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安倍総理の志は死なない!!

米右派の大物司会者リンボー氏死去 トランプ氏らが功績たたえる

© BBCニュース 提供
挑発的な発言で知られ、アメリカの右派から絶大な人気を得る一方、左派からは非難された著名ラジオ司会者のラッシュ・リンボー氏が亡くなった。70歳だった。妻が17日にラジオで発表した。肺がんを患っていたリンボー氏の訃報を受け、ドナルド・トランプ前大統領など米保守派の大物は次々とその功績をたたえた。
1951年に米ミズーリ州で生まれたリンボー氏は、ラジオの長寿トーク番組「ラッシュ・リンボー・ショー」の司会者として、アメリカの保守主義運動を推進する中心人物の1人だった。妻キャスリン・アダムスさんが番組で、その死を発表した。リンボー氏は2020年2月に、ステージ4の肺がんの診断を受けたと公表していた。
1983年に始まったリンボー氏の番組には、ブッシュ親子とトランプ氏がそれぞれ大統領在任中にたびたび出演。トランプ氏は2020年に、アメリカで文民に与えられる最高栄誉の「大統領自由勲章」を与えた。
トランプ氏は17日、退任後初のテレビ・インタビューで、リンボー氏は「代わりのいない」「伝説」だとたたえた。
「伝説的存在というのはそうめったにいないが、彼は伝説だった。彼を毎日聞いていた大勢にとって、宗教体験のようなものだった」と、トランプ氏はFOXニュースに述べた。
公平原則の廃止後に人気獲得
リンボー氏は大学中退後にペンシルヴェニア州でラジオ局に入った後、たびたび解雇されながら放送業界を出たり入ったりしつつ、カリフォルニア州の地元局で1983年に「ラッシュ・リンボー・ショー」を開始した。
番組が一気に保守派の間で人気を得るようになったのは、米連邦通信委員会(FCC)が1987年に、「公平原則」を廃止したことがきっかけだった。1949年に制定された「公平原則」の廃止により、アメリカの放送事業者は異論のある問題について相反する意見を放送する必要がなくなった。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは2005年に、公平原則の廃止がきっかけで、「激怒している何百万もの保守派有権者に対して、激しく弁の立つ保守派司会者がマイクを提供するようになった」と書いている。
「ラッシュ・リンボー・ショー」は1988年に全国配信されるようになり、2020年までに毎週2700万人の聴取者を獲得していたとされる。
アメリカの右派から絶大な人気を得る一方で、リンボー氏の発言はリベラル派から強く批判された。2020年大統領選でジョー・バイデン氏が勝ったのは不正だと主張し、気候変動を否定し、様々な陰謀論を放送し、移民受け入れに強硬に反対した。「アメリカは特別な国」だというアメリカ例外主義を掲げるほか、人種差別や性差別、同性愛嫌悪と受け止められる発言を繰り返してきたと批判された。
リンボー氏は番組で、新聞に載る容疑者の指名手配写真はどれも、黒人公民権運動指導者ジェシー・ジャクソン師に見えると発言したり、「奴隷制に一番、罪悪感を持たなくていい人種は白人だ。歴史上、白人が奴隷を持っていた時期は最も短いし、その数も少ない」などと発言した。
性的少数者を嫌い、アメリカでHIV/エイズの犠牲者が相次いでいた1980年代には、犠牲者の名前を読み上げて中傷していた。「アフリカでは何でもかんでもエイズと呼ぶ。そうすれば援助が得られるからだ」などとも述べた。
フェミニストも嫌い、男女同権運動については、「フェミニズムは魅力のない女たちが社会の中心に入れるようにと始まった」と評した。女性を「フェミ・ナチ」などと呼んだほか、「女が男より長生きなのは、女の方が楽に暮らしているからだ」などと発言していた。
気候変動を否定したほか、バラク・オバマ元大統領はアメリカ生まれではないという陰謀論を繰り返した。また、喫煙の害だけ大きく取り上げられ、喫煙の利点は過小評価されているとも主張していた。
2020年2月には、新型コロナウイルスによる感染症は「普通の風邪」に過ぎないと述べ、「またひとつ、ドナルド・トランプを失脚させるための新たな材料として、武器のように使われている」と主張した。
トランプ氏らが称賛
リンボー氏の訃報から間もなく、トランプ氏はFOXニュースに電話をかけ、「素晴らしい洞察力」の「偉大な紳士で、偉大な人だった」と話した。亡くなる「3、4日前」に話をしたとして、自分が2016年大統領選に出馬した一番最初から、自分を支持してくれたと振り返った。大統領退任後、トランプ氏が主要メディアで話をするのは初めて。
2020年大統領選の結果認定を阻止しようと自分の支持者が連邦議会を襲撃したことについて扇動の責任を問われ、弾劾裁判にかけられていたトランプ氏は、上院から無罪評決を得たばかり。
トランプ氏はFOXニュースでさらに、2020年大統領選に圧勝したのは自分だという、事実と異なる主張をあらためて繰り返し、「ラッシュは自分たちが勝ったと思っていたし、自分もそう思う。自分たちはかなりの差で勝った」と述べた。
リンボー氏の死去について、マイク・ペンス前副大統領はアメリカが「巨人を失った」と追悼した。ジョージ・W・ブッシュ元大統領は、「大きい心の、不屈の精神」だったとたたえた。
「彼はがさつで、時に物議をかもし、常に強い意見の持ち主だったが、何百万人ものアメリカ人を代弁して思いを語り、毎日を精力的に送っていた」と、ブッシュ氏は振り返った。
ホワイトハウス報道官は、バイデン大統領が遺族と友人にお悔やみを伝えていると明らかにした。
<解説>アメリカの日常に深い痕跡 アンソニー・ザーカー北米担当記者
アメリカの保守派政治の現状をこれほど形作ってきた人は、ラッシュ・リンボー氏をおいてほかにそうはいない。
ソーシャルメディアの到来で大勢が主要メディアのフィルターを通さずに語れるようになる以前から、リンボー氏はトーク番組という強力なメガホンを一から作り上げて、保守的な主張を繰り広げていた。
大衆主義的な右派トークラジオというジャンルそのものを作り上げたわけではないにしても、現代に見合った形で作り直したのが、リンボー氏だった。
連日のラジオ番組を足がかりに、テレビや出版の一大帝国を作り上げ、共和党の政策テーマを形成していった。
タイミングを的確に見定めた罵倒や称賛を口にすることで、リンボー氏は保守派政治家を取り立てることもできたし、失脚させることもできた。
特に注目されていない話題を彼が取り上げれば、それは注目の重要課題となることもあった。物議や非難をむしろ喜び、政治的対立や不満の炎をあおるようにも見えた。そうすればそうするほど、聴取率が上がると分かっていただけに。
彼の政治姿勢が大好きだからと周波数を合わせるリスナーもいれば、彼を憎悪するからこそ番組を聞く人もいた。退屈なことはほとんどなかった。
リンボー氏を批判する(大勢の)人たちは、彼がアメリカ政治に毒と罵倒をもたらしたことが、国の分断を先鋭化させたと言う。これに対してリンボー氏の支持者は、彼の怒りは正義で、政界エリートが無視する人たちに向かって語りかけていたのだと言う。
どちらにしても、リンボー氏がアメリカの日常に残した痕跡は、決して軽視してはならない。