Shinzo-Returns

安倍総理の志は死なない!!

「台湾有事」の衝撃 中国の「恫喝」は単なるブラフなのか 聞こえる「台湾有事」の足音 習政権が何としても避けたい民進党政権の継続

台湾の総統(大統領)選挙まで残り3カ月。現地の報道各社の世論調査では、与党・民進党の頼清徳副総統が支持率トップを維持している。
仮に、「下馬評どおり民進党の頼清徳候補が当選し、民進党政権が継続するとなると、民進党政権は連続12年、つまり子供が義務教育、高校を終えるまでの長さの政権を維持することになる。(中略)民進党政権下で教育を受けた子供たちは、台湾は一つの民主主義国であることに疑いの余地をもっていない」(福島香織著『なぜ中国は台湾を併合できないのか』PHP研究所)。
中国の習近平政権にとっては、何としても避けたい事態であろう。
そうした焦りからなのか、去る9月18日午前7時(日本時間)までの24時間に、過去最多となる延べ103機もの中国軍機が、台湾周辺空域で「破壊的な」飛行を繰り広げた(台湾国防部)。
しかも、このうち同40機が台湾海峡の「中間線」を越えたというから驚く。
それだけではない。中国軍戦闘機「殲16」や、早期警戒管制機「空警500」が、台湾海峡の「中間線」を越え、反時計回りに、そのままバシー海峡を通過して、台湾南東の太平洋上空まで飛んだ。同様に、空中給油機「運油20」も、台湾本島最南端の恒春半島沖まで飛行したという。
明らかに、台湾への武力攻撃を想定した軍事的威嚇である。台湾総統選を見据えた恫喝(どうかつ)と呼んでもよい。
台湾国防部がコメントしたとおり、「中国軍が軍事的な嫌がらせを続けることは、緊張の急激なエスカレートと地域の安全の悪化を容易に招く」。
9月26日には、台湾の邱国正・国防部長(国防相)が、台湾の立法院(国会)で、「中国軍の最近の行動は異常だ。われわれは戦いを求めないが、こうした行動が繰り返されるようなら、避ける方法はない」と答弁した。
まさに、「異常」な軍事行動である。いや、軍事行動に限らない。
中国政府(自然資源省)が今年公表した「2023年版標準地図」では、南シナ海のほぼ全域をカバーする従来の「九段線」に加えて、台湾の東部海域に拡大した「十段線」を記し、領有権を誇示した。
「識者」の多くは、こうした言動を、単なるブラフ(脅し)とみなして、はばからない。果たして本当にそうなのだろうか。私には「台湾有事」の足音が聞こえる。
■潮匡人(うしお・まさと) 評論家・軍事ジャーナリスト。1960年、青森県生まれ。早大法学部卒業後、旧防衛庁・航空自衛隊に入隊。第304飛行隊、航空総隊司令部、長官官房勤務などを経て3等空佐で退官。拓殖大学客員教授など歴任し、国家基本問題研究所客員研究員。映画化された人気コミック『空母いぶき』(小学館)シリーズに協力中。著書・共著に『安全保障は感情で動く』(文春新書)、『誰も知らない憲法9条』(新潮新書)、『ウクライナの教訓』(育鵬社)など多数。