊張、一方的な強制措置、経済・金融危機、脆弱な世界経済見通し、食料への圧力の増大、エネルギー、人々の避難、市場の変動、インフレ、金融引き締め、対外債務の負担の増加などだ〉
〈我々は治外法権の効果を持つ法律や規制、開発途上国に対する一方的制裁や、強制的な経済措置を拒否する。それらは直ちに撤廃されるべきだ。そうした行動は、国連憲章と国際法の原則を損ない、とくに発展途上国における科学、技術、イノベーションの進歩と経済社会発展を著しく妨げている〉
こうした途上国の声をまとめたうえで、中国は国連総会に乗り込んできた。ただし、先に触れたように、習近平総書記(国家主席)は姿を見せず、代わりに演説したのは韓正国家副主席である。それで十分、とみたのだろう。
中国共産党の「環球時報」の英語版、グローバル・タイムズは17日付の社説で「米国など西側諸国はグローバル・サウスを勝ち取る努力を続けている。だが、それは発展途上国に平等な地位と開発の機会を与えるためではなく、彼らを『中心と周辺システム』における『周辺』に閉じ込めようとする試みなのだ」と批判した。
途上国の囲い込みに走るインド
中国だけではない。インドも途上国の囲い込みに走っている。
インドは1月12、13日、途上国125カ国の代表を集めてリモートで会議を開いた。採択された宣言は「国際情勢の断片化に懸念を表明し、グローバル・サウスの優先事項に資する環境を作り出す方法について意見交換した。閣僚は食料、燃料、肥料の不足という3つの課題に対処するよう国際社会に促し、現実を反映した包括的な多国間主義を求めた」と訴えた。中国が主催した会議に比べれば、表現は穏やかだが、食料問題などへの懸念は共有している。
こうしてみると、ウクライナ戦争への対応を最重要課題に据えた西側と新興途上国との落差は明白だ。バイデン大統領やゼレンスキー大統領が支援を訴えても、新興途上国との間で「不協和音」が生じているのは、否定しようがない。
日本と欧米の報道ギャップも気になる。
欧米メディアは、中ロとグローバル・サウス、西側の利害対立に焦点を当てているが、日本では、相変わらずウクライナ支援を呼びかける米国やゼレンスキー大統領の言動に注目している。これでは、世界の流れを読み違えかねない。
岸田文雄首相もそうだ。首相は総会で「核軍縮は被爆地広島出身の私のライフワークだ。核兵器のない世界に向け、NPT体制を維持・強化し、現実的・実践的な取組を継続・強化していく」などと、相変わらずの「核なき世界」論を展開した。
ついでにいえば、首相はことあるごとに「被爆地広島出身」とアピールしているが、それは父親の話にすぎない。本人は東京都渋谷区生まれ、永田町小学校、麹町中学校、開成高校、早稲田大学出身で、どこから見ても、紛れもない東京出身である。「国連総会で自らのフェイクを語った首相」は初めてだろう。
そんな岸田政権が続く限り、日本のピンボケは改まりそうにない。