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ドイツはいったいどこへ向かっているのか…? 16歳の女子生徒が校長の通報で警察に連行された事件の恐ろしさ

憲法に違反する内容を拡散した可能性で!?
2月27日、ドイツ北部のメクレンブルク=フォアポンメルン州のギムナジウムで、化学の授業中だった教室に3人の警官が現れ、16歳の女子生徒を教員室に“エスコート”した(ギムナジウムというのは、大学に進む生徒の通う日本の小学5年から高校までの一貫高校)。


警察に通報したのは校長で、理由は彼女が、「憲法に違反する内容をTikTokで拡散した可能性があるから」。そのせいでパトカーが駆けつけたわけだが、しょっぴいた女の子の行動について、警察は違法な点は一切確認できなかった。


では、彼女は何をTikTokで拡散したのか?
それはAfD(ドイツのための選択肢)に関するビデオで、青い妖精(スマーフというキャラクター)とドイツの地図があり、その妖精と地図上の「青色」の部分が、両方ともどんどん拡大していくアニメだったという(私はこの投稿を見ていないので、報道されたままを書いている)。


なお、青はAfDのシンボルカラーであり、現実として、AfDの支持者は今、どんどん増えている。


AfDというのは2013年、EUの金融政策に反対した経済学者が作った党だが、15年、メルケル首相の “難民政策”を実質的な国境解放であるとして鋭く批判した。そして、この政策が将来もたらすであろう問題点を警告したことで、一躍注目を浴びたのである(今では多くがAfDの予想通りになっている)。


しかし当時、まさにそのせいで、AfDはメディアから反人道的、差別的、国家主義的と散々叩かれ、また、その後もAfDのポテンシャルを恐れた全ての既存政党がAfDを極右と決めつけて、いかなる共同作業をも拒否したまま今日に至っている。


ところが、激しい“迫害”にもめげず、今、AfDはCDU/CSU(キリスト教民主/社会同盟)に次ぐ支持率を誇るドイツ第2の政党に成長した。それに比べて、現在の政権党である社民党、緑の党、自民党は壊滅的に落ち込んでおり、それもあって、彼らのAfD潰しの勢いは、今、さらに異様なレベルにまで高まっている。


真っ当な政党なら、自党の支持率が落ちて他党が伸びれば、政治内容を改善しようと考えるはずだが、社民党の場合、そうはならず、新しい法律を作り、言論統制を敷き、さらには誹謗中傷まで使って、怨敵を潰そうとしている。ちなみに、メクレンブルク=フォアポンメルンの州政府も社民党政権だ。


基本的人権の核がかくもあっさりと
話を16歳の女子に戻すと、彼女はそのビデオの他に、「ドイツはただの場所ではなく、故郷だ」と投稿したという。


「ふるさと納税」が大流行りの日本の読者には信じられないだろうが、左傾化が進んだドイツでは、すでに「故郷」という言葉は国家主義的で、「民主主義を守るグループ」から攻撃対象にされる可能性のある「良からぬ言葉」になりつつある。


いずれにせよ、このニュースは、いつになく私の心に鋭く突き刺さった。ひどいニュースは数多あるが、戦争や貧困などは私がジタバタしてもどうにもならない。そんな中、この16歳の女子生徒の話は他人事ではない。


警官にしょっ引かれたのは私でもあり得たし、私の娘でも、あるいは私の孫でもあり得た。そう思うと、強烈な怒りと、ドイツはいったいどこへ向かっているのかという果てしない恐ろしさも感じた。


言論・思想の自由は、いわば基本的人権の核だ。ところが、16歳の女子のそれが、当局によりあっさりと侵犯された。


全体主義の国で託児所や保育制度が行き届いているのは、女性の労働力が必要とされていることもあるが、同時に、思想教育は早く始めれば始めるほど、難なく浸透させられるからという理由も大きい。そういう意味では、現在の学校も、勉強の他に何を教え込まれるかわからないという点で要注意の場所だということを頭に入れておかなければならないのではないか。


腹を立てたのは私だけではなかったらしく、この事件は主要でないメディアにおいてあっという間に広がった(主要メディアは左寄りなので、往々にして“報道しない自由”を駆使する)。中でも『ユンゲ・フライハイト』という右寄りを自認している保守紙がこの女子と両親をインタビューし、詳細に報道した。


●Polizeiopfer Schülerin Loretta: “Ich habe die stechenden Blicke aller auf mir gespürt”(Interview 18. März 2024 Moritz Schwarz)


ちなみに、この記事では、最初、警察からの「女子を守るために匿名にするように」という指示に従い、女子と両親は匿名になっていた。しかし同紙はその後、本人らの同意を得たらしく、本名を公開。彼女の名はロレッタという。


そもそもロレッタを授業の最中に、わざわざ他の生徒の眼前で犯人のように扱ったのは警察だった。つまり、女子の名前など、地元ではとっくの昔に知れ渡っていたわけで、匿名の意味はあまりなかった。いったい匿名で、誰を誰から守るつもりだったのか。


校長はなぜ警察を呼んだのか?
この記事を読むと、校長の行動に対する疑問が膨らむばかりだ。


校長は、誰かからの通報があったのか、その朝、TikTokでロレッタの投稿を見つけ、すぐに警察を呼んだ。なぜ? TikTokでロレッタの投稿を見つけ、そこに問題があったのなら、なぜ、校長はロレッタに直接話しかけなかったのか? あるいは保護者に。


『ユンゲ・フライハイト』はこの校長にも話を聞こうとしたが、「自分は話すことが許されていない」という理由で、コメントは得られなかったという。


しかし、本来、校長とは、警察ではなく、生徒の側に立つべきではないか。また、たとえロレッタが普段から反抗的な生徒であったとしても、それに対峙するのが教育者の仕事だろう。それを全て放棄して、すぐに110番というのが理解できない。


これでは東独のシュタージ(秘密警察で、200万人にも及ぶIMと呼ばれた一般市民の非公式協力者の密告に支えられていた)と何も変わらない(メクレンブルク=フォアポンメルン州は旧東独)。


また、良い教育を目指すなら、教師は保護者の信頼も得なくてはならないが、母親は今回の出来事を、ロレッタが放課後、家で報告して初めて知ったという。校長は生徒に対してだけでなく、保護者に対しても責任を果たしていないのではないか。


ちなみに、市民の誰かがよほど憤慨したとみえ、この校長の写真をソーシャルメディアに公開したという。当然、これは処罰の対象となる。


AfDはドイツで公式に認められている政党であり、既存政党がどれだけ嫌おうが、今や国民の5人に1人がAfDを支持している。旧東独のザクセン州やチューリンゲン州に至っては、当局の締め付けに反発する力が強いため、支持率はさらに高い。


そのAfDのPRビデオを拡散し、支持を表明したからといって、もちろん罪であるはずもない。それなのに警察はロレッタに、「君は何ら法律に違反してはいない」と保証しながらも、「しかし、今後はこういうビデオの拡散はしない方が良い」と注意を促したという。完全に言論の自由の抑圧だ。


その後、『ユンゲ・フライハイト』の取材に対して警察は、「刑法の86条a、もしくは130条に抵触する恐れを教示した」として、自分たちの行動を正当化したが、刑法86条aというのは、反民主主義的な意見を広めたり、あるいはナチの鉤十字を使ったり、右手を上げるヒトラーの挨拶をしたりという人が刑罰の対象だという。


もう一つの130条の方は国家反逆、つまり、反乱や謀略の計画者が対象で、少数民族などに対する迫害や暴力行為の呼びかけなども含まれるというが、いずれにしても、ロレッタと何の関係があるのかがわからない。


民主主義を騙った思想教育の恐ろしさ
なお、当然のことながらAfDが黙っているはずもなく、生徒に対する監視、威圧、抑圧のようなことが、本当に州の教育省の指導で行われているのかどうか、徹底調査に乗り出す構えだ(校長は、ロレッタに何も言わずに警察を呼んだのも、自分が保護者と接触できないのも、取材に対して答えられないのも、すべて上からの命令だと主張している)。


AfDは今回の事件を、学校が次第に思想監視の道具として使われている事実が露呈したものと見ており、勇気を出して取材に応じてくれたロレッタとその母親に感謝しつつ、今後は、担当の教育委員会はもちろん、州の教育省や内務省も追求していくつもりらしい。


蛇足ながら、このギムナジウムは、2月23日から校内で、フリードリヒ・エーベルト財団主催の「民主主義を強化する」というテーマを掲げた展覧会を開催していたという。フリードリヒ・エーベルト財団というのは、社民党に極めて近い組織だが、校長は、その展覧会の開会式に地元の名士が大勢集まってくれたことを、ギムナジウムのHPに得意げに書いている。


しかし、実際には、ロレッタには言論の自由がなかった。この校長の「民主主義」の定義はどこか偏っている。


一番危険なのは、国が学校を使い、民主主義を騙って思想教育に手を突っ込むことだ。すでにドイツではそれがかなり進んでいるような気がして、戦慄を覚える。日本も他人事ではないと、心した方が良い。