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リニア問題から「逃げ続けた」川勝知事…年末に見せた「今年の1字」に違和感を感じるワケ

川勝知事の「部分開業」がひとり歩き
12月静岡県議会で、静岡県のリニア問題の解決策を何度も問われたのに、川勝平太知事は、質問の趣旨をすり替えてしまい、「『部分開業』がリニア問題の解決策である」と答弁して、追及を逃れた。


誰が考えても苦し紛れの知事答弁だとわかるのに、知事会見を経て、事務方は県議会委員会で「『部分開業』がリニア問題の解決策」を県の公式見解としてしまった。


これで「リニア問題の解決策は『部分開業』」がひとり歩きした。


もともと川勝知事は「静岡県のリニア問題を解決できないならば、『部分開業』を考えろ」と主張していた。


静岡県とは関係のない「部分開業」では、川勝知事の主張とかみ合わず、つじつまが合わない。


県議会で4度の追及に遭って、都合のいいように強引に理屈をこじつけたのが、川勝知事の「部分開業」論である。
この件は12月21日公開の記事で詳しく紹介した。


ただ県議会答弁、知事会見、事務方の「県の公式見解」発言で、「『部分開業』が解決策だ」を繰り返すことで、静岡県のリニア問題の解決策は何かという肝心の質問は宙に浮き、雲散霧消してしまった。


今回も、新たな論争のタネをまき散らし、事態の転換を図る川勝知事の政治手法にいいようにはめられてしまったのだ。


この流れの中で、川勝知事は26日の会見で、「部分開業」に関する批判のすべてを一蹴した上で、「部分開業は、JR東海が公式の場で言っていることを申し上げているに過ぎない」などと、周囲には理解できない論理の飛躍で事実関係をすり替えた。


つまり、「川勝劇場」というごまかしを繰り返し、記者たちを煙に巻くことに成功した。


反リニアを貫いた一年
これは、水資源保全の解決策「田代ダム案」でも同じだった。


田代ダム案を容認したかのようなわかりにくい表現だったため、記者たちは田代ダム案が大きく前進したと勘違いさせられ、そのまま記事にして読者に誤解を与えた。


実際のところ、川勝知事は、県専門部会でさらなる議論を求め、肝心の調査ボーリングを容認しない姿勢まで示した。


結局、JR東海と東京電力RPで基本合意した田代ダムの取水抑制案は、宝の持ち腐れとなってしまった。いまのところ、いつ日の目を見るのかわからない。


ことしも1年間を通して、さまざまな無理難題を主張し続けることで、川勝知事は反リニアを貫いた。


その結果、ことしを象徴する1字が『脱』であると記者会見で披露した。


川勝知事の『脱』に込めた真意がどこにあるのか、解いていきたい。


まず12月12日の県議会一般質問に戻る。


自民党県議が「ことし10月10日の定例会見で、知事は『もしわたしがJR東海の意思決定者であれば、この川勝とひざを突き合わせて話せば、その場で解決策を出せる』と話した。その解決策とは何か?」とただした。


当然、静岡工区着工について「解決策を出せる」と川勝知事は発言したのだが、その回答に触れないで、あいまいにごまかそうとした。


このため、再質問、再答弁の応酬があり、結局、議会運営委員会の協議まで行い、県議会としてあらためて川勝知事の答弁を求めた。


4度目の答弁に立った川勝知事は「現行ルートを前提にした上で、できるところから、つまり開通できる状況になった区間から開通させることが解決策となる。わたしは実験線の延伸、完成が1つの例示となると申し上げた。これは(JR東海)社長にしかできない」とした。


つまり、「部分開業」が10月の知事会見で述べた解決策だと逃げたのだ。


その後、「部分開業」の主張に、元副知事の難波喬司・静岡市長が県の姿勢を厳しく批判し、丹羽俊介JR東海社長はきっぱりと否定した。


事実関係をすり替える
12月26日の会見で、川勝知事は「丹羽社長が、事業主体のJR東海が『部分開業』をしないとおっしゃったわけだから、そうすると、『全線開通』を目指すということでよろしいか。全線は大阪までだから、名古屋までの開業は『部分開業』ではないか」などと、JR東海が、東京・品川、名古屋間の開業を「部分開業」にしているのだと決めつけた。


12日の県議会再質問で、川勝知事は「現在、甲府駅と橋本駅(神奈川県)は72キロあるが、43キロの実験線ができているから、甲府駅まで6キロ、残りの20数キロを神奈川県まで延ばせば、実験線が実用線になる。これでどうか」と『部分開業』を示唆していた。


その上で、4度目の答弁では「開通できる状況になった区間から開通させることが解決策となる。わたしは実験線の延伸、完成が1つの例示となる」とした。


このため、記者が「それ(名古屋までの開業)が県議会で答弁した『部分開業』なのか」とただした。


川勝知事は、長野駅から金沢駅まで延伸された北陸新幹線の例を出した後、「東京から名古屋まで、まず開通するのが『部分開業』です」とあらためて断言した。


その上で、


「JR東海の事業計画には、実験線の延伸から間断なく、東京、名古屋を2027年までに完成させ、体力をつけて、大阪まで開通させるとある。実験線が完成するってどういうことか、実験線が実験線でなくなる、つまり実用線になる。だから実験線の完成とは、一番近い、甲府と神奈川県まで結ばれる。そうすると営業できる」


「2010年交通政策審議会中央新幹線小委員会で、JR東海は実験線の延伸完成から間断なく、と言っている。それを実行されるべきである」


などと述べた上で、「JR東海が公式の場で言っていることを申し上げているに過ぎない」とまんまと事実関係をすり替えてしまった。


川勝知事はJR東海に「事実」関係を確認することなく、独自の「解釈」で「事実」関係をすり替えてしまったのだ。


ただ、川勝知事のとんでもない論理の飛躍に、記者たちには、いったい何が正しいのか、ついていけなくなってしまった。


それでも、中日新聞記者が「JR東海としてやるつもりはない部分開業を知事はそれでも『やるべき』という考えか」とただした。


これに対して、川勝知事は「(JR東海が)自分で書いた事業計画を守って実施してください、と申し上げている。実験線の延伸から間断なく、と書かれている。実験線の完成は、実験線が実用線になることだから、甲府と橋本駅を結ぶことが完成になる。それを実践されればよろしい」と再び、独自の「解釈」を示した。


こうなると、県議会同様にかみ合わない両者の主張の応酬となる。


川勝知事は自分の主張を承服しない記者に対して、「現実を突き止めることが、ジャーナリストではないか。Aさんがこう言った、Cさんがこう言った、それを書いて、記事にして、適当なコメントを付せば、それが仕事だと思っているのは、本来のジャーナリストとしては理想的ではない」と批判してしまった。


それに対して、記者は「ジャーナリスト、新聞記者にとって、一番の役割は何だと考えるのか」と聞いた。


川勝知事は「現実を正確に、バイアスなく読者に知らせること。真実を知らせること。Aさんがこう言った、Bさんがこう言ったって判断を聞いて、2人の価値判断が違うことを面白がっているのは、週刊誌の記者がすればいい」と、あらためて川勝知事の「部分開業」論を承服しない新聞記者を批判した。


『脱』の1字に何が込められているのか
さて、ことしを象徴する1字に川勝知事は『脱』と書いた真意は何だったのか?


『脱』を選んだ理由を川勝知事は、ことし5月の5類移行で、脱コロナが進んだことや9月に熱海土石流災害の被災地が警戒区域の解除などを挙げた。


リニア開業を「2027年以降」としたことに、「開業は難しいとしていた2027年の区切りから『脱』となった」とも述べた。


12日の県議会一般質問で、「知事は『ルート変更』を持ち出そうとしているのか」と追及されたが、川勝知事は「『ルート変更』は念頭にない」と否定した。


川勝知事は、これまで何度も独自の長野県松本空港への「ルート変更」を求めてきた。


「ルート変更」であれば、静岡工区未着工の解決策となるが、川勝知事は口が裂けても、「ルート変更」などとは言えない。


リニア建設促進期成同盟会への加入条件に、現行ルートで2027年開業を目指し、早期の建設推進を担うと約束した。だから、リニア沿線知事らを裏切ることになる。


ただ今回の「部分開業」論もリニア沿線知事らへの裏切り行為そのものである。


知事会見で述べた、2010年5月提出したJR東海の事業計画書には、『早期開業に向け、早期着工を。』という項目があり、そこに「完成までに10年を超える期間を要し、早期実現のために早期着工が必要。さらに、最新技術維持のため、実験線の延伸完成から間断なく着手することが重要」と書かれている。


「間断なく着手することが重要」とあるだけである。


つまり、「早期開業するためには、間断なく静岡工区を着手することが重要」と言っている。事業計画書の「間断なく」とは、「早期に」という意味である。


記者たちに向かって、川勝知事は「事業計画に何が書かれているのか、それを調査しないとダメだ」、「ジャーナリストは現実を正確に、バイアスなく読者に知らせること、真実を知らせること」と強い調子で述べた。


となれば、川勝知事は、静岡工区を間断なく着手すべくあらゆる手立てを打たなければならない。しかし、川勝知事の「解釈」ではそうはならない。


「部分開業」論で批判を受ける中、『脱』の1字は、リニア建設促進期成同盟会副会長の役割から逸『脱』したことを最も象徴している。


これまでの川勝知事の『脱』リニアの主張をそのままである。


静岡工区のリニア問題は解決の兆しさえ見えず、2024年に入る。