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安倍総理の志は死なない!!

ペンシルベニア「郵便投票」こんなにも揉める訳


ドナルド・トランプ大統領は、11月4日の早朝、アメリカ連邦最高裁判所に選挙への介入を依頼することを約束した。「われわれがアメリカ連邦最高裁判所になるのだ」としたほか、「われわれはすべての投票の中断を望んでいる」とも述べた。
最初の発言は時期尚早だ。2つ目の発言は意味がない。
焦点は「郵便投票」の扱い
連邦最高裁判所は抽象的な問題ではなく、実際の紛争に決着をつける。それも、下級裁判所が独自の判決を下してからのことだ。国内全体で無数の選挙にまつわる事案が提出されている一方、近い将来そのうちどれが実際に裁判になるかは明確ではない。
だが、1つの案件はすでに候補リストに上がっている。連邦最高裁は先月、ペンシルベニア州による判決をめぐる上訴を優先審理することを拒否したが、このとき3人の判事が、必要に応じて裁判所はこの事案について再び検討すると明言しているのだ。
トランプ陣営は4日午後、連邦最高裁に対して、共和党支持州の議員と、ペンシルベニア州共和党とともに裁判への介入申し立てを行った。連邦最高裁は審問を行うかどうか、また、審理の許可をするかどうかの決定時期を明言していない。
投票は3日で締め切られている。しかし、州の中には郵送投票を投票日の数日後までに到着すれば有効とするところもある。たとえばペンシルベニア州の場合、州の最高裁判所は、投票の受付期限を延長し、投票日の3日後まで有効としている。
ペンシルベニア州の投票が選挙人団の結果を決定する可能性があるとしても、また、遅れて到着した票が同州を大きく揺り動かす可能性があるとしても(どちらもありうる過程である)、連邦裁判所が介入する可能性は高い。


ペンシルベニア州の最高裁判所は、投票日あるいは投票日前の消印があれば、最大3日後までに届いた郵便投票を集計に入れられるとする判決を下している。これについて連邦最高裁は10月28日、この判決に違法性がないか優先審理を求める共和党による上訴を退けている。
優先審理をしない決定
連邦最高裁はこれに先立つ10月19日、共和党によるペンシルベニア州判決の阻止を求める申し立てを退けていた。4対4だったため、州判決を維持した格好だ。
このとき州判決を認めないとしたのが、連邦最高裁のクラレンス・トーマス判事とサミュエル・アリト判事、ニール・ゴーサッチ判事、ブレット・カバノー判事。一方、ジョン・ロバーツ・ジュニア最高裁首席判事のほか、ステファン・ブレイヤー判事などリベラル派の3人の判事が州最高裁判決の維持を認めた。
10月27日に連邦最高裁の判事に就任したエイミー・コニー・バレット判事は、ペンシルベニア案件を優先審査しないという決定に参加しなかった。裁判所の広報担当官によると、参加しなかった理由は、「早期解決が必要」だが、「両当事者の申し立てを吟味する時間がなかった」からとのことだ。
連邦最高裁は、選挙の実施に関する州の規則を変更しようとする連邦裁判所の判決を認めなかった過去はある。しかし、州裁判所の判決の場合は、問題は複雑になる。州法の解釈に関しては、一般的には最高裁は州裁を尊重し、憲法によれば「州議会」が国会議員選挙の時、場所、投票方法を決定する権限を有するからだ。
ペンシルベニア州案件の優先審査を最高裁が否決した際、アリト判事はトーマス、ゴーサッチ両判事とともに声明を発し、連邦最高裁の決定について批判した。声明によれば、「選挙後に深刻な問題を引き起こす可能性を不必要に高めることになる」。
同氏は「ペンシルベニア州最高裁は法の重要な条項を正面から変更する命令を下した。法はペンシルベニア州議会が立法したものであり、合衆国憲法は州議会に連邦政府の選挙の実施につき規則を定める権限を付与している」と述べたうえで、「選挙が不透明な状況下で行われる」ことを憂慮すると述べた。
「選挙前に州最高裁判所の判決の合憲性に関する判決を下すことが非常に望ましいだろう」とアリート判事はつづっている。「この問題は国にとって重要であり、州最高裁の判決が、アメリカ憲法に違反する可能性が高い」。
しかし、十分な時間がなかったとアリート判事は書いている。とはいえ、同判事はこの件に関して自らはどの立場に立っていたかは、ほぼ明確にしている。
同判事は「アメリカ憲法の規定では州裁判所ではなく州議会に権限が与えられ、連邦選挙を管理する規則を作る権限は無意味だろう」とし、「それは州の憲法の規定が、公正な選挙の実施に適切と思われる規則を作成する権限を裁判所に与えたと主張するだけで、州裁判所が州議会によって採択された規則を無効にすることができた場合だ」としている。
期日後の投票用紙は隔離されている
ペンシルベニア州当局は、選挙日の午後8時から3日後の午後5時までに届いた投票用紙を隔離するよう各郡の選挙当局に指示している。これにより実際問題として、連邦最高裁の判決によって、最終的にこれらの票が集計されるかが決定されることになるだろう。
ペンシルベニア州問題をめぐるアリト判事の声明は、ウィスコンシン州の投票訴訟における、カバノー判事による同様の意見を反復している。カバノー判事もまた、州裁判所ではなく州議会が州選挙手続きの制定の最終決定権を持つと主張している。
総合すると、10月の共和党による上訴では最高裁判事の意見が2分したこと、そして4人の裁判官の声明は、ペンシルベニア論争が選挙のカギを握る場合、新たに加わったバレット判事による投票が決定的なものとなることを示唆している。
(執筆:Adam Liptak記者